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VOL.229『骨粗鬆症を予防して健康寿命を延ばす』 [体]

◆高齢化とQOLの低下
 日本は高齢化が加速しており、骨量が減少して骨がスカスカで脆くなる骨粗鬆症が自覚症状がないまま進行し、気づいたら骨折をしているという人が増えています。骨折は要介護や寝たきりの原因となり、QOL(生活の質)低下につながります。
 骨は常に破骨細胞が骨を壊し、骨芽細胞が新しい骨を形成するという新陳代謝を繰り返しています。これを骨の代謝回転と呼びます。成長期では骨芽細胞が破骨細胞の3倍以上の割合で骨を形成します。逆に閉経後の女性では破骨細胞が3倍以上の割合で骨を吸収し、壊します。骨の形成と吸収のバランス(カップリングという)を調整しているのがエストロゲンという女性ホルモンです。閉経によってエストロゲン分泌が減少すると、骨が吸収される速度が速まり、骨の形成が追いつかないため骨が脆くなります。

◆骨粗鬆症の怖さ
 骨粗鬆症では骨量と骨密度が減少し、骨に鬆(す)が入ってスカスカ状態になります。するとほんのわずかな衝撃でも骨折を起こします。特に、高齢者が太ももの付け根の大腿骨近位部を骨折すると、寝たきりや要介護の原因となります。骨粗鬆症は女性に多く、更年期以降に急激に増えます。
 骨粗鬆症の危険因子は加齢と閉経によるホルモン低下の他に、ダイエットによる栄養不足や飲酒、喫煙、運動不足などの生活習慣や、長期のステロイド剤使用による慢性疾患があります。女性では60代で5人に1人、70代で3人に1人、75歳以上では2人に1人の割合で骨粗鬆症となります。男性でも70代で5人に1人の割合となり、骨粗鬆症患者は全国で1300万人以上と推計され増加傾向にあります。ほとんど自覚症状がなく、背骨が体の重さで潰れる圧迫骨折となり、身長が2〜3cm低くなります。病院で問診を受け、骨密度検査や骨吸収と骨形成のバランスを測る骨代謝マーカー検査、胸椎や腰椎の骨折や変形、X線検査によって骨粗鬆症かどうかの診断ができます。
 通常、骨量は20〜30歳ごろをピークに徐々に減少していきます。20〜40歳までの平均骨量が若年成人の平均値と定められており、平均骨量の20〜30%減少までは正常域とされます。骨量の減少が30%以上になると骨粗鬆症と診断されます。20〜30代に激しい運動していた女性はエストロゲン分泌が急激に低下するため、骨粗鬆症による疲労骨折を起こしやすいので注意が必要です。
 治療は、食事の栄養バランス・適度な運動の習慣・薬物治療が基本となります。服薬回数は程度によって1日1回から月1回、6ヶ月から1年に1回などさまざまです。
 厚生労働省によれば2016年の日本人の平均寿命は男性81歳、女性が87歳です。一方、内閣府の高齢社会白書では自立して生活できる健康寿命は男性が71歳、女性は74歳で、平均寿命と健康寿命の間には10歳前後の差があります。その大きな要因が骨粗鬆症による骨折です。要介護の原因の1位は認知症、2位が脳血管障害、3位が高齢による骨折・転倒でその背景には骨粗鬆症があります。

◆予防と治療
 骨粗鬆症の予防や治療の基本は栄養素です。つまり、骨の主成分となるカルシウム・マグネシウム・ケイ素などのミネラル成分や、骨の代謝回転に必要なタンパク質、ビタミンDや納豆に多く含まれるビタミンKなどを積極的に摂取することです。さらに、散歩程度の適度な運動習慣や日光浴も効果的です。日光浴をすることでビタミンDが形成されます。高齢者は骨に体重の負荷がかかるので激しい運動で筋肉を鍛えることは避けましょう。動脈硬化が進んで血管が切れ、出血する確率も増します。むしろ、転倒防止の方が重要です。
 最近、WHO(世界保健機関)が開発した骨折リスク評価法では、40歳以上で年齢や性別、骨折の質問に対してインターネットで答えると、10年以内の骨折の確率が算出されます。このような方法を活用して自分の骨の状態を確認してはどうですか?

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VOL.228『細胞間の情報交換が生命維持に関与する』 [体]

◆コミュニケーションの取り方
 ヒトは古代から情報交換を行って生き延びてきました。文字のないインカ帝国では紐にコヨリをつけて人口を把握していたそうです。指を折って数える代わりに紐に結び目を作り、区切りの良い数になると、新しく色の違う紐を結ぶことで間違いを減らしていました。この方法なら言葉や文字が無くてもみんなが数を共有できました。他の民族と突然会話する羽目になった時は、身振りや手振り、擬音や目つきで分かり合います。今日、世界の人口は70億人を超え、言語は6000種類にも及びます。
 機能が異なる200種類以上の体内の細胞は、内外からの刺激に対してバラバラに反応するのではなく、規則正しく一貫して働いています。細胞は横の繋がりばかりでなく、時間と空間との縦の流れにおいても統一した自己を維持します。つまり、自分以外の物質(病原体や異物など)が体内に入ってくると、全てを非自己と判断して免疫機能(白血球)が攻撃・排除することで病気にならないようにしています。

◆体内の情報伝達
 自分は自分ですが、身体的には昨日の自分と今日の自分とは違っています。つまり自分という存在は、変化しつつも心やカラダは統一性を保っているのです。その統一性は細胞同士が互いに情報交換しているからこそ成り立ちます。カラダの内部では情報伝達物質であるタンパク質が言葉の代わりに行き交いカラダをうまく調節しています。目も耳もない細胞がどのようにして別の細胞に情報を伝えるのか、そこには言葉を使いこなすシステムがあります。ある細胞がタンパク質をあるタイミングで分泌して近くの細胞に働きかける、また、あるタンパク質が血流を介して遠くの細胞にまで到達し働くなど。さらに栄養素や酸素、酵素、化学伝達物質などの情報が神経繊維に伝わり、電気信号となって別の神経細胞に届く、このような情報伝達が言葉となって生命維持の複雑な作業工程や高度な分業作業を遺伝子の設計図によってスムーズに進めていきます。そしてこれらは免疫機能の防御システムや神経伝達物質のネットワークシステムとなり、生命が統一された状態で維持されます。
 脳内には1000億個の神経細胞が密集し、それが1本の神経繊維となり、他の神経繊維と1000〜10000箇所のシナプスで結合しています。この膨大な数のシナプスの神経伝達活動によって情報伝達が行われるので、日々豊かな人生を送ることができます。神経ネットワークを形成することで情緒という心が他人を共感させることができ、心が自分の遺伝子を動かして免疫機能に影響を与え、カラダの防御システムが働きます。意識を強くする感覚は、直感・見る・聞く・嗅ぐ・味わう・想うで、気づかぬうちに内部から発せられます。これらも言葉ではないカラダの情報システムです。
 ヒトは仕事をして普通に暮らします。誰かを恋しく想ったり、家族を愛したり、些細な出来事に頭を悩ませ、突然の不運を呪い、病気や感染症を恐れ、健康維持を願います。日常生活の中で、寝ている時も、目が覚めている時も、意識がある時もない時も、カラダの中で細胞同士が言葉(情報交換)を交わすことで、カラダの仕組みは維持され、生命が維持されているのです。何事もなかったように毎日を過ごし、そのように時は流れていきます。

◆情報交換が維持された証
 カラダの細胞は内部の遺伝子プログラムに従って順序よく働いています。これは人類の進化の過程において遺伝子に組み込まれ、今日まで生殖行動によって優秀な遺伝子を継承し、存在してきた結果です。途中で突然変異が起こり、異常な遺伝子になっていれば死に絶えてしまっていたはずです。今ある存在は細胞と細胞との間の規則正しい情報交換によって遺伝子が維持された証です。その大きな役割を担うのがカルシウムやカリウムなどのミネラル成分です。これらミネラルがなければ情報は伝わりません。そして、細胞が老化し、壊死したた時、ヒトは死に至ります。細胞の情報交換は死ぬまでずっと続くのです。

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VOL.226『肥満対策となる新たな分化誘導因子の発見』 [体]

◆肥満対策の朗報
 脳梗塞や心筋梗塞につながるメタボリックシンドローム:内臓脂肪症候群、通称メタボや肥満症の予防または抑制には、食事の減量や運動などで生活習慣を改善することが基本とされていますが、それを長期間継続することは極めて難しいことです。
 2017年9月、東京大学の研究グループはエネルギーを消費してくれる細胞を薬で増量し、活性化するという新たな治療法を発見し、報告しました。かなりの朗報です。

◆エネルギー消費促進を誘導する因子
 メタボや肥満の対策にはエネルギー摂取量を抑制することと、摂取したエネルギーