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VOL.244『甘味が日本とイギリスの食生活を変えた?』 [生活]

◆ 食べること
 私たちが毎日何かを食べることは生命維持に必要な行為です。現代では『食べること』は楽しみであり、快楽でもありますが、縄文時代や弥生時代には、ただ生きるためのものでした。平安時代に王朝文化を築いた平安貴族でも食材のほとんどは生か干物の魚介類や鶏肉などの動物性タンパク質で、植物性のものは少なく唐菓子や木の実など味付けをして美味しくするという料理法の概念はありませんでした。日常的に食物を加熱して食べるようになったのは室町時代以降のことです。
 ヨーロッパでも19世紀頃までは空腹になったから食べるという感覚だったようです。食べることを楽しみ、喜びに変わったのは小麦や米などのデンプンを大量に栽培できるようになり、カリブ海地域にサトウキビの大規模農場を作り、安価な砂糖を庶民も入手できるようになってからです。

◆ 甘味の魅力
 中世ヨーロッパでは食事は昼と夜の2食で、15世紀に朝食が加わって3食となりました。そして19世紀頃までは昼食が主でしたので、昼食をディナーと呼びました。現在でもヨーロッパでは昼食を豪華にしています。
 日本では、鎌倉時代まで武士も農民も朝食と夕食の2食でした。江戸時代になって庶民も3食になったのですが、これは1657年の明暦の大火がきっかけとなったと言われています。死者は3万人とも10万人とも言われ、日本史上最悪の大火災でした。そこからの復興のために幕府は全国から大工や職人を集め、朝から晩まで働かせるために1日に3食与えたというのです。これにより1日3食が広く人々に浸透していき、昼食は軽くすませるのが一般的になりました。
 江戸時代の日本では80%の人々が農民でしたが、米は年貢として納めるもので自分たちが食べる食料ではありませんでした。一方、江戸では幕府が配分した年貢米を武士の多くが売って現金に換えていました。そのため江戸市中には米が豊富に出回り、江戸に集められた職人や大工の食事は米が中心となっていました。米の飯は短時間で腹ごしらえができ、職人を働かせるには好都合だったのです。職人たちは寿司や天ぷら、漬物とご飯、麺類などファストフードのように街角で食していました。
 18〜19世紀初期のイギリスでは多くの農民が働く場を求めて都市に移り住みました。当時のイギリスの産業は家族単位の小規模なマニュファクチュアが中心でしたが、新たに都市の住民となった元農民という多数の労働力を得て、工業製品の大量生産が可能となりました。それに伴い、労働で疲れた体で簡単に作れる食事が工夫されるようになり、その中心となったのが砂糖でした。ヨーロッパにおける砂糖の消費量は年々増加し、特にイギリス人の食生活は砂糖づけとなりました。砂糖をたっぷり入れた紅茶・ジャムの果物の砂糖煮・冷肉・甘い小麦のパンなど、工場労働者はこの砂糖過剰な食事を歓迎しました。砂糖たっぷりの紅茶を飲むことでブルジョアの一員であると考え、毎日の甘い食事に満足していました。砂糖は短い休憩時間で疲労を回復させる魔法の食べ物でした。疲労感がなくなり、空腹感も収まる、これがイギリスでの産業革命のきっかけともなりました。その後、イギリス特有の砂糖入りの食品(紅茶とビスケットやコーヒーとジャム付きのパンなど)が開発され、都市住民の食生活を根本から変えていきました。当時のヨーロッパにおける砂糖は健康食品だったのです。

◆ 甘味(糖質)の食生活
 同時代の日本でも米の甘みの美味に職人たちは江戸で働く幸福を感じ、米と塩辛い漬物は至福の美味となりました。これら砂糖や米は労働者や職人に麻薬的に作用し、働くために甘味(糖質)を欲するののか、甘味が欲しくて働くのかわからなくなる、このような環境の継続がその後の人間に糖質を愛する食生活として世界中に拡大しました。同じ時期に地球の反対側に暮らすイギリス人と日本人に偶然にも食生活の大変革があったのです。

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VOL.237『日本人の超清潔志向をどう思いますか?』 [生活]

◆ ヒトは細菌と共生している
 人類は進化の過程で、細菌やウイルスなどの微生物とともに生きてきました。つまり、多くの病原体と共存してきたのです。その微生物の中には感染症を引き起こすものがいる一方で、カラダの健康を守ってくれるものもいます。
 母親の胎内は無菌状態ですが、出産と同時に乳児は細菌やウイルスに感染します。しかし、感染しても直ちには病気を発症しません。それは乳児が母親から免疫機能を受け継いでいるためで、しばらくはその免疫機能によって発病することはなく、次第に自らも病気に感染しない防御機能を形成していきます。基本的にはカラダの周囲(皮膚・粘膜・腸内)に共生する微生物が免疫力を強化する方向に働いてくれます。

◆ 健康を守るさまざまな常在菌
 第2次世界大戦直後の日本では衛生環境が劣悪だったため、病原体の感染により乳児の多くが死亡しました。栄養状態が悪い上に生活環境が悪化していたので、病原体に感染しての死亡率が最も高かった時代です。
 ところが今日、日本の衛生環境は世界トップクラスで、通常の生活をしている限り命を奪われるような恐ろしい病原微生物に遭遇する機会はほとんどありません。かつて蔓延していた死に直結する恐ろしい感染症は、乳児の時にワクチン接種することでほとんどが防げています。それなのに、毎年のように風邪をひき、食あたりを起こすのは、病原体に対して十分な免疫が自身のカラダに備わっていないからです。小児の病気のほとんどはまだ十分な免疫力が備わっていないのと水分不足から起こります。
 ヒトのカラダに共生し、健康の維持に関与している細菌(常在菌)は100兆個以上ともいわれ、ヒトの細胞数が37兆個といわれることから圧倒的に細菌の方が体内に多く存在していることになります。ヒトの細胞の遺伝情報は11兆個ほどで、細菌の持つ遺伝情報の方がはるかに多いそうです。特に腸内では、ヒトの遺伝情報が2万個なのに対し、腸内細菌は60〜100万個で30倍以上という圧倒的に多くの遺伝子情報を持っています。
 ヒトは細胞の数の約10倍の細菌と共生しています。その細菌を排除する過剰な行為が最近の傾向です。現代日本では、生活環境の中で免疫力を強くする方向に働いているのも細菌なのです。例えば、表皮をおおう皮膚や粘膜は通常、弱酸性に保つことで守られています。そこには外部からの病原体による感染症を防いでくれる常在菌が多く存在しています。これらはヒトに害を与えることはありません。これらの常在菌を無理やり化学合成された薬剤で排除するという行為が間違っているのです。消費者は殺菌効果や薬用効果を期待して商品を購入しますが、これらの合成化学薬剤の長期間の使用は、ヒトの健康に対し、効果より有害性の方が指摘されています。例えば、殺菌効果のある薬剤を使うことで病原菌の耐性を増加させるリスクが高まるとか、ホルモンの働きが阻害されるなどという健康面への影響が懸念されています。トリクロサンという薬剤は殺菌や抗菌の効果があり、薬用石鹸や薬用ハンドソープ・薬用ボディケアソープ・薬用洗顔料など液体抗菌製品の95%以上に含まれている成分です。この成分を含む商品は、病気を引き起こす菌とともに私たちを守っている常在菌も排除してしまいます。
◆ 日本は清潔すぎる?
 今日、日本の若者は極端な超清潔社会を人為的に作り出した環境の中で、生まれた時から生活しています。無数の洗剤に囲まれて暮らす生活が綺麗で衛生的で便利で心地よく、朝からシャンプーやボディローションなど化学物質づけの生活です。また、体毛を極端に嫌い、全身の体毛を除去する、特に男性はヒゲを除毛してツルツル肌にしてしまうそうです。汚らしい男性は女性からモテないのでしょうか?
 超清潔社会は本当に健康的で快適な社会といえるのでしょうか?人類の進化に逆行しているような気がしてなりません。清潔すぎる社会がヒトの健康を害しているかもしれません。

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VOL.236『生活習慣病を予防するミネラル』 [生活]

◆ 食生活が乱れている
 今日、日々のストレスによって食生活が乱れている人が増えています。朝はギリギリまで寝ていて、朝食はコンビニで買ったおにぎりやサンドイッチ、牛乳で済ませ、昼には元気をつけるために豚骨ラーメン大盛りに餃子もつける、夜は疲れているので居酒屋で冷えたビールを飲み、揚げ物や焼肉をお腹いっぱい食べる、そして週末にはアルコールと日頃の栄養不足を補うため肉類を中心にたらふく食べる…このような暴飲暴食が続く中高年の人は多いようです。

◆ 自律神経と生活習慣病
 多少体調が悪くても休めないので無理して出勤するという行動にはストレスが反映されます。つまり、自律神経に変調をきたしているのです。自律神経は24時間休むことなく働いている神経で、生きていくために必要なカラダの機能を無意識のうちに調節しています。自律神経には日中やカラダを動かしている時に活発に働く交感神経と、夜間や安静にしている時に働く副交感神経があります。この交感神経と副交感神経のバランスが乱れることを自律神経の乱れと呼びます。日常生活の中で常にストレスを感じていると、交感神経が優位のままの状態が続き、副交感神経の働きが弱まります。このような自律神経の乱れが続くとカラダの各器官に様々な不調が生じます。その最大のリスクが、高血圧や動脈硬化・糖尿病・高脂血症などのいわゆる生活習慣病で、血管の弾力性が失われます。
 ストレス状態が長期間続くと、副腎からコルチゾールというストレスホルモンが分泌されます。コルチゾールは血糖値を上昇させ、糖尿病を引き起こします。これには毎日の食生活も深く関わっており、アルコールや肉類・乳製品・糖質の摂りすぎは血糖値の上昇を招きます。そのため膵臓からは大量のインスリンというホルモンが分泌され、血糖値を正常に戻して生命は維持されます。この状態が続くとインスリンは多量に分泌されているのに血糖値が低下しない事態となりインスリンを分泌するβ細胞は疲弊してしまいます。これをインスリン抵抗性と呼び、血糖値が異常に上昇した状態となります。これが2型糖尿病です。糖尿病の恐ろしさは合併症で、目の網膜部から出血することで失明する糖尿病網膜症・腎臓での老廃物のろ過機能が低下してしまう糖尿病性腎症、この場合人工透析をしなければ生きられなくなります。また、末梢血液の循環障害で神経障害が起きて足壊疽となると足を切断しなければなりません。そして最後には認知症に移行します。
 日本では高齢化に伴って認知症患者が増加しています。認知症の中で最も多いのがアルツハイマー型認知症で、脳神経細胞にアミロイドβというタンパク質が蓄積して老人斑ができ、脳障害が生じます。通常、65歳以上の高齢者に生じますが、60歳以下で生じる若年性アルツハイマー病の人も増えています。認知症には他に血管性認知症があります。原因は血管障害でアルツハイマーとは異なり、高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病を伴います。認知症を予防するには基本的には30代から食生活や運動習慣を見直すことです。毎食、お腹いっぱいになる満腹感は遺伝子によって記憶されます。満腹感や塩分濃度の高い刺激的な味も記憶されるとやめられなくなります。甘みのある冷たい飲み物も同様です。

◆ ミネラル豊富な水を摂取しましょう
 交感神経が優位に働いていると、心臓の拍動が高まり、全身の筋肉が緊張して血管が収縮し、高血圧が悪化します。これが脳で起これば脳出血や動脈瘤破裂で死に直結します。最近、高血圧の予防としてニガリが注目されています。ニガリの主成分はマグネシウムです。マグネシウムは細胞が健全に代謝活動をする上で不可欠なミネラルです。そしてマグネシウムの摂取不足が生活習慣病である心臓病や高血圧・糖尿病に深く関与することが分かってきました。また、花粉症やアトピー、便秘や下痢の解消に効果があることも分かってきました。さらに料理の美味しさを引き出すことも知られています。マグネシウムにはカリウムやナトリウム(塩分)と結合し、体外に排出する作用もあります。
 誰もが生活習慣病になり得る時代、適度な運動とマグネシウムをはじめとするミネラルを豊富に含む水を摂取することで予防してみてはどうでしょう。

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VOL.231『誤嚥性肺炎を防ごう』 [生活]

◆口腔ケアが重要
 日本では急激な高齢化が進む中、食事中の嚥下障害(食べ物や飲み物を飲み込めない)、筋肉量の減少、運動器症候群(ロコモティブシンドローム)、虚弱、うつ病、認知症などを予防することが求められています。特に、食べることや話すことに直結している口腔や呼吸器の病気の予防が注目されています。
 口腔を専門とする病院では歯科衛生士による毎日の口腔ケア観察が行われ、高齢者の健康維持を考える上で重要となっており、歯科衛生士の需要も高まっています。そのため、さまざまな理由で現場を離れた人が復職できるように、研修するプログラムも進んできており、所定の研修を終了すれば修了証が発行され、復職できるようになりました。

◆誤嚥性肺炎の原因
 高齢者の健康を妨げる要因の一つに誤嚥性肺炎があります。今日、日本では死因の1位がガン、2位は心血管性疾患、3位が肺炎です。肺炎で亡くなる人の96%以上が65歳以上で、そのうちの70%が誤嚥性肺炎です。この誤嚥性肺炎を予防することができれば、90%が助かるので寿命を延ばすことができます。
 誤嚥性肺炎は、食べ物や飲み物が誤って気管に入ることで起こると考えられてきましたが、食べ物や飲み物が原因となるのは30%ほどと少なく、残りの70%は就寝中気づかないうちに唾液が気管に流れ込み、唾液中のウイルスや細菌によって肺炎になることが分かりました。健康であれば食べ物や飲み物・唾液は気管に入りそうになっても、むせることで防げます。しかし、高齢者では加齢や入院生活などのせいで筋力や体力が低下し、飲み込む力も弱ってきます。加えて咳反射(喉に異物が入ると瞬時に咳が出て異物の侵入を防ぐ)や、ものを飲み込む際の嚥下反射(ものを飲み込む運動)が悪化するため、食べ物や飲み物・唾液を誤嚥するリスクが高まります。さらに免疫力が低下している状態で誤嚥によって肺の奥に入ったウイルスや細菌が繁殖して肺炎になる、これが誤嚥性肺炎です。
 高齢になると誤嚥するリスクが増すといいますが、40歳を超える頃から誤嚥する人が増えてきます。これは嚥下反射の低下が考えられますが、目立った症状が現れないことから原因は不明でした。しかし、最近になって脳梗塞との関係が指摘されるようになりました。脳梗塞の1つであるラクナ脳梗塞(小さな脳梗塞、脳内の毛細血管が詰まる)によることが分かってきたのです。脳梗塞の原因は血管壁の動脈硬化です。動脈硬化が原因の高血圧症の人にこのラクナ脳梗塞が多く見られ、喫煙量の多い人や塩分過剰摂取の人なども30歳を超える頃から徐々にラクナ脳梗塞が進行します。症状は全くないので気づきませんが、ラクナ脳梗塞により脳の小梗塞の箇所が増えてくると、嚥下反射が徐々に低下してきます。若いうちには誤嚥性肺炎にはなりませんが、嘔吐する機会が増えてくると嚥下反射が低下してきたシグナルなので気をつけましょう。

