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VOL.221『身近に迫る外来有毒生物』 [生命]

◆ヒアリ、日本に侵入
 今年5月、極めて強い毒を持ち、殺人アリとも呼ばれる南米原産のヒアリが、日本で初めて発見されました。6月以降、兵庫、愛知、大阪でも発見され、7月には東京の大井埠頭で確認されており、侵入拡大が懸念されています。国内に定着している有毒な外来生物は数多くあり、環境省では今回のヒアリに対しても警戒を強めています。

◆ヒアリとは
 ヒアリ(火蟻)は、刺された時に火がついたような痛みを感じることに由来して名付けられました。体調は2.5〜6mmで赤茶色の攻撃性が極めて強いアリです。巣であるアリ塚を壊すと、一度に数100匹が襲ってきて衣類の隙間に入り込み、腹部先端にある毒針で刺します。毒の主成分は細胞を破壊するアルカロイド系の有機化合物で、傷口周辺が腫れてニキビ様の膿が出て、痛みは2週間ほど続きます。同時にアレルギー反応を起こすハチ毒に似たタンパク質を含んでいるので、急激なアレルギー症状が出て、重篤なアナフィラキシーショックを起こすと死亡する恐れもあるといいます。
 ヒアリは通常、植物を食べていますが、昆虫の幼虫やミミズ・カエルなどの小動物を見つけると集団で襲って捕食します。毒は狩りに利用するための生存に必要な武器なのです。環境省では、ヒアリを見つけたら絶対に触らず直ちに出先機関に連絡するよう求めています。刺されてしまったら、20〜30分ほど安静にして、もし重症化して症状が現れたら、直ちに病院で治療するように呼びかけています。
 ヒアリは、1942年頃までは原産地である南米中部でしか見られていませんでしたが、国立環境研究所によれば現在、日本を含む環太平洋の15カ国で発見されています。当初は北米やカリブ海諸国が中心でしたが、21世紀に入り5年間でマレーシア・オーストラリア・台湾・ニュージーランド・中国などで一気に拡大しました。その背景には中南米の急速な開発があり、経済発展が続く中国や東南アジアに向けて多くの農産物や資源を輸出するようになったため、それらに紛れたヒアリが貨物船などで各地に運ばれ拡大しました。
 ヒアリの繁殖力が強いことが生息地の拡大に拍車をかけています。通常、アリは一つの群れに女王アリが1匹なのですが、ヒアリの場合は数10匹いて、1日に数1000個の卵を産むため、拡大するスピードが極めて速いわけです。また、アリ塚は深さが10m以上にも及び駆除することが極めて困難です。

◆ヒアリだけではない、怖い外来生物
 ヒアリ以外にも、駆除から逃れて日本に定着してしまった有毒外来生物がいます。ヒアリと同じ種類の毒を持つアカカミアリはアメリカ軍の輸送物資に紛れ込み、すでに沖縄県や小笠原諸島の硫黄島に定着しています。6月には神戸港で見つかり、本州への上陸も確認されました。また、温暖なオーストラリアが原産で1995年に侵入したセアカゴケグモは沖縄から北海道まで40以上の都道府県に拡大しています。2012年以降には、中国原産で強毒のソマアカスズメバチが九州に定着しています。ヒアリも例外ではありません。他にも致死性の毒を持つキョウトウサソリや死亡例の報告もあるジョウゴグモの仲間も拡大しています。ヒアリの仲間でもあるコカミアリの侵入も懸念されており、環境省は港湾での水際対策を強化しています。しかしながら、外来生物の国内侵入は、海外との貿易が続く限りつきまとう問題です。外国からの渡航者も含め、日本に入って来るのを避けることは極めて困難です。早く見つけて駆除する以外に定着を防ぐ対策がないのが現状です。
 ヒアリに刺されたら、傷口周辺に痛みやかゆみ、腫れや発疹が全身に広がり、呼吸困難や血圧低下、意識障害となります。最悪ではアナフィラキシーショックで死に至ります。
 ヒアリを見つけたら速やかに関係機関に連絡し、もし刺されたらすぐに病院に行きましょう。ヒアリが日本に定着しないよう祈るばかりです。

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VOL.207『遺伝子のスイッチを良い方向に変えよう』 [生命]

◆遺伝子という設計図
 ヒトは60兆個の細胞(最近では37〜40兆個と言われています)によって成り立ち、その細胞ひとつひとつに生命があります。器官や臓器は300種類以上の異なる細胞からできており、それぞれの細胞が助け合って臓器を動かし、臓器同士も助け合いながらカラダを生かしています。
 その働きの中心になるのが遺伝子です。遺伝子は細胞の核に存在し、遺伝情報という設計図で各細胞を働かせます。遺伝子は自分のコピーを作り、自分の生存を最優先にし、自分の子孫を残すことを優先します。つまり、遺伝子は基本的に利己的なのです。また、遺伝子には細胞自体が自殺するプログラムも初めから組み込まれています。例えば、傷ついた細胞は自ら死んでいく、これをアポトーシスといい、生を継続するための利己的なシステムです。

◆ヒトは1億分の1のエリート
 ヒトは、まず精子と卵子が受精して受精卵となり、子宮内で胎児は発育し、出産後は成長して成人になります。受精する際には1億個以上の精子が先を争って1つの卵子を目指します。そのうちいちばん早く卵子に到達した精子だけが、卵子の膜を破って入ることができます。その瞬間に卵子の膜は変化し、他の精子は入れなくなります。つまり、誕生したヒトは1億分の1のエリートなのです。
 その後、母体の胎内で38週間を経て、20〜30億個の細胞数で生まれます。最初の段階は魚に似た形から両生類、爬虫類を経て哺乳類の特徴が出てきて人間へと進化します。その情報の源が遺伝子で、その遺伝情報が書き込まれたDNAはそれぞれの細胞核内の染色体に収納されています。染色体には22種類の常染色体と男女の性を決定する性染色体があります。これをヒトゲノムといいます。
 遺伝子にはタンパク質をつくる暗号(設計図)が書かれています。この暗号によって器官や臓器になるタンパク質が絶妙なタイミングでつくられるので、DNAは生命の設計図と呼ばれます。

◆笑いというポジティブな心が遺伝子を変える
 遺伝子には、永遠に同じ活動を続けるものもあれば、それまで眠っていたのに何らかの刺激で目覚めて働き出すものもあります。逆に活動していた遺伝子が休眠したりもします。つまり、遺伝子の働きは固定されたものではなく、条件次第で働き方を変える余裕があるということです。例えば、健康になるための遺伝子や才能を伸ばす遺伝子が眠っていれば、それらのスイッチをオンにして、起きて働いている病気を引き起こす遺伝子や、狂暴性を発揮する遺伝子などのスイッチをオフにすることができれば、人生は大きく変わります。
 では、どのようにしてスイッチは切り替えられるのでしょう。1つは、熱・圧力・張力・訓練・運動などの物理的要因です。2つ目は食物と科学的要因(アルコール・タバコ、環境ホルモン:ダイオキシン・発ガン物質など)、3つ目はストレスやショックなどの精神的要因です。具体的には、喜び・愛情・感動・感謝・祈り・笑いなどのポジティブな心は良い方向に遺伝子のスイッチを刺激し、悲しみ・苦しみ・恐怖・不安・恨み・意地悪などのネガティブな心は悪い方向に遺伝子のスイッチを入れるという研究が進んでいます。
 笑いというポジティブな心が糖尿病や高血圧、ガンの発症を抑制するという研究結果があります。これは思いの強さや心の持ち方が遺伝子を良い方向に変えることを示しています。人生を楽しむには健康であることが一番です。良い方向に遺伝子のスイッチを変えて活性化し、人生を楽しみましょう。

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VOL.201『ゲノム編集という超最新技術』 [生命]

◆ゲノム編集とは
 近年、遺伝子(ゲノム)の解析が進んでおり、遺伝子を操作する遺伝子工学や生命科学の分野では過去に類を見ない驚異的な技術革新が起きようとしています。
 例えば、自分の顔や身長・体型・性格・知能・運動能力・体質などが不満な人はたくさんいます。これらの一部を自分の思い通りに変えることができたら、別の自分に生まれ変わることができたらと誰もが思います。また、自分は無理でも生まれてくる子供には、誰より逞しく・賢く・美しく・健康体で良い人生を送って欲しいと望む親もたくさんいます。それを実現するのがゲノム編集という超先端技術です。この技術で医師や研究者、科学者は狙った遺伝子をピンポイントで修正する可能性が出てきました。自然界には存在しない神の技術と言われる人類創造です。そのゲノム編集の研究開発が急速に進んでいるのです。

◆ゲノム編集の可能性
 植物や動物の遺伝子を操作する遺伝子組換え技術は1970年代から始まりました。ところがこの遺伝子組換え技術は、1個の遺伝子を組換えるために1万〜100万回の実験を行い、やっと狙った通りの組換えができるという精度の低さや、膨大な費用・期間を要することが問題でした。これに対し、ゲノム編集では狙った遺伝子を構成する塩基をピンポイントで削除し、書き換えることができます。つまり、遺伝子の設計図であるDNAを自由自在に置き換えることができるのです。
 最新鋭のゲノム編集技術(クリスパー)は、高校生でも数週間で使えるようになると言われるほど簡単で取り扱いやすい技術で、従来の遺伝子組換えに要していた時間やコストも劇的に短縮されました。クリスパー技術では動物や植物のDNAも操作することができるので肉量を大量に増やす家畜や魚、あるいは腐りにくい野菜などを作ること、難病患者の治療に役立つ病気を動物(サル)で発症させることもできます。
 クリスパー技術の基礎研究は日本や欧米など世界各国で急速に進んでおり、近い将来には難病患者の治療に適用されます。特に、遺伝子の変異による遺伝病は、特定の遺伝子が明確な場合には治療しやすい状態になっています。クリスパーによるゲノム編集は、遺伝子治療やiPS細胞、細胞移植治療などとの組合せも適用できます。京都大学iPS細胞研究所では、世界の医療機関と共同で筋ジストロフィーやエイズなどの難病患者を遺伝子レベルで根治させるゲノム編集の治療法の研究を進めており、一部はすでに臨床試験に入っています。この技術は各種のガン・糖尿病・アルツハイマー病などの病気の治療にも応用できます。これには世界的ハイテクIT企業が様々な病院や研究機関と連携し、医療ビッグデータを先端AIでパターン解析して複雑な病気の原因遺伝子や発症メカニズムを解明しつつあります。

◆不安と希望
 しかし、医療への応用は危うい側面と表裏一体にあることも事実です。この技術を使うことで人類の改良が起きるかもしれないからです。例えば、骨を強化して骨折予防したり、心臓病にならない体質にするなど特定遺伝子を選択し、クリスパー技術を使って改良することで人類を強化することが可能だからです。お肌の老化を防いで若返ることもできます。さらに、生まれてくる赤ちゃんを受精卵の段階でゲノム編集すれば、高い知識や強靭な肉体、美貌を兼ね備えたデザイナー・ベビーを親の意図的感情で作り出すこともできます。これは技術的には可能でも倫理的には許されません。そこで、2015年12月の国際会議でヒト受精卵のゲノム編集は基礎研究に限定し、臨床研究は禁止することが採択されました。
 今、人類は神の領域に足を踏み入れようとしています。この技術が地球上に存在する生命体や生態系に与える影響は計り知れません。その中で、中国が倫理的に反して低レベルではありますがヒトでの臨床試験の実施を報告し、世界的に強い非難を浴びています。技術の進歩は歓迎すべきですが、人類に正しく役立つように使用されることを願うばかりです。

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VOL.186『脳の発達は胎生期から始まっている』 [生命]

◆妊娠検査の進歩
 最近は妊娠検査の際に、3Dや4D機能付きの胎児超音波検査によって胎児の顔や全身の姿を確認することができるようになっています。3D胎児超音波検査は胎児の姿を立体的に映し出し、4Dでは胎児の動く様子や心臓の動きまで撮影できます。これによって胎内の赤ちゃんの表情を感じとることができ、胎児に異常があれば見つけることもできます。
 妊娠検診では、腹部に機器を当てて手元のモニターを確認しながら、胎児の心臓や脳の構造、胎盤の位置などに異常がないか確認します。機器には画像を肌色にする機能があり、立ち会った家族も胎児の姿をリアルに感じられます。
 胎児超音波検査は妊娠初期には妊娠週数や胎児の染色体異常の確率などが解り、妊娠中期では胎児の形態異常の有無や、羊水量などを確認できます。
 かつては画像が不鮮明だったために誤診もありましたが、今では心臓内部の細かい構造まで確認できるほど分析精度が上がり、見分けられる異常の種類が増したため、産後の治療計画も立てやすくなってメリットは極めて大きいと言えます。検査によって異常が発見されれば、その結果を受け止める覚悟や正しい知識を前もって持つことができるので、妊婦の心配も少し緩和されます。

◆超音波検査には不安も
 超音波検査は1970年代から普及し始め、1990年代には全国に広がり、妊娠検診への公費負担の拡充なども背景となって一気に拡大しました。しかし、超音波検査が胎児の脳に与える影響など不明な点も多いことから、欧米では2〜3回程度が一般的で、必要最低限に止めることが推奨されています。妊娠後期は胎児の脳の神経細胞が急激に増加する時期で、無理に脳の超音波検査をする必要がありません。胎児は体内で順調に発育し、無事に完成すればその後は胎動で感じることができ、愛着も深まります。日本では高齢出産が増加する傾向にあり、それに伴って胎児の心臓などに異常が増す確率が高まっています。超音波検査は早く知ることで対応できるメリットもありますが、胎児の脳に障害を起こす可能性もあります。

◆男児は単純で自尊心が強い
 男児の子育てにおいて、すぐに乱暴したり、理由もなく暴れたり、走り回ったりするようになる3歳頃からの行動パターンが読めず、理解できない母親が多いそうです。少子化によって、男の兄弟がいなかったり、安全重視で過保護に育ったことが影響しているのか、母親には男性である息子が同性である娘に比べて遠い存在で、理解できないのです。一方、父親は同性なので男児の行動に悩むことはあまりありません。男児が母親を困らせるのは、好きな女の子の関心を引きたくて意地悪するのに似ていると父親の方は判断しています。男児は女児に比べて言葉の発達がゆっくりで、言葉よりも行動が先に出てしまうため、うまく気持ちを伝えられないもどかしさから手が出るなど、理解し難い行動をとるようです。そこで、母親が叱ると、男児は人前で怒られることを恥と感じるため、ますます話を聞かなくなります。男児は単純で自尊心が強いので、母親は優しく接すると良いようです。
 男児は胎生16〜20週目に精巣から大量のアンドロゲン(男性ホルモン)が分泌されます。これが男性脳を作って、運動機能が発達し、行動力が高まります。アンドロゲンシャワーの量が多いほど運動能力が高くなります。妊娠後期の脳の発達は、将来の人間形成に最も重要です。男と女は発生学的にも子供、いや胎児の時からすでに異なっているのです。


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VOL.184『人類の進化が生んだ21世紀型慢性疾患』 [生命]

◆類人猿からヒトへ
 日本人は農耕民族で、西洋人は狩猟民族であるとよく耳にします。そのため日本人には脂肪分の多い食生活は向かないといいますが、果たしてそうでしょうか。
 近年、地質学調査で発掘された遺跡からはクルミなどの木の実や動物・魚の骨が多く見つかっています。人類学上、ゴリラやチンパンジーなどの類人猿とヒトの系統が分かれたのは2400万年前で、人類は誕生からある時期までほとんどが狩猟や漁猟、採取を中心に生きてきました。農耕が始まったのはずいぶん後の話なのです。

◆狩猟から農耕へ
 遺伝子解析の進歩により、ミトコンドリアDNAという新しい解析手法を使うことでヒトの拡散の歴史が明らかになってきました。ヒトは約700万年前に類人猿の祖先と分かれ、約20万年前にアフリカで誕生しました。5〜8万年前には150〜2000人の集団がアフリカを出て北上し、世界中に拡散して、現在の人類に進化したといいます。
 ヒトはまず狩猟採取集団として出発し、自然界で手に入る食料を調達していました。この頃、大陸はまだ地続きだったので、大型の哺乳類を追って人類は世界各地に広がっていきました。ヒトの大きな大脳は脂肪やタンパク質を必要としました。そこで太く大きな親指を駆使し、石器を作って骨を砕き内臓を取り出すことで、栄養に富んだ肉食獣の食べ残しを主食として生き続けました。その後、大型の哺乳類を集団で仕留める知恵やチーム力を獲得し、火を手に入れて大きく進化しました。道具を作り、火を使ったり集団で暮らすことで罠を仕掛け、強い肉食獣と戦いました。
 組織的な農耕は1万年前にシリア北部やヨルダン川の付近で始まったといわれており、世界的に広がって定着したのは4000年前とされています。やがて人類は狩猟から農耕へと移行し、人口も50〜60倍と急激に増加しました。農耕が定着し、小麦や米のデンプン(糖質)を摂取するようになると、ヒトの血糖値は狩猟時代の2倍以上に上昇しました。

◆日本人の進化
 では、日本人はどこから来て何を食べていたのでしょう。アフリカを出た集団は日本列島にもやって来て縄文人となりました。その1万年後には水田稲作の技術を持った渡来人(弥生人)がやって来て稲作技術が伝わりました。弥生人のルーツは、ミトコンドリアDNAの解析から中央アジアのバイカル湖付近に住む人であったことが明らかになっています。
 5500年前の縄文時代前期の遺跡からは、どんぐりやクルミなど木の実の種子類、魚骨やウロコの魚骨層、淡水産の貝殻層が確認されました。その堆積状況から、秋に採取した森の食べ物を秋から冬にかけて食べ、春には淡水湖で魚や貝を、夏にはマグロやカツオ・ブリ・サワラなどの海水魚を獲って食べており、季節に応じた食生活をしていたことが分かります。それでも環境は過酷でエネルギー消費も多く、ほとんどは飢餓との戦いの日々でした。
 江戸時代中期には白米の食習慣が定着し、精米技術も向上しました。その結果が血糖値の急激な上昇を招きます。人類は進化に要した時間の大部分を狩猟によるタンパク質や脂肪、食物繊維の摂取で生き続け、その遺伝的仕組みをDNAに組み込みました。ところが農耕によって、血糖値の上昇、インスリン分泌の増加が起こり、大量の甘味の摂取が糖尿病という21世紀型の慢性疾患の増加を助長しました。糖尿病による死亡率の高い県では、農耕が盛んで、静かな田園地帯で美味しい米を作り、たくさん食べています。
 人類の進化が新しい病気も作ってしまったのです。タンパク質や食物繊維、そしてカルシウムをはじめとするミネラル成分を十分に摂取しましょう。白米よりもミネラル豊富な玄米を食べることをお勧めします。

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VOL.181『寿命の回数券「テロメア」』 [生命]

◆遺伝子とテロメア
 ヒトは遺伝子によって生かされ、125歳までは生きられると言われています。実際、長寿の世界記録はフランス人のジャンヌ・カルマンさんで122歳まで生きました。しかし、病気になりやすい人となりにくい人の間で遺伝子には差がないことが分かっています。
 人間の寿命を決めているものにテロメアと呼ばれるタンパク質があります。ヒトの体は60兆個の細胞で形成されており、細胞内の染色体の中には遺伝子が連なってDNAを形成しています。この染色体の末端にテロメアと呼ばれる物質がかぶさっていて、染色体の末端がほどけないように守っています。テロメアは、寿命の回数券とも呼ばれ、テロメアの長さがヒトの寿命を決めています。
 テロメアは、誕生時には約1万塩基対あり、成長とともに1年間で平均50塩基対ずつ短くなります。テロメアは細胞分裂するごとに短縮し、約5000塩基対まで短くなると細胞の寿命が来て死に至ります。その間を単純に計算すると100年くらいになります。ですから、ヒトは途中で病気になったり、事故で命を落とさない限り、100歳までの寿命を持っていることになります。テロメアの研究は1930年代から始まり、2009年にはテロメア研究で3人がノーベル医学生理学賞を受賞しました。

◆テロメアの短縮
 テロメアは細胞分裂ごとに短くなりますが、細胞は病気をするごとに分裂を速めます。高血圧や動脈硬化、糖尿病などの慢性疾患では、細胞が急激に分裂するのでテロメアの短縮が加速します。
 また、テロメアの短縮を加速するものに活性酸素があります。体内の活性酸素が増加すると寿命が急激に短くなり、病気は体内の活性酸素量を増やします。本来、活性酸素は体内に侵入する異物や病原体を排除する免疫機構です。細菌やウイルスなどが体内に侵入した時、免疫担当細胞がこれらを攻撃・排除できるのは活性酸素の働きによるものです。しかし、病原体によって死滅した細胞を補おうと細胞分裂が加速するので、テロメアは短縮してしまいます。
 毎日の生活で使う電化製品(スマートフォン・パソコン・冷蔵庫・電子レンジなど)からは電磁波が出ています。電磁波を浴びると体内では活性酸素が大量に発生します。また、私たちが毎日口にする水道水には消毒のための塩素が入っており、塩素と有機物が反応してできる発ガン性物質トリハロメタンが含まれています。トリハロメタンもまたテロメアを短縮します。激しい運動や過剰なストレス状態が続いたり、紫外線を浴びたりしても活性酸素が発生し、テロメアは短縮します。

◆フィトケミカルを摂ろう
 活性酸素を抑える食品にはフィトケミカルと呼ばれる食物繊維(野菜・海藻・キノコ類・豆類など)があります。他に抗酸化物質のポリフェノールを多く含む赤ワインや、穀物繊維である五穀米・玄米なども活性酸素を抑え、テロメアに良い食物となります。1週間に2〜3回肉類の資質と食物繊維を一緒に食べることは活性酸素の害を抑制します。
 日本では年々、活性酸素を中和するフィトケミカルを豊富に含む、野菜・果物・豆類・海藻類の摂取量が減っています。フィトケミカルは植物の細胞と細胞膜の中に存在します。熱を加えることで細胞膜が壊れるので吸収率が高まります。しかも熱に強いので、それらの味噌汁やスープは活性酸素を消す最高の料理と言えます。冬の寒い日には暖かい野菜鍋が最適です。テロメアの短縮をできるだけ遅らせ、健康長寿を楽しみましょう。

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VOL.161『地球外生命の存在を信じますか?』 [生命]

◆木星の衛星に海?
 2013年、アメリカの航空宇宙局(NASA)は木星の最大の衛星ガニメデの地下厚さ150Kmの氷層の下に100Kmほどの巨大な海が広がっており、生命体の存在が期待されると発表しました。ガニメデは半径約2600Kmの太陽系では最大の衛星で、惑星である水星よりも大きく、海の水量は地球上の水の量よりも多いといいます。ドイツの観測チームはガニメデのオーロラを観察した結果、オーロラの揺らぎが理論的な予想よりも小さいことから、塩分を含む大量の水がガニメデにあると想定できると言っています。また、土星の衛星エンケラドスにも厚い氷に覆われた海がある可能性が高まっています。

◆日本とヨーロッパから水星探査機
 日本とヨーロッパは共同で水星探査機を推進しています。日本宇宙航空研究開発機構(JAXA)が磁場や大気などを調べる磁気圏探査機MMOを、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)が地形や重力などを観察する表面探査機MPOを開発し、これらを乗せた大型ロケット(アリアン5)を2016年7月に打ち上げる予定です。これらの探査機は2024年1月に水星に到着し、別々の軌道を周回して観測することになっています。
 これまで水星の探査機はアメリカのマリナ−10号とメッセンジャーの2機があり、数多くの発見をもたらしました。水星は直径4480Kmで、1昼夜が176日です。質量は地球の40%で磁場はないとされていました。ところがマリナ−10号は微量な磁場を発見し定説を覆したのです。その後、メッセンジャーは水星の磁場の中心が地球と同じように星の中心ではなく、北に偏っていることを発見しましたが、その原因は分かっていません。
 岩石が主成分である地球型惑星のうち、太陽系で磁場を持つのは地球と水星だけです。水星は太陽に近いため、地表は400℃以上(表面温度はマイナス173℃〜427℃)になり、蒸発するはずの硫黄が多く残っています。金属元素のナトリウムを主成分とする希薄な大気が存在する仕組みも不明のため、MMOは水星表面の物質や大気の由来、惑星の成り立ちのメカニズムを探ることが目的となります。水星の近くを大量に飛び交う高エネルギー粒子を観測し、フレアと呼ばれる太陽の爆発現象や周辺環境を調査することで、生命が存在する地球の理解に役立ちます。
 水星は太陽に最も近い惑星なので、探査機を投入するには高度な軌道制御技術と膨大な燃料が必要となり、これが水星探査のネックになっていました。さらに、水星到着後は地球の11倍の強さの太陽光を浴びるため高温対策も不可欠で、MMOは光を反射させる鏡で機体前部を覆っています。今までに探査機が次々と送られてきた火星に比べて、水星は情報が少ないため、今回の水星探査は惑星の知見を深める重要な役割を担っており、日本とヨーロッパの共同研究の成果が注目されています。

◆生命誕生に必要なもの
 生命の誕生に必要な材料物質は化合物です。地球の生命は低分子有機化合物を30〜40種類使っています。そしてリン酸・水・ナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウム・鉄・亜鉛など、元々あったミネラル成分が地球の生命誕生に大きく寄与しています。
 ガニメデには巨大な海があり、海水中でシアン化水素の重合によって高分子化合物が生成され、加水分解されることでアミノ酸が作られ、重合してペプチド(タンパク質)が作られれば、ガニメデに生命が存在する可能性は高まります。探査機の進歩は宇宙への夢がさらに膨らむニュースですね。

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VOL.144『鳥インフルエンザより怖いエボラ出血熱』 [生命]

◆恐怖の感染症
 この夏、エボラ出血熱が猛威を振るい、その感染拡大は史上最悪の規模となっています。感染は、ギニア・リベリア・シエラレオネなど西アフリカが中心ですが、欧米やアジアでも感染者が出ています。死亡者は1000人を超え、今なお感染者が増加し続けているため正確な感染者数は把握できていないのが現状です。さらに、アフリカ中部のコンゴでは今回の流行とは異なる種類のエボラ出血熱が発生し、死亡者が出ています。医療関係者の感染も多数報告されているため、アメリカなどはこれらの国からボランティア団体を撤退させることを決めています。

◆エボラ出血熱とは
 エボラ出血熱は、コウモリが感染源であるエボラウイルスによる急性熱性疾患で、発病者が出た地域の川の名前から命名されました。最初の感染者は南スーダンの男性で、39℃の高熱と頭痛で入院し、その後、消化器や鼻から激しく出血して亡くなりました。
 エボラ出血熱の感染力は強く、感染者の血液や分泌物・排泄物などが感染源となり、死亡者からも感染します。感染者の体液などに触れなければ感染しないことから、空気感染はしないと考えられます。潜伏期間は2〜21日(平均7日)で、突発的に39℃以上の高熱・悪寒・頭痛・筋肉痛・食欲不振から嘔吐・下痢・腹痛の症状を示します。進行すると口腔・歯肉・結膜・鼻腔・消化器など全身から出血・吐血・下血して死亡します。ウイルスのタイプは5種類確認されており、タイプによって致死率は異なりますが、致死率は50〜90%と高く、治療しても失明など重篤な後遺症が残ることがあります。ワクチンはなく、有効かつ直接的な治療法はまだ見つかっていません。近年、アジアを中心に毎年流行する強毒性の鳥インフルエンザウイルスよりさらに恐ろしい感染症です。
 エボラ出血熱は、ラッサ熱・マールブルグ病・クリミアコンゴ出血熱などと共にウイルス性出血熱の1つで、死亡例のほとんどに出血が見られます。感染した体内では血液中にウイルスが増殖し、免疫力が低下します。症状が出始めた頃には血管内で血栓ができ、血流が妨げられるので大規模な出血となるのです。
 実験的にエボラウイルスをサルに感染させたところ、組織内からエボラウイルス抗原や、抗体が検出されました。これによって血液や体液からエボラウイルスの分離や診断法が確立されました。日本国立感染症研究所でも検出や検査は可能です。しかし、予防のための有効なワクチンがないため、治療法は対症療法のみとなってしまいます。予防するには、感染が疑われる人や動物の体液や排泄物に触れないこと、こまめに石けんで手を洗うことなど、基本的な衛星管理を実践することくらいしか方法はありません。

◆予防と治療の未来
 2010年、アメリカ陸軍感染症医学研究所では、2種類の治療薬実験でエボラウイルスに感染したサルの60%で発症を抑制しました。また、東京大学医科学研究所では世界で初めてエボラウイルスを遺伝子操作で無毒化することに成功しました。大規模感染が起きていながら有効な治療薬がない今、WHOは緊急対策として、条件付きで未承認薬の投与を認めました。今後は、治療薬とともに予防ワクチンの開発が急務となります。世界的に人の往来が激しくなった現代、いつ何時感染するか分からない恐ろしい感染症です。規則正しい生活習慣で免疫力を高め、ウイルスに打ち克つカラダをつくりましょう。

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VOL.134『エピジェネティクスってなんですか?』 [生命]

◆エピジェネティクス
 近頃、話題になっているSTAP細胞(万能幹細胞)ですが、これはiPS細胞と同じように受精卵から杯盤胞に分化した細胞に近い状態に初期化した細胞で、今後の再生医療の分野で期待される研究です。受精卵とは、父親の精子が母親の卵子に出会って融合し1つになった細胞のことで、父親由来の遺伝子と母親由来の遺伝子の両方を持っています。
 この1個の受精卵が何らかの原因で分裂し2個になり、それぞれが母胎内で細胞分裂を繰り返し成熟すると、一卵性双生児が誕生します。この2人は全く同じ遺伝子で成長します。
しかし、長期間にわたり全く違う環境下で育った一卵性双生児では、遺伝子に大きな差異が出てくるのです。例えば、一卵性双生児の姉妹が異なる環境で育ち、片方が早く性成熟期を迎えた場合、その子はもう片方の子の5倍以上の確率で乳がんを発症するという研究結果があります。このように、生活環境の違いで遺伝子が変異することを『エピジェネティクス』と言います。

◆遺伝子も環境で変わる
 種々の病気は遺伝子的要因のみで発症するのではなく、50%以上は環境的要因、つまりエピジェネティクスに関係した要素の影響を受けています。エピジェネティクスとは、遺伝子DNAだけでは決まらない新しい遺伝子変異で、DNAの情報は変わらないのに細胞の性質が変化し、それが記憶され、継承されていきます。
 通常、ヒトの細胞は60兆個あると言われていますが、もとは1個の受精卵から始まっています。もとの細胞のDNAは分裂するごとに2倍にコピーされ、同じ情報を持つDNAになります。ところが、細胞分裂を繰り返すうちにはコピーミスが生じることもあり、細胞の性質は少しずつ変化します。細胞は遺伝子の指示に従って、心臓や骨に変化し、200種類以上の細胞集団となりますが、分化した細胞の1つ1つにもDNAが存在します。それでも分化した細胞に使われている遺伝子は、全遺伝子の20%以下にすぎません。残りの遺伝子は使われないまま眠っているのです。
 生命のかなりの部分は遺伝子が決定しますが、環境要因によって遺伝子の使われ方は変化します。ガンの発症やメタボには環境要因が大きく関与しています。妊娠中に母親が摂取した栄養素が、子供の生涯における病気の発症に密接に関連することが分かっています。例えば、妊娠1〜3ヵ月に1日0.4㎎の葉酸を摂った母親の子供は、メタボになる確率が低いそうです。しかし妊娠初期に葉酸を摂り過ぎた母親の子供は、高リスクで自閉症・うつ病・喘息を発症するという報告があります。

◆健康を維持する環境を
 食生活で、高カロリー・高脂肪食を摂り、運動不足の生活習慣を続けると、300億個の脂肪細胞内に中性脂肪が蓄積します。通常、脂肪細胞は血液中のブドウ糖の取り込みや、脂肪分を貯め込む働きがあり、膵臓からのインスリン分泌の感受性を高めるアディポネクチンを分泌して、糖尿病を抑制しています。飽食の状態では、アディポネクチン分泌が減少するので、インスリン分泌が低下して糖尿病になりやすくなります。日本人の50%はアディポネクチン遺伝子が変異して分泌量が少ないので糖尿病になりやすいのです。
 適度な運動習慣を続けることは、脂肪細胞から脂肪量を減らし、アディポネクチンを増やします。全ての病気は遺伝的要因に環境要因が加わってエピジェネティクスが働き発症するのです。遺伝だとあきらめずに健康を保つための食環境・生活環境を整えましょう。

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VOL.127『ヒトはどこから来たのか?』 [生命]

◆赤い雨のなぞ
 2001年夏、インドの南部500kmにわたって赤い雨が降りました。場所によっては血のようだと話題になりました。雨は大気中の水蒸気が何かを核として凝結し、それが雨粒となって降ってくるのです。過去には黄色や黒い雨が降ったとの報告がありますが、黄色い雨は砂漠の砂などが巻き上がって細かなチリとなり、その周りに水蒸気が付着、凝結してできた雨です。黒い雨は、火山の噴火や原爆による灰などに水蒸気が付着してできる雨です。
 一方、赤い雨の正体は不明で大きさ4〜10μmの細胞状のものでした。その細胞状物質を分析したところ、細胞核やDNAが見つかっています。この雨が降る前に大気中で大きな爆発音があったことから、彗星の爆発によるものではないかと推測されています。地球以外の惑星や衛星にも生命は存在するかもしれません。以前から地球上の生命体は宇宙から来たという説もあります。
 生命が存在するかもしれない星といえば、まず、水の存在が推測されている火星があげられます。また、木星の衛星の1つであるエウロパでも地表に厚い氷が見つかっています。土星の最大の衛星であるタイタンには川のような跡があり、水が凍って存在するように見えます。これは大気中のメタン雲から雨が降ってできたものと推測されています。生命を特徴とする分子は極めて複雑です。もしも宇宙に知的生命体が存在しているなら、すぐに見つかってもおかしくないという考えもあります。地球上の生命体の誕生や進化も、偶然か必然か学者間でも見解が分かれています。

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◆生命とは
 細胞というシステムの構造が連続的に維持されていることを生命といいます。細胞はタンパク質で作られ、更新され、その機能を維持します。生命体内で起こるさまざまな化学反応は代謝といい、それにはエネルギーが必要となります。生物では、体内のグルコース(ブドウ糖)が酸素と反応してエネルギーが発生し、水と二酸化炭素が廃棄物として発生します。逆に、植物は二酸化炭素と水からグルコースを作り、廃棄物として酸素が発生します。これを光合成といいますが、この酸素のおかげで、地球上の多くの生物が生存することができるのです。光合成を行うには、水と二酸化炭素のほかに太陽エネルギーが必要となります。
 地球上に最初の生物が誕生した頃、生物にとって酸素は猛毒でしたが、酸素を使ってエネルギーを効率よく獲得できるようになって格段に進化を遂げました。生物はグルコースを得るために植物が必要となります。つまり、生命は秩序を維持するために絶えずエネルギーを必要とし、地球上の生命体には太陽のエネルギーと水が不可欠なのです。

◆水は生命の根源
 現在、私たちが確認できる生命体は地球上にしかありません。生命の起源となるのはアミノ酸の存在です。地球上の生命体のアミノ酸と隕石中に存在するアミノ酸ではアミノ酸のタイプが異なり、地球上ではL型です。隕石に含まれるアミノ酸は全てD型です。地球上の生命体になぜD型でなくL型のアミノ酸が使われたかについてはまだ解明されていません。そして、地球上の生命体がどこから来たかもまだ分かりませんが、太陽と大気と水があったから誕生し、進化したのでしょう。生命の源である水を大切に、カラダに良い水を日々たっぷり摂り入れて健康を維持しましょう。