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VOL.219『グルテン不耐症・カゼイン不耐症』 [体]

◆日常の体調不良
 現在、成人の10%以上が日常的に偏頭痛に悩んでおり、増加傾向にあるといいます。偏頭痛の原因はストレスや肩こり・睡眠不足・ホルモンバランスの乱れなどとされ、季節の変わり目、気圧や気温の変化などに影響されると言われてきました。また、日常的なストレスや体調不良、イライラ状態が続く不安定さから疲労がたまり発症すると多くの人が思ってきました。ところが最近、食物アレルギーのグルテン不耐症が原因であることが分かったのです。

◆グルテン不耐症
 グルテン不耐症は世界ランキング1位になったプロテニスプレーヤー、ジョコビッチ選手によって広く世に知られることとなりました。彼の実家はピザ屋で、ピザやパン・パスタなどの小麦製品を食べて育ちました。グルテンとは小麦や大麦・ライ麦などに含まれるタンパク質のことです。タンパク質は消化されアミノ酸に分解されて腸管から吸収されます。ところがグルテンは一部が分解されずにタンパク質のまま吸収されます。健康な人はグルテンが小腸から吸収されずに便中に排泄されるのですが、グルテンが吸収され続ける人がいます。すると、グルテンが過敏に反応し、胃痛や胃痙攣、腹痛、便秘、下痢などの症状を起こします。これがグルテン不耐症です。
 欧米ではパンやパスタが主食であり、小麦は人類最古の農作物ですが、日本でも小麦を食べて体調を崩す人が増えています。昔の小麦に比べてグルテンの量が増えていることが原因と考えられており、グルテンが粘着性を増し、腸粘膜の免疫機能に傷害を与えています。
 アメリカでのグルテン不耐症は20人に1人の割合となっており、日本でも同様に増加していますが、自分の不調の原因について気づいていない人がほとんどです。日本では近年、食生活が変化し、若い人を中心に3食すべて小麦粉食品という人が増えています。つまり、グルテンを多く摂取することで腸に与える影響や負担が大きくなっているのです。
 小麦アレルギーは、小麦に含まれるタンパク質にカラダの防御機構が反応し、少量でも摂取すると直ちに症状が出ます。グルテン不耐症は小麦粉グルテンに対する反応で、消化が進んで発症するまでには時間がかかります。また、長い間食べていても何でもなかったのに、ある日突然体調が悪化しアレルギー症状を示すため遅延型アレルギー疾患とも呼ばれます。
 また、過敏性腸症候群の人が増えており、現在は日本人の5〜10人に1人の割合となっています。例えば、通勤ラッシュの車内で急に腹痛を起こしてトイレに行きたくなる人、これは各駅停車症候群とも呼ばれます。ストレスが原因と思われてきたこの病気は最近になってアレルギーが原因であることが分かりました。特に、パンやシリアルなどの小麦粉を使った食品を常食としている人に多いようです。

◆カゼイン不耐症
 牛乳やヨーグルトなどの乳製品を多く摂っている人に見られる病気がカゼイン不耐症と呼ばれるアレルギーです。毎日下痢に悩まされ、小麦粉や乳製品を中心にした食事が原因とは全く思わず、知らず知らすのうちにアレルギーになり、その症状はある日突然現れます。カゼイン不耐症は、牛乳を飲むとお腹がゴロゴロして下痢を起こす乳糖不耐症(ラクターゼ分解酵素の欠損)とは異なり、カゼインというタンパク質に対するアレルギー疾患です。カゼインは食品の栄養を高める栄養強化剤で、加工品の保水効果を高め、乳化剤としても添加されます。
 グルテンやカゼインはアミノ酸に分解されずにタンパク質のまま腸から吸収されるので抗体(IgE)が形成されてアレルギー疾患となります。このような食品によって、病院に行くほどではないが症状が繰り返し起こる、病院に行っても一向に症状が改善しないなど、思い当たる節はありませんか。小麦粉食品の摂り方を少し考えてみてはいかがでしょう。

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VOL.218『ミネラルの働きと歯の大切さ』 [体]

◆ヒトのカラダに必要なミネラル
 ヒトの生命活動に必要なミネラル成分は大きく2種類に分類されます。1つ目はナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、塩素、イオウで、これらは1日の摂取量が比較的多いミネラルです。2つ目は鉄、亜鉛、銅、クロム、ヨウ素、マンガン、セレン、モリブデン、コバルトで、これらは比較的少ないミネラルです。これらミネラル成分は、不足した場合に欠乏症を引き起こし、過剰摂取では過剰症を起こします。
 例えば、ナトリウム(食塩)は過剰摂取すると高血圧症を引き起こすので1日の摂取量は10g以下とされています。腎臓病でも食塩量は1日5〜6g以下に制限されます。食塩は過剰摂取すると血液中のナトリウムイオン濃度が上昇し、浸透圧が高まります。浸透圧とは水に物が溶けたときに生じる圧力のことです。血液の浸透圧の上昇は脳で常に測定され、高くなると喉が乾くので水を飲むように促します。浸透圧は生命維持の基本で、常に一定に維持されます。浸透圧が高まるとホルモンの作用で腎臓から水の排出量を減らし、血液量を増加させます。逆に利尿剤には尿の排出量を増やして血液量を減らすことで血圧を下げるという働きがあります。
 ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などは酸化されて陽イオンになりカラダ(細胞)が利用できるようになります。そのため、体内では必ずイオン化(水に溶けた状態)して存在します。カルシウムやマグネシウム、亜鉛は常に陽イオンの状態で存在します。これに鉄を加えたグループを必須ミネラル成分といいます。

◆鉄イオンの働き
 鉄イオンではヘムの鉄を除いた有機物をポルフィリンと呼び、体内で合成されます。ヘムは必須の栄養素ではありませんが、酸素はヘムのおかげで全身に運ばれます。血液が赤いのはヘム(鉄イオン)が赤いためです。空気中の鉄イオンは酸素で酸化されるので錆びます。しかし、体内では鉄イオンとして十二指腸から吸収され、タンパク質に吸着して酸化し、肝臓や骨髄に運ばれます。そこでフェリチン(タンパク質)となって貯蔵されます。肝臓に運ばれた血液中のヘムは酸素の力でビリルビンに変換され、肝臓から胆のうに貯蔵されます。
ビリルビンは胆汁中に入って、腸へ行き、腸内細菌によって分解され大便の色となります。
 赤血球の寿命は120日ほどで全身の赤血球の120分の1が毎日分解・造血されます。グロビン(タンパク質)はアミノ酸に分解されて再利用され、ヘムは分解されビリルビンが合成されます。これが正常な生命維持の活動です。肝臓が障害されビリルビンが胆汁によって排出されなくなると、目や皮膚に蓄積し黄色くなるのが黄疸です。また、鉄イオンは厳密にコントロールされていて、古くなった赤血球は膵臓でマクロファージによって分解され、ヘムとして鉄イオンは食事からの摂取量よりも多い1日あたり35mgが回収されます。したがって月経や臓器からの出血がなければ鉄欠乏にはなりにくいのです。マクロファージは鉄の排出タンパク質を通して鉄イオンを血液中に排出します。そして鉄イオンは骨髄に戻り再びヘモグロビンとなります。

◆歯を大切に
 生命維持に必須なミネラル成分は加齢とともに減少し、老化によって血管は硬くなり、動脈硬化が進みます。それでもカルシウム・マグネシウム・鉄・亜鉛などの摂取量が多ければ心血管疾患で死亡する割合は減ります。近年の疫学調査では、脳の記憶中枢が活性化されて、足が丈夫で、運動筋力が高い高齢者ほど長寿であることが分かりました。また、残っている歯の数が多いほど健康状態が良いという相関性が認められました。歯が丈夫で健康であれば運動能力に優れ、認知症がなく、記憶力も優れているというのです。血液中のカルシウム濃度は年齢に関係なく一定です。水に含まれるカルシウムとマグネシウムが1対1の割合で摂取できると歯も丈夫になります。歯が丈夫であれば肉や魚、野菜などをバランス良くしっかり噛んで食べることができます。ミネラル成分をしっかり摂っていれば歯も丈夫で、健康維持につながります。

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VOL.217『食の安全性について』 [食べ物]

◆食品による中毒の可能性
 人が生きていく上で食物は必須です。しかし実は食物の中には様々な毒物(生体異物)が含まれており、この毒物を研究するのが中毒学です。中毒学では内閣府の食品安全委員会が科学的見地に基づいて食品のリスク評価を行います。毒物は、カラダの健康維持の機構に介入し毒性を発揮します。食品の安全性を守り、中毒の発生を防ぐために日本には様々な機関が整備されており、世界的にもWHO(世界保健機関)やFAO(国連食糧農業機関)など国際機関が設けられています。
 食について『安全性』は科学的に評価できますが『安心』は個人の知識や感情・心理に左右されます。今日、食品の生体に与える障害や、その毒性を発揮するメカニズムを分子レベルまで分かっている毒物は少数で、大多数は未解明です。つまり、中毒の可能性を秘めているものの方が多いということです。

◆毒物とは
 毒物は大きく分けて、①自然毒(動物毒・植物毒・カビ毒・細菌毒)、②合成毒(工業化学薬品・医薬品・農薬)、③無機毒(重金属)、④その他(放射線)の4種類に分類されます。これらの多くは食品に含まれ、口から消化管に侵入する場合がほとんどです。つまり、毒を摂取するリスクが圧倒的に高いのが食品だということです。そして食品に起因する健康障害を食中毒と呼びます。食品に付着した細菌やウイルスによっては短時間で症状が現れることもあります。そしてその毒性や効果量は個体間で大きく異なります。
 しかし、カラダには薬物代謝酵素が存在し、これを使って毒物を無毒化・低毒化して体外に排泄する解毒システムが備わっています。
 食品は口から消化管に入り、食道から胃を経て消化・分解され小腸で吸収されます。必要な栄養素は各種輸送タンパク質によって吸収されます。タンパク質は吸収すべき分子の化学構造を認識し、細胞膜の脂質部分に取り込まれる以外に侵入経路はありません。一方、水溶性分子(栄養素)は細胞膜からは侵入できません。つまり、脂質は水と混合しにくく、水に溶けやすい分子とも混ざりにくいのです。食品添加物は水溶性が高いため小腸からは吸収されません。脂質性物質は小腸の細胞膜に侵入すると血液中に入り、門脈を介して肝臓に到達しますが、小腸や肝臓は解毒システムを備えています。また、血液中に入った毒物は腎臓の糸球体でろ過され尿細管から排出されます。つまり、腎臓が正常であれば分子量の大きいタンパク質や糖質・赤血球(出血)などの細胞は尿中には排泄されません。それでも、代謝機構が壊されると解毒できず病気を発症します。

◆水にも注意
 今日、食の安全に関する社会的許容量としてトリハロメタンの毒性が注目されています。水道水を塩素殺菌するために水道水には1リットルあたり0.1mg(0.1ppm)の塩素が含まれていなければなりません。この量であれば病原微生物は生存できません。しかし、気温が高くなると塩素が多く投入されるようになります。その塩素と有機物の反応によってトリハロメタン分子が大量に生成されます。体重60kgの人が1日2リットルの水道水を一生飲み続けると10万人に1人の確率でガンを発症するという報告があります。また、WHOは2011年にクロロホルム規制値を0.3mg / リットルに、2015年4月には水道水の水質基準に一般細菌・カドミウム・鉛・ヒ素・6価クロム・カドミウム・ベンゼン・亜硝酸窒素・テトラクロロエチレン・トリクロロエチレンなどを加えて、水系伝染病を劇的に減少させました。中毒の観点から見ると食品だけでなく、水道水にもリスク管理の発想を考える時代になってきたようです。

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VOL.216『食べ物の不思議の科学』 [食べ物]

◆お餅の秘密
 日本人に馴染みの深い食べ物の一つに餅があります。つきたての餅は軟らかいですが時間が経つと硬くなります。これは餅の成分であるデンプン(糖質)の構造が変化するせいで、時間が経過して乾燥するからではありません。
 デンプンは、房状構造のアミロペクチンと直鎖状構造のアミロースからなります。もち米は80℃のお湯で15〜20分温めると、つきたてに近い食感になります。これは房状構造が開いて内部に水分が入り込むためです。それが冷めると再び房状構造が閉じて硬くなります。また、焼いて温めても房状構造が開くので軟らかくなりふっくらします。これはアミロペクチンの房状構造が緩み、気泡の中の気体が加熱されて膨張するためです。電子レンジは一気に水分が沸騰するので餅には適しません。
 餅の食感はデンプン構造だけではなく、米の破砕片や細胞壁、気泡の割合で大きく変化するので、杵と臼でついた場合の方が市販の餅よりも食感がよくなります。市販の餅は細かい組織片や気泡・水分量が多いので食感が落ちるのです。冷凍保存した場合は房状構造が広がりアミロペクチンがそのまま固まります。

◆肉の美味しさの秘密
 次に、肉の美味しさは何で決まるのでしょう。牛肉・豚肉・鶏肉の中で一番硬いのは牛肉です。硬さの原因は筋繊維の太さで、筋繊維が太い牛肉は硬く、ついで豚肉、鶏肉の順になります。そのため牛肉は数週間冷蔵庫で熟成させます。すると筋繊維に含まれる酵素が筋繊維の結合を分解するため軟らかい肉質に変化します。肉の美味しさは、肉に含まれる脂肪やアミノ酸に起因します。豚肉は牛肉や鶏肉に比べてイノシン酸やグアニル酸などのうまみ成分が多く、牛肉には焼くことでうまみ成分に変わるアミノ酸が多く含まれています。和牛には和牛香と呼ばれる甘い香り(ラクトン)が含まれており、この香りは80℃で最も強くなります。80℃はすき焼きやしゃぶしゃぶの最適温度です。
 肉は脂がのっていると美味しいと言いますが、実は脂肪の質と香りのバランスが重要なのです。美味しい肉の脂肪(脂肪酸)には低温で溶けるオレイン酸が多く含まれています。オレイン酸量が多いほど口どけが良く美味しくなります。鶏肉の脂肪は牛肉や豚肉に比べて低温の30〜43℃で溶けるので、冷えた体でも口の中で溶けて美味しく感じます。
 また、牛肉はオスとメスで味が違います。オスは男性ホルモンによって肉が臭くなるので加工食品に使われます。また健康に発育していない場合は水っぽく、筋繊維が弱く肉質が悪くなるので美味しくありません。餌にビタミンAを含ませて肉質を変え、肉に脂肪が入りやすくなるように工夫した肉もあります。

◆納豆の科学
 次は日本伝統の発酵食品である納豆の科学です。納豆は煮た(蒸した)大豆に納豆菌を加え、16〜24時間ほど発酵させます。納豆菌は土の中の稲わらなどに分布し、バチルス属という菌種に含まれます。納豆菌の胞子は熱に強く、熱湯で30分程度熱しても死滅しないので、稲わらを熱湯で煮沸し、大豆の納豆菌以外の細菌を殺して作ります。納豆の最大の特徴であるネバネバの正体は、グルタミン酸が1万個ほど結合したポリグルタミン酸(PGA)です。納豆をかき混ぜるとPGAが糸を作りますが、グルタミン酸が増えるわけではありません。
 納豆は高タンパク質、低脂肪で大豆の80倍のビタミンKを含んでいます。ビタミンKは骨を作りますが、血栓を溶かす効果を弱めるので、心臓の人工弁の薬を飲んでいる人は食べられません。2010年、納豆のゲノムが解読され、新しい品種改良や健康効果が期待されています。
 毎日食べる食品を美味しく食べながら、それぞれの食べ物の特徴を知ることで健康的かつ人生が豊かになれば幸いです。

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VOL.215『ガンの本態とは』 [体]

◆ガンという病気
 誰にでも、人生の最後には死が訪れます。戦乱の世なら戦死する人が多くいたでしょう。衛生環境の悪い国なら感染症で亡くなる人が多いでしょう。どのような原因で死亡するかはその国や時代の姿を映しています。日本では1980年代から死因の第1位はガンです。その結果、ガンは国民病と呼ばれるようになりました。
 古代にはガンによる死亡の記録はありません。その理由は多くのガンが体内深くの臓器で発生することから外から見ても分からなかったからです。また、ガンで死亡する前に伝染病などの感染症や脳卒中・心筋梗塞などで亡くなっていたこともあるでしょう。1760年から1839年の間のガンによる死亡を調査したところ、100人に1人もいませんでした。ガンが増加したのは150年前くらいからなのです。医薬品や衛生環境の改善によりガン以外の病気で死亡することが少なくなり、最後にガンになり死亡するのです。つまり、他の病気に対する治療法は進んでいるけれども、ガンの治療法は40年もの間、画期的な進展が見られていないということです。

◆ガン治療が進展しない理由
 ガンはガン化を起こすDNAを傷つける原因や機会が増えることで発症すると考えられています。DNAが傷つくことで細胞の制御システムが徐々に破壊され、無制限、無秩序な細胞増殖が始まります。ガン治療が進展しない理由は、感染症ならウイルスの種類を明確にすれば感染防御の対策ができますが、ガンはその原因が明らかでないためです。ガン細胞は栄養と酸素が供給されれば永遠に細胞分裂を続けるので「(悪性)新生物」とも呼ばれます。
 カラダを構成する細胞塊(組織・臓器)は1個の受精卵から始まります。この受精卵が分裂を繰り返すことでカラダが作られます。その作り方はすべての細胞の核にあるDNAの設計図が元となります。通常は、正常な細胞分裂にはさまざまな形で増加に歯止めがかかっています。細胞分裂は細胞増殖因子と呼ばれるタンパク質の信号を受けて行われます。細胞増殖を制御する仕組みが遺伝子の設計図に書き込まれているからです。
 また、正常な細胞は何か異常が発生したと察知すると遺伝子が働いて自爆し、異常な細胞が取り除かれる仕組みになっています。これをアポトーシスといいます。さらに、細胞には寿命があり、分裂してコピーされる度に染色体の末端にあるテロメアが少しずつ短くなります。テロメアが短くなると細胞は分裂できなくなります。これが細胞の死です。
 このように、正常細胞には分裂増殖を抑える仕組みがあります。また、カラダには免疫機能という防御能力があり、外部から侵入したウイルスや細菌を攻撃する仕組みがあります。通常、自分の細胞は攻撃しません。ところが、病原体からの攻撃を受けると正常細胞の分裂にミスコピーが生じ、蓄積してガン化します。生じたガン細胞は毎日5000個ほど発生しますが免疫担当細胞が攻撃排除してガンの発生を制御しています。ここで取り逃がしたガン細胞が増殖して成長するのです。

◆免疫力を上げよう
 1個のガン細胞が大きな塊になるまでには10年ほどかかります。若い頃には免疫力が強いので大きな塊にはなりにくいのですが、40歳を過ぎると免疫力が低下してくるので、ガン細胞は急速に増加する過程で変異を起こし、他の臓器に転移します。ガンは転移すると抗ガン剤を投与しても徐々に効果が薄れる薬剤耐性になります。
 ガンは生物の進化に似ています。親から子に遺伝子が受け継がれる際、遺伝子変異が起き環境に適合していきます。ガン細胞は細胞分裂するほどDNAが変異して高い増殖能力を持つ怪物になります。これが感染症よりガン治療が格段に難しい理由です。ガンにならないように免疫能力を維持することが大切です。

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VOL.214『腐敗と発酵の話』 [生活]

◆食品の腐敗とは
 食品は初夏であるこの季節から腐敗しやすくなります。では、腐敗とはどのような現象なのか、また、気温が高まる夏に向けてどのような点に注意が必要なのか、見てみましょう。
 食品にはさまざまな細菌が存在し、腐敗していない食品でも1g当たり100〜100万個の細菌が存在しています。これらが大量に繁殖することが腐敗です。腐敗した食品には1g当たり1千万〜1億個の細菌が繁殖しています。腐敗を起こす細菌は食品の表面だけでなく内部でも増殖しており、それが急激に増殖することで腐敗が起きるのです。細菌は、温度条件によって数十分で分裂し、倍々に増えるので短時間で爆発的に増殖します。魚介類に多い腸炎ビブリオ金は一個の細菌が4.5時間で27回分裂し、1億4000万個に増殖します。腐敗が進んだ食品は味も匂いも急激に変化します。腐敗臭は主にタンパク質がアンモニアに変化することで生じます。同時に硫化水素、糖からは有機酸が作られ、それらがミックスして腐敗臭が起きます。
 細菌類は、腐敗の化学反応を進める酵素で食品中のタンパク質や糖を分解して、必要なエネルギーを得ています。その過程でアンモニアと硫化水素という腐敗臭の原因となる気体が生じます。これが人体には有害物質となります。腐敗の初期であれば摂取しても人体に影響はありません。一方、腐敗していなくても下痢や嘔吐を引き起こす食中毒菌が存在すれば食中毒を発症します。例えば、大腸菌O ー 157は100個程度の摂取でも重篤な食中毒となります。つまり、腐敗しているかどうかと食中毒になるかどうかは必ずしも一致しないのです。しかしながら、腐敗した食品を大量に摂取することで食中毒を起こす場合もあるので十分注意しましょう。

◆腐敗を防ぐ
 では、腐敗を防ぐにはどうすればいいのでしょう?基本的に細菌は水分量(細菌が利用する自由水)を減らすことで増殖を抑えることができます。これを利用したのが、塩漬けや砂糖漬け・干物です。食塩や砂糖を加えて自由水を減らし、乾燥させることで細菌が自由水を利用できなくなり増殖できなくなるのです。
 また、細菌の持つ酵素を働きにくい環境におくことで、菌の増殖を抑えることができます。通常、細菌の酵素は低温になると働きません。ですから冷蔵庫内は細菌の増殖を抑制できるのです。ただ、冷蔵庫内は10℃前後なので長期間の保存は期待できません。また、強い酸性の環境下では酵素が破壊され細菌は死滅します。例えば、酢漬けや乳酸菌を利用したぬか漬けは酸性度を高める保存方法です。

◆美味しくて体に良い発酵食品
 腐敗と同様な現象に発酵があります。古くからヨーグルトなどの乳製品や納豆などは発酵食品として知られていました。乳酸菌や納豆菌により食品が変質することで美味しい食品になります。乳酸発酵では、乳酸菌を利用して乳糖を乳酸に変え保存でき、美味しい味を作り出すことができます。腐敗と醗酵は細菌による同じ現象ですが、日本には数多くの発酵食品があり、発酵によって日本の食文化は発展したとも言えるでしょう。醤油や味噌は、塩味と旨味を合体させた発酵食品の中心的存在です。その中には旨み成分のグルタミン酸やイノシン酸をはじめ各種のアミノ酸などが含まれていて複雑な香味が生み出されます。
 食品を発酵させることで腐敗しやすい食品の保存性は高まりました。そして発酵食品は世界中で見ることができます。発酵させることで保存することが可能となり、さらに、栄養源にすることもできます。人類は膨大な時間をかけ、微生物を利用して知識を積み重ね、細かい感性と注意力によって発酵食品を作り、複雑で個性的な食品が生み出されています。食品の腐敗と発酵の違いについてお分かりいただけたでしょうか。

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VOL.213『21世紀型の感染症』 [健康]

◆増加傾向の感染症
 一般に世界3大感染症と呼ばれているのは、マラリア・結核・エイズ(AIDS)で、これらは毎年100万人以上が死亡する恐ろしい感染症でした。そんな中、最近ではマラリア対策が進み、死者は年間65万人ほどに低下しました。マラリアの原因はマラリア原虫という微生物で、結核は結核菌、エイズはHIVウイルス(ヒト免疫不全ウイルス)です。
 これら3大感染症とは別に、毎年100万人ほどが命を奪われている感染症が増加傾向にあります。それは呼吸器感染症と呼ばれる肺炎・下痢症・腸炎です。

◆下痢症・肺炎について
 ヒトは体の60〜70%が水分です。その水分を急激に奪うのが下痢症で、死亡のリスクも低くありません。特に、小児や高齢者が下痢症になると重篤な病気になることが多いので注意が必要です。WHOでは子供の下痢症を起こすロタウイルスのワクチン接種を奨励しており、日本でも小児科学会がワクチン接種を指導していますが、定期的接種には至っていません。高齢者(75歳以上)では冬場にノロウイルスによる腸炎が重篤化し、死に至ることがあります。ノロウイルスはロタウイルスと違って有効なワクチンがありません。有効な治療薬がないので、老人ホームや介護施設で流行すると死亡のリスクが高まります。下痢症は体の水分を奪う病気で、治療の根幹は失った水分を補給することです。
 日本人の死因の1位はガンで、2位が心筋梗塞や脳梗塞などの心臓・血管系疾患、3位が肺炎です。肺炎の原因は種々ありますが、主なものは細菌です。この細菌にも肺炎球菌・インフルエンザ菌・マイコプラズマ・レジオネラ菌など多種多様な菌があります。さらに、インフルエンザウイルス・RSウイルスなど多種のウイルスも原因となり、過敏性肺炎や間質性肺炎のように感染症でないものもあります。
 下痢症も大腸菌やサルモネラ菌、カンピロパクターなどの細菌が原因になるし、ノロウイルスやロタウイルスなどウイルスが原因にもなります。さらに、アメーバやジアルジアなどの寄生虫が原因となることもあります。

◆感染症の原因は多様化している
 このように、21世紀型の感染症は肺炎や下痢症、腸炎など原因が多種多様で複雑化しています。従来の感染症、例えば肺炎球菌なら抗生物質のペニシリンが効くペニシリン感受性肺炎球菌とペニシリンが効かないペニシリン耐性肺炎球菌に区別して治療できましたが、21世紀型の感染症はこれだけでは解決しません。そこで2008年、肺炎球菌の分類が変更されました。肺炎球菌の中でも肺炎を起こす肺炎球菌には抗生物質が効きますが、髄膜炎を起こす肺炎球菌には抗生物質が効きません。そのため分類を変え、治療法を変更しました。
 これらの違いは脾臓によることが最近の研究で判明しました。脾臓は左脇腹、腎臓と胃の間にある臓器で、日常的に脾臓の具合が悪いという人はいませんし、症状も現れませんが、感染症に対抗する免疫機能を持っています。しかし、交通事故や胃ガン、膵臓ガンなどの手術で血小板が減少すると、血液の病気の治療のために脾臓を摘出することがあります。すると感染症を引き起こしやすくなってしまうのです。特に、肺炎球菌に対して強い免疫力を持っており、攻撃・排除するのが脾臓なので、摘出した人は感染症を起こしやすくなります。すると、目やカラダの各部から出血し、多臓器不全を起こします。抗生物質を使用しても効果が見られず、みるみる体力が衰えて死に至るようなこともあります。
 近年、日本人の免疫力の低下が進んでおり、皮肉なことに、衛生環境が整備されたことも種々の感染症の発症の確率を急激に増加させる一因となっています。高齢者や小児の場合、重篤化するリスクが高いので、肺炎や下痢症、腸炎など身近に起きる病気に対して細心の注意を払い、早めに対処することが望まれます。感染症は新しい時代に入ってきたようです。


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VOL.212『末梢時計や時計遺伝子を知っていますか?』 [生活]

◆時計栄養学の研究
 近年、生活習慣病を予防する時計栄養学の研究が進んでいます。肝臓や膵臓などさまざまな臓器で時計遺伝子が働き、体内の各部で同時期に働いているのだそうです。体内時計では1日は24時間ではなく、24.5時間になっています。脳には親時計があり、人体で発生している多くの生物学的代謝の過程をタイミングよく調節しています。生物学的に時間的な乱れが生じた人は肥満や糖尿病、動脈硬化、うつ病、その他の慢性疾患を発症します。

◆時計栄養学と末梢時計
 人体における多くの時間的タイミングを再び元の状態に戻し合わせることで健康体と適切な機能を回復することができるという最先端の研究が進んでいるのです。例えば、飛行機で時速900kmの速度で数時間飛行すると、現在自分がいるタイムゾーンと体内時計がずれてきます。このような体験をした人は多いと思いますが、この時差ボケを解消するには長ければ1週間を要します。身体と脳が睡眠を求める時間と外が暗くなる時間を一致させるには脳内にある親時計を進ませるか、あるいは遅らせるしかありません。この体内時計が脳の親時計だけでなく、肝臓や膵臓などの臓器や脂肪組織にも多数の局所的な時計が存在し、人体はそれに依存しており、それを末梢時計と呼びます。この末梢時計を調節しているのが時計遺伝子です。1997年に哺乳動物で初めて時計遺伝子が発見され、カラダの時計合わせに関与する数10種類の遺伝子が特定されました。最大の進展は代謝疾患における体内時計の役割を読み取る研究です。代謝とはカラダが食物をエネルギーに変換し、利用に備えて蓄える一連の過程です。体重増加を調節する上ではいつ食べるか、何を食べるかが関係します。
 地球上の生命は1日24時間のサイクルで支配されています。地球上で最も古い単細胞生物も太陽エネルギーを利用し、光合成によりCO2と水から有機分子と酸素を作り出します。体内時計によって日没に合わせて光合成のスイッチを切り、夜間に働かないシステムで無駄なエネルギーや資源を費やすのを避けます。ヒトでは1970年代、体内時計が脳の視交叉上核(視神経が脳内で交差する部分)であることを見つけました。1990年代になり脳で働いているのと同じ時計遺伝子が、肝臓・腎臓・膵臓・心臓などの細胞で見つかりました。これらの細胞レベルの時計がさまざまな組織の遺伝子の3〜10%の活性を制御します。
 2005年には時計遺伝子の変異が肥満やメタボの発症に関連することが分かりました。メタボは心臓病や糖尿病のリスクを高めます。体内時計と昼夜の周期が慢性的にずれている生活をしている人は代謝疾患・心血管疾患・胃腸疾患のリスクが高まります。血糖値の低下が起こるのは、肝臓がブドウ糖を作り出して血液中に分泌する時期を調節する通常のリズムが失われるためです。血糖値が過剰に上昇するのを抑えるインスリンは血液中からブドウ糖を取り込んで筋肉や肝臓に蓄積する反応を促進します。この正常な血糖値の維持に膵臓時計遺伝子が不可欠なのです。そしてこの乱れが糖尿病となります。このような働きをさまざまな組織に存在する体内時計が果たしています。正確に同時期に働いてカラダの恒常性を維持しているのです。

◆時計遺伝子を活性化して健康に
 近年、心臓や胃の病気、ガン、神経疾患、精神疾患など、多くの病気には日内変動の乱れが関連することが分かってきました。体内時計の最適な働きに関する知識を考慮した新たな医学をサーカディアン医学と呼びます。これを組入れることで健康増進や慢性疾患の予防が容易になるといいます。つまり、規則正しい生活、睡眠時間の確保、野菜食、魚介類や適度な動物性タンパク質食、適度な運動習慣、笑いの絶えない日常生活、ミネラル十分な水分補給などが末梢時計を刺激し、時計遺伝子が活性化されて、健康な毎日につながります。

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VOL.211『適度な運動の効果の新しい報告』 [生活]

◆運動が海馬を大きくする
 近年、日本では医療費が42兆円を超え、そのほとんどが高齢者への医療費です。そこで健康寿命を維持するために、適度な運動習慣が指導されています。
 2010年頃から世界各国で適度な運動の効果例が報告されており、運動と脳の海馬との関係では、運動能力が高い人は海馬の体積が大きいことが分かりました。2011年のピッツバーグ大学の報告によれば、運動が海馬を大きくするとのことです。平均年齢67歳の認知症のない健常者120人を2群に分け、1群には毎日40分のウォーキングをさせ、2群には運動させずにストレッチだけを週に3回、これを1年間続けた結果、運動群では海馬の体積が2%増加しましたが、非運動群では海馬の体積が1〜2%減少しました。この結果を受け、運動は高齢者の認知症予防になると結論しました。

◆イリシンという新規ホルモン
 また、運動と健康の効果についての論文では、筋肉内には未知なる物質ができる機構があり、運動するとその物質が放出されてカラダに良い影響を与えるという報告があります。運動すると筋肉から放出されるイリシンという新規ホルモンの発見は2012年にネイチャー誌などで発表されました。イリシンは白色脂肪細胞に作用し、褐色脂肪細胞に変えます。つまり、脂肪が燃焼し、蓄積した脂肪の蓄積を改善するということです。10週間運動を続けるとイリシン濃度は2倍になるといいます。動物実験でも、肥満で糖尿病状態のマウスにイリシンを注射したところ、血糖値とインスリン分泌量が改善され、体重も減少しました。日本でも、糖尿病患者とその予備軍577人を対象に、食事と運動療法を行う群と何もしない群に分けて、1986年から1992年まで続け、14年後の2006年に糖尿病状態を調査した結果、食事や運動療法を行った群では糖尿病の発症を予防したとの報告があります。
 しかしながら、激しい運動はカラダに悪影響を与えます。ヒトの心臓は生まれてから死ぬまでに20〜30億回拍動しますが、心臓を構成している細胞は終末分裂細胞と呼ばれ、子供の頃にすでに分裂が終了しています。ですから、たとえ心筋細胞が傷ついても補充することはできないのです。通常、大人の心臓は1分間に50回ほど拍動します。運動すると拍動数は増加するので、心臓に負担がかかります。子供の頃から激しいスポーツを続けたヒトの心臓はスポーツ心臓と呼ばれ、一般人よりも心拍数が少なくなります。
 スポーツ選手のエネルギーは運動代謝で消費されるので、筋肉中に蓄積されたグリコーゲンで内臓脂肪は消費されません。グリコーゲンを燃焼させると低血糖を起こし、激しい空腹感を覚えるので食事量が増します。現役中ならそのエネルギーを完全に消費できますが、40歳を過ぎる頃には運動量が激減するのでエネルギーが過剰になり、脂肪の蓄積が進んでしまいます。つまり、スポーツ選手は運動をやめると肥満になりやすく、スポーツ心臓になるということです。