◆予防するために
 高齢者の寿命は近年になって10年ほど延びています。ですから30歳代の若い頃から高血圧や動脈硬化を進行させるリスクを減らすことが大切です。口腔内を常に清潔に保つことも誤嚥性肺炎を防ぐ方法の一つです。また、常に口の中に溜まった唾液を飲み込む練習を習慣化することも必要です。唾液をなかなか飲み込めない人は、水をチビチビ飲むことを習慣にするのも有効です。
 また、家の中にばかりいないで外に出て、散歩程度の適度な運動をすることは、足の筋肉を鍛えることができます。ふくらはぎは第2の心臓とも呼ばれているので、散歩は誤嚥性肺炎の予防には最適です。その際、歩きながら水を飲むのも効果があります。天気が良い日に早朝に外に出て新鮮な空気を繰り返し吸い、正しい呼吸法を習慣にするのも誤嚥性肺炎の予防につながります。

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VOL.220『健康維持のために早起きを』 [生活]

◆自律神経の働きを司る体内時計
 健康を維持するには朝が極めて重要です。ヒトのカラダには、朝になれば目覚め、夜になると眠くなるというリズムが細胞内の時計遺伝子に記憶されており、これは人類の進化の過程で組み込まれました。このリズムは自律神経の働きが作るもので、それをコントロールしているのが体内時計です。体内時計が細胞分裂に密接に関わっており、ほぼ24時間のリズムを刻んでいます。生命の活動を調節するのが自律神経で、交感神経と副交感神経があります。交感神経は日中の活動時に優位に働き、副交感神経は睡眠時に優位に働くという、切り替えがスムーズに行われています。このように体内時計がリズミカルに動くことで健康が維持されるのです。

◆リラックスして腸を活性化
 カラダの中で最も新陳代謝が速いのは腸管ですが、体内時計が狂ってしまうと腸粘膜の新旧の入れ替えがうまくいかなくなるので新陳代謝が遅くなります。その結果、便秘や下痢が起こります。夜間に良い睡眠が得られると、腸の粘膜細胞は新陳代謝が活発化しますが、睡眠中には血液中の水分量が減少するため、血液がドロドロで固まりやすくなります。そのため、早朝に血栓(血の塊)ができて脳梗塞や心筋梗塞などの心血管系の病気が起こりやすくなります。それを改善するのが、夜寝る前と朝の目覚めに飲む1杯の水です。特に、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分が多くイオン化している水が最適です。この水が腸管を刺激して、良質な便通を促します。
 心臓や脳など多くの臓器は交感神経が優位の時に活発になります。しかし、腸だけは休んだり、眠ったりしている時に活発に働くのです。毎日の入浴も健康維持に役立ちます。ややぬるめのお湯にゆっくりつかると腸の活動が活発化しますし、副交感神経が優位になってリラックスできるので、毎日のストレスや睡眠不足を解消してくれます。入浴の時間は就寝前1〜2時間が最も良いでしょう。シャワーだけではあまりリラックスできません。
 今日、昼夜を問わず働き続ける24時間型の生活・複雑化しストレス状態が続く人間関係・病原微生物や外来猛毒生物の侵入・知らず知らず口にしてしまう残留農薬や化学物質・活性酸素を発生させる電磁波など、心身に与えるストレス要因は多く、そして蓄積されていきます。そのストレスに対抗するのが自律神経で交感神経が常に優位に働きます。この状態で最も打撃を受けるのが腸で、疲労状態が続いてしまいます。リラックスできる副交感神経を優位に働かせる時間を持たないと腸は疲弊し、カラダの免疫機能や神経系機能が低下してしまいます。そして、下痢や便秘を繰り返すことになり、これが過敏性大腸炎や大腸ガンを誘発します。
 体内時計が乱れると、朝は胃腸が活動せず、そこに食物が入り負担になることで消化酵素の働きが悪くなって消化されません。腸は夜通し活動して腸粘膜を補修しています。そのため朝には、腸内細菌の栄養源となる食物繊維が必要です。朝食は体内時計を整え、健康体を維持するその日の出発点となるのです。腸の働きが悪くなり、腸内に粘膜片や未消化物が長く糞便として残っていれば、これが腸粘膜を刺激して大腸ガンが生じます。

◆健康は腸の元気から
 また、毎日決められた時間に起きて早朝に朝日を浴びると、生活習慣のリズムが乱れた体内時計はリセットされます。朝日を浴びながら深呼吸を繰り返すことで新鮮な酸素を肺や腸に送り込むことができメラトニンの分泌を刺激することができます。メラトニンは眠りを誘導する睡眠ホルモンで熟睡度を高めてくれ、朝日を浴びると分泌が抑制されます。
 体内時計のバランスを整え、働きを維持するには早起きと、朝一番のコップ1杯の水、そして朝食をしっかり摂ることから始まります。

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VOL.214『腐敗と発酵の話』 [生活]

◆食品の腐敗とは
 食品は初夏であるこの季節から腐敗しやすくなります。では、腐敗とはどのような現象なのか、また、気温が高まる夏に向けてどのような点に注意が必要なのか、見てみましょう。
 食品にはさまざまな細菌が存在し、腐敗していない食品でも1g当たり100〜100万個の細菌が存在しています。これらが大量に繁殖することが腐敗です。腐敗した食品には1g当たり1千万〜1億個の細菌が繁殖しています。腐敗を起こす細菌は食品の表面だけでなく内部でも増殖しており、それが急激に増殖することで腐敗が起きるのです。細菌は、温度条件によって数十分で分裂し、倍々に増えるので短時間で爆発的に増殖します。魚介類に多い腸炎ビブリオ金は一個の細菌が4.5時間で27回分裂し、1億4000万個に増殖します。腐敗が進んだ食品は味も匂いも急激に変化します。腐敗臭は主にタンパク質がアンモニアに変化することで生じます。同時に硫化水素、糖からは有機酸が作られ、それらがミックスして腐敗臭が起きます。
 細菌類は、腐敗の化学反応を進める酵素で食品中のタンパク質や糖を分解して、必要なエネルギーを得ています。その過程でアンモニアと硫化水素という腐敗臭の原因となる気体が生じます。これが人体には有害物質となります。腐敗の初期であれば摂取しても人体に影響はありません。一方、腐敗していなくても下痢や嘔吐を引き起こす食中毒菌が存在すれば食中毒を発症します。例えば、大腸菌O ー 157は100個程度の摂取でも重篤な食中毒となります。つまり、腐敗しているかどうかと食中毒になるかどうかは必ずしも一致しないのです。しかしながら、腐敗した食品を大量に摂取することで食中毒を起こす場合もあるので十分注意しましょう。

◆腐敗を防ぐ
 では、腐敗を防ぐにはどうすればいいのでしょう?基本的に細菌は水分量(細菌が利用する自由水)を減らすことで増殖を抑えることができます。これを利用したのが、塩漬けや砂糖漬け・干物です。食塩や砂糖を加えて自由水を減らし、乾燥させることで細菌が自由水を利用できなくなり増殖できなくなるのです。
 また、細菌の持つ酵素を働きにくい環境におくことで、菌の増殖を抑えることができます。通常、細菌の酵素は低温になると働きません。ですから冷蔵庫内は細菌の増殖を抑制できるのです。ただ、冷蔵庫内は10℃前後なので長期間の保存は期待できません。また、強い酸性の環境下では酵素が破壊され細菌は死滅します。例えば、酢漬けや乳酸菌を利用したぬか漬けは酸性度を高める保存方法です。

◆美味しくて体に良い発酵食品
 腐敗と同様な現象に発酵があります。古くからヨーグルトなどの乳製品や納豆などは発酵食品として知られていました。乳酸菌や納豆菌により食品が変質することで美味しい食品になります。乳酸発酵では、乳酸菌を利用して乳糖を乳酸に変え保存でき、美味しい味を作り出すことができます。腐敗と醗酵は細菌による同じ現象ですが、日本には数多くの発酵食品があり、発酵によって日本の食文化は発展したとも言えるでしょう。醤油や味噌は、塩味と旨味を合体させた発酵食品の中心的存在です。その中には旨み成分のグルタミン酸やイノシン酸をはじめ各種のアミノ酸などが含まれていて複雑な香味が生み出されます。
 食品を発酵させることで腐敗しやすい食品の保存性は高まりました。そして発酵食品は世界中で見ることができます。発酵させることで保存することが可能となり、さらに、栄養源にすることもできます。人類は膨大な時間をかけ、微生物を利用して知識を積み重ね、細かい感性と注意力によって発酵食品を作り、複雑で個性的な食品が生み出されています。食品の腐敗と発酵の違いについてお分かりいただけたでしょうか。

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VOL.212『末梢時計や時計遺伝子を知っていますか?』 [生活]

◆時計栄養学の研究
 近年、生活習慣病を予防する時計栄養学の研究が進んでいます。肝臓や膵臓などさまざまな臓器で時計遺伝子が働き、体内の各部で同時期に働いているのだそうです。体内時計では1日は24時間ではなく、24.5時間になっています。脳には親時計があり、人体で発生している多くの生物学的代謝の過程をタイミングよく調節しています。生物学的に時間的な乱れが生じた人は肥満や糖尿病、動脈硬化、うつ病、その他の慢性疾患を発症します。

◆時計栄養学と末梢時計
 人体における多くの時間的タイミングを再び元の状態に戻し合わせることで健康体と適切な機能を回復することができるという最先端の研究が進んでいるのです。例えば、飛行機で時速900kmの速度で数時間飛行すると、現在自分がいるタイムゾーンと体内時計がずれてきます。このような体験をした人は多いと思いますが、この時差ボケを解消するには長ければ1週間を要します。身体と脳が睡眠を求める時間と外が暗くなる時間を一致させるには脳内にある親時計を進ませるか、あるいは遅らせるしかありません。この体内時計が脳の親時計だけでなく、肝臓や膵臓などの臓器や脂肪組織にも多数の局所的な時計が存在し、人体はそれに依存しており、それを末梢時計と呼びます。この末梢時計を調節しているのが時計遺伝子です。1997年に哺乳動物で初めて時計遺伝子が発見され、カラダの時計合わせに関与する数10種類の遺伝子が特定されました。最大の進展は代謝疾患における体内時計の役割を読み取る研究です。代謝とはカラダが食物をエネルギーに変換し、利用に備えて蓄える一連の過程です。体重増加を調節する上ではいつ食べるか、何を食べるかが関係します。
 地球上の生命は1日24時間のサイクルで支配されています。地球上で最も古い単細胞生物も太陽エネルギーを利用し、光合成によりCO2と水から有機分子と酸素を作り出します。体内時計によって日没に合わせて光合成のスイッチを切り、夜間に働かないシステムで無駄なエネルギーや資源を費やすのを避けます。ヒトでは1970年代、体内時計が脳の視交叉上核(視神経が脳内で交差する部分)であることを見つけました。1990年代になり脳で働いているのと同じ時計遺伝子が、肝臓・腎臓・膵臓・心臓などの細胞で見つかりました。これらの細胞レベルの時計がさまざまな組織の遺伝子の3〜10%の活性を制御します。
 2005年には時計遺伝子の変異が肥満やメタボの発症に関連することが分かりました。メタボは心臓病や糖尿病のリスクを高めます。体内時計と昼夜の周期が慢性的にずれている生活をしている人は代謝疾患・心血管疾患・胃腸疾患のリスクが高まります。血糖値の低下が起こるのは、肝臓がブドウ糖を作り出して血液中に分泌する時期を調節する通常のリズムが失われるためです。血糖値が過剰に上昇するのを抑えるインスリンは血液中からブドウ糖を取り込んで筋肉や肝臓に蓄積する反応を促進します。この正常な血糖値の維持に膵臓時計遺伝子が不可欠なのです。そしてこの乱れが糖尿病となります。このような働きをさまざまな組織に存在する体内時計が果たしています。正確に同時期に働いてカラダの恒常性を維持しているのです。

◆時計遺伝子を活性化して健康に
 近年、心臓や胃の病気、ガン、神経疾患、精神疾患など、多くの病気には日内変動の乱れが関連することが分かってきました。体内時計の最適な働きに関する知識を考慮した新たな医学をサーカディアン医学と呼びます。これを組入れることで健康増進や慢性疾患の予防が容易になるといいます。つまり、規則正しい生活、睡眠時間の確保、野菜食、魚介類や適度な動物性タンパク質食、適度な運動習慣、笑いの絶えない日常生活、ミネラル十分な水分補給などが末梢時計を刺激し、時計遺伝子が活性化されて、健康な毎日につながります。

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VOL.211『適度な運動の効果の新しい報告』 [生活]

◆運動が海馬を大きくする
 近年、日本では医療費が42兆円を超え、そのほとんどが高齢者への医療費です。そこで健康寿命を維持するために、適度な運動習慣が指導されています。
 2010年頃から世界各国で適度な運動の効果例が報告されており、運動と脳の海馬との関係では、運動能力が高い人は海馬の体積が大きいことが分かりました。2011年のピッツバーグ大学の報告によれば、運動が海馬を大きくするとのことです。平均年齢67歳の認知症のない健常者120人を2群に分け、1群には毎日40分のウォーキングをさせ、2群には運動させずにストレッチだけを週に3回、これを1年間続けた結果、運動群では海馬の体積が2%増加しましたが、非運動群では海馬の体積が1〜2%減少しました。この結果を受け、運動は高齢者の認知症予防になると結論しました。

◆イリシンという新規ホルモン
 また、運動と健康の効果についての論文では、筋肉内には未知なる物質ができる機構があり、運動するとその物質が放出されてカラダに良い影響を与えるという報告があります。運動すると筋肉から放出されるイリシンという新規ホルモンの発見は2012年にネイチャー誌などで発表されました。イリシンは白色脂肪細胞に作用し、褐色脂肪細胞に変えます。つまり、脂肪が燃焼し、蓄積した脂肪の蓄積を改善するということです。10週間運動を続けるとイリシン濃度は2倍になるといいます。動物実験でも、肥満で糖尿病状態のマウスにイリシンを注射したところ、血糖値とインスリン分泌量が改善され、体重も減少しました。日本でも、糖尿病患者とその予備軍577人を対象に、食事と運動療法を行う群と何もしない群に分けて、1986年から1992年まで続け、14年後の2006年に糖尿病状態を調査した結果、食事や運動療法を行った群では糖尿病の発症を予防したとの報告があります。
 しかしながら、激しい運動はカラダに悪影響を与えます。ヒトの心臓は生まれてから死ぬまでに20〜30億回拍動しますが、心臓を構成している細胞は終末分裂細胞と呼ばれ、子供の頃にすでに分裂が終了しています。ですから、たとえ心筋細胞が傷ついても補充することはできないのです。通常、大人の心臓は1分間に50回ほど拍動します。運動すると拍動数は増加するので、心臓に負担がかかります。子供の頃から激しいスポーツを続けたヒトの心臓はスポーツ心臓と呼ばれ、一般人よりも心拍数が少なくなります。
 スポーツ選手のエネルギーは運動代謝で消費されるので、筋肉中に蓄積されたグリコーゲンで内臓脂肪は消費されません。グリコーゲンを燃焼させると低血糖を起こし、激しい空腹感を覚えるので食事量が増します。現役中ならそのエネルギーを完全に消費できますが、40歳を過ぎる頃には運動量が激減するのでエネルギーが過剰になり、脂肪の蓄積が進んでしまいます。つまり、スポーツ選手は運動をやめると肥満になりやすく、スポーツ心臓になるということです。

◆適度な運動はいいことばかり
 心臓に負担をかけずに内臓脂肪を燃焼させるには、散歩などの適度な運動をすることです。歩くことでふくらはぎが第2の心臓となり、心臓に負担がかかりません。息が上がらない程度でウォーキングを続ければ、基礎代謝が高まり、内臓脂肪が消費されます。逆に歩かないと足の静脈に血液が詰まって血栓ができます。また、歩くことは肩こりや腰痛の解消にも効果があります。適度な運動は、脂肪細胞が分泌する悪玉アディポネクチンを減少させ、善玉アディポネクチンを増加させるので、インスリン抵抗性を低下させ、糖尿病状態が正常な状態に戻ってきます。
 適度な運動習慣は海馬の細胞を増やして脳を活性化し、認知症の予防につながり、糖尿病や生活習慣病の原因となるメタボの解消にもなることが科学的にも証明されています。また、心臓に負担をかけることがないので、心臓や血管系疾患の予防にもなります。

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VOL.206『大腸ガンを予防しましょう』 [生活]

◆人は腸から老いる
 近年、健康寿命を維持し、肥満・高血圧・糖尿病・高脂血症・ガンなどの病気を防ぐために糖質(炭水化物・糖分)を制限する食事が注目されています。食事による老化防止です。
 日本では、昔から「人は腸から老いる」と言われています。腸(大腸・小腸)は食物を消化し、栄養分を吸収してエネルギー源にし、残った老廃物を便として排泄します。また、食事と同時に取り込んだ細菌やウイルスなどの病原体や食品に含まれる化学物質なども無毒化して体外に排出します。このように、腸には腸管免疫と呼ばれる働きがあります。ヒトの防御システムである免疫の60%以上が腸(小腸)に集まっているので、腸が健康でないと老化が進んだり、病気になったりします。長寿で知られるギリシャ・クレア島には世界最古のオリーブの樹があり、脂肪摂取量が多いにもかかわらず心血管系疾患による死亡率は低く、大腸ガンになる人もあまりいません。また、山梨県の長寿村では高齢者の腸内細菌中に悪玉菌の割合が低く、食物繊維や発酵食品が多い腸に良い食事、いわゆる「腸寿食」を摂っていることが分かりました。日常生活で腸に良い食事をすることで腸の負担を減らし、健康寿命を維持して老化を防いでいるのです。

◆腸は第2の脳
 腸内環境を悪化させる原因として食生活の変化やストレスがあります。例えば、ストレスを感じればお腹が痛くなりますし、環境が変化すれば便秘にもなります。つまり、心身のストレスが腸に大きく影響を与えるのです。ストレスを感じると腸の蠕動運動が減少します。蠕動運動には腸内に1億個ある神経細胞が関与しています。そのため腸はセカンド・ブレイン(第2の脳)と呼ばれます。
 腸の神経細胞は独立したネットワークで消化器官と協調して働いて便意を起こし、食物の消化や分解に欠かせない酵素とホルモンの分泌を促します。2007年、世界ガン研究基金のガン予防のまとめ論文によれば、メタボである肥満や内臓型脂肪は大腸ガンの発症に大きなリスク要因となると言い、さらに、高血圧や糖尿病、ガンを併発すると言います。
 メタボの発症は中年期以降、加齢とともに増加する傾向にあります。アメリカでも肥満の大腸ガン患者は正常体重の人と比較して死亡率と再発のリスクが高いそうです。アメリカ対ガン協会によれば、毎年15万人以上が大腸ガンと診断され、肥満は大腸ガンの危険因子であるだけでなく生存率を低下させ、特に女性よりも男性の方が予後が悪くなると言っています。

◆カルシウムとマグネシウムが重要
 腸にとって、最も良いミネラル成分はカルシウムとマグネシウムです。これらはどちらも生命維持に欠かせない成分で、例えば、カルシウムをせっかく摂取してもマグネシウムが不足していると骨や筋肉が作れませんし、腸の働きが低下してしまいます。マグネシウムは25〜60%が小腸から吸収され、大腸で水分を吸収して便を軟らかくする働きがあり、便秘予防に有効です。ニガリや岩塩・硬水・昆布・納豆・ゴマなどに多く含まれており、摂取の目安は1日あたり340mgです。また、神経の働きを助け、腸ストレスを除き、体温や血圧の調節や細胞内エネルギーに関与します。
 前述の世界ガン研究基金によれば、カルシウムは大腸ガンのリスクを低下させる栄養素であると言います。脂肪摂取量が増えると胆汁分泌量が増し、その主成分である胆汁酸が大腸ガンの引き金になります。カルシウムには胆汁酸に吸着し、便中に排泄して大腸粘膜を正常に保つ機能があります。同時に水分補給することで腸の蠕動運動を亢進するので、便秘の解消にもなります。カルシウムとマグネシウム、良い水を十分に摂取し、大腸ガンにならない体を作りましょう。

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VOL.199『ヒ素の毒素について』 [生活]

◆ヒ素とは
 最近、築地市場の移転先となる豊洲市場の施設の地下に空洞があり、そこに溜まった地下水にヒ素成分が含まれていることが分かりました。
 ヒ素は複雑な物質で金属と非金属の中間の性質を持つ元素です。そのため、電気を通したり、通さなかったりという半導体の性質を持ち、自然界ではさまざまな鉱物として存在します。
 古代から顔料として使用され、鮮やかな赤や黄色はエジプトでは古い墳墓の装飾に使用されました。毒や薬としても使用され、紀元前4世紀頃には潰瘍に効果があるとされ、中国では膿傷や腺病の治療に用いられました。その後、伝承薬として中国やインドから世界各地に広がりました。

◆さまざまな顔を持つ物質
 1786年からイギリスで本格的に薬剤として使用し始め、19世紀末までマラリア・結核・喘息・糖尿病・頭痛などに効く万能薬とされていました。また、強壮剤としての効果も認められており、1940年には梅毒の治療薬として有効性を示しました。その後、世界初の化学療法剤として、ネズミに噛まれた傷やワイル病・イチゴ腫に有効とされました。
 ヨーロッパには古くから致死量を超す二酸化ヒ素(毒性の強い亜ヒ酸化合物)を直接食べている農村地域がありました。ヒ素を摂取することで健康障害が消え、消化能力や性的能力が亢進し、顔色が良くなるという理由からです。体内に入ったヒ素は皮膚表面の血管を傷害するので顔が赤くなります。この効果がヨーロッパでは美肌効果として化粧品に利用され流行しました。日本でも化粧品として江戸時代から昭和初期まで歌舞伎役者や遊郭関係者が肌色を白くするのに使用していました。
 ヒ素は無味無臭という特徴から暗殺用の毒として古代ローマから流行しました。しかし、髪の毛に高濃度で蓄積する特徴を持つため証拠として残ります。日本では古くから小説や演劇で暗殺に使われる毒の代名詞のように用いられ、実際にヒ素を使った殺人事件も起きています。1955年の森永ミルク事件は粉ミルクにヒ素が製造過程で媒介として混入し、岡山県を中心に130人以上の乳児が死亡し、1万3000人が被害に遭いました。
 また、農薬、シロアリ対策、木材の腐敗防止、ペンキ塗料などにも大量使用されました。現在では環境毒性が指摘され使用禁止となっています。また、古い建物を壊す時にも汚染物質が出ると言われています。戦争でもその毒性から劣化ウラン弾・枯れ葉剤・鉛弾などに多量に使用されました。発ガン性もあり、皮膚ガンは19世紀頃から発生していました。ヒマラヤ山脈やチベット高原などの鉱山から流れ出るヒ素を含む水は、ガンジス川やメコン川に流れ込み、下流の国ではその水を飲料水や農業用水、地下水として使用するため環境汚染被害が拡大しています。

◆安全なの?
 近年、レアメタルの有効性や希少性が注目され資源価値が高騰したことで、ヒ素を含むレアメタルが増産されています。そのせいで途上国ではヒ素化合物が飲料水や農業用水に混入しています。日本では1971年、宮崎県土呂久ヒ素公害事件で慢性ヒ素中毒が出ました。肝臓や腎臓の疾患により死者が出て平均寿命も39歳とされました。村落住人はヒ素の毒性によって美肌美人が多かったそうです。
 ヒ素は海産物に高濃度で含まれ、タンパク質と結合しやすく、細胞内で呼吸に関する酵素を阻害します。海産物を多く摂取する日本人は体内のヒ素レベルが高いのですが、有機ヒ素は体内で代謝され尿から排泄されるため、毎日摂取しても問題にならない濃度です。ヒ素化合物は体内で酵素活性に影響を与えないため、微量のヒ素毒性なら全く問題はありません。
 現在、環境庁によればヒ素化合物による健康被害が起こる危険性はないと言います。今後豊洲の地下水問題がどのように進展するのか見守っていきたいと思います。

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