◆適度な運動はいいことばかり
 心臓に負担をかけずに内臓脂肪を燃焼させるには、散歩などの適度な運動をすることです。歩くことでふくらはぎが第2の心臓となり、心臓に負担がかかりません。息が上がらない程度でウォーキングを続ければ、基礎代謝が高まり、内臓脂肪が消費されます。逆に歩かないと足の静脈に血液が詰まって血栓ができます。また、歩くことは肩こりや腰痛の解消にも効果があります。適度な運動は、脂肪細胞が分泌する悪玉アディポネクチンを減少させ、善玉アディポネクチンを増加させるので、インスリン抵抗性を低下させ、糖尿病状態が正常な状態に戻ってきます。
 適度な運動習慣は海馬の細胞を増やして脳を活性化し、認知症の予防につながり、糖尿病や生活習慣病の原因となるメタボの解消にもなることが科学的にも証明されています。また、心臓に負担をかけることがないので、心臓や血管系疾患の予防にもなります。

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VOL.210『病気を予防するカルシウムの働き』 [体]

◆骨や歯になるだけではない
 カルシウムといえば骨や歯の成分であることは知られていますが、他にも生命維持に直結した働きがあり欠かせない栄養素の一つです。
 カルシウムの大切な働きには心臓や脳を動かすための情報伝達機能がありますが、この機能が細胞分裂に関わることも知られています。精子と卵子が受精する時、精子の先端にはカルシウムが存在し、このカルシウムが信号となって受精した瞬間から細胞分裂が始まります。ですから、精子がなくても卵子にカルシウムを注入すればその信号が伝わって細胞分裂は始まります。これを処女生殖または単為生殖といいます。

◆カルシウム不足が招く疾患
 細胞分裂の盛んな組織、例えば、骨髄の造血細胞や腸管の上皮細胞などは放射線で障害されやすいのだそうです。この放射線からカラダを守るのが副甲状腺ホルモンです。副甲状腺ホルモンは細胞中のカルシウムを増加させ、細胞の分裂と増殖を促進させます。放射線によって障害された骨髄細胞や腸管上皮細胞が分裂増殖することで、放射線の被害から立ち直るという動物実験があります。ところが、副甲状腺ホルモンが細胞増殖を刺激する作用は両刃の剣で過剰に働くと、骨を溶かし出すスピードが増すのでカルシウム摂取不足では骨粗鬆症になります。遺伝性の病気で副甲状腺ホルモンが大量に分泌される原発性副甲状腺機能亢進症という疾患があります。この疾患ではガンの発生が増加します。副甲状腺ホルモンが長期にわたって過剰に分泌されるため細胞内のカルシウムが増加し続け、細胞分裂と細胞増殖が刺激され続けてガンが発症してしまうのです。
 食生活の中でカルシウム摂取が少なく、欠乏状態が続くと、腎臓の働きが低下するのでビタミンDの活性型ビタミンD3への変換が低下し、カルシウムの腸管からの吸収が低下します。同時に副甲状腺ホルモンの分泌が亢進するためガンが発症しやすくなります。
 また、カルシウム欠乏が続くと免疫機能も低下します。カルシウム摂取量が低下すると細胞内のカルシウム濃度が上がり、病原体を攻撃・排除する免疫担当細胞内にカルシウムが増えるため働きが低下してきます。すると免疫細胞間の情報伝達機能が混乱し、ガン細胞を攻撃するNK細胞の働きが低下するので、ガン細胞を見逃してしまい処理することができず、ガンが発生しやすくなるのです。つまり、カルシウム不足はガンの発症を助長することになります。カルシウム不足によって活性型ビタミンD3の働きが低下し、胃がんや大腸ガンになる人が増えます。カルシウムは食事中の脂肪酸と結合し、腸管内の老廃物の排泄を促進しますが、カルシウム摂取量が不足すると腸管内に大量の脂肪分が流れ、腸粘膜を刺激し続けるので大腸ガンの発生を助長します。
 カルシウム濃度は、細胞内液と細胞外液の間で1対10000の差があり、この割合が維持されていれば生理的に正常です。ところがこの割合が乱れ、細胞内のカルシウム濃度が増すと病気になります。細胞内にカルシウムが異常に入らないようにする薬がカルシウム拮抗薬です。カルシウムが細胞に入らないことで高血圧にも効果があります。また、抗がん剤としても有効です。

◆しっかり摂って健康を維持
 カルシウムを毎日しっかり摂り続ければ、細胞内にカルシウムが異常に入り込むことがないので、血液中のカルシウム濃度が一定に保たれ、健康寿命が伸びます。さらに、吸収されないカルシウムが腸管内の老廃物と結合して糞便と共に排泄されるため、大腸ガンの予防となります。
 しかし、カルシウムは加齢と共に吸収力が低下します。カルシウムやビタミンDを大量に摂っても吸収性に優れているカルシウムでなければカルシウム不足になってしまいます。吸収性に優れているカルシウムを十分に摂取するように心がけ、同時にマグネシウムを摂取すればカルシウムの吸収を助けるのでカルシウム不足を防ぐことができます。

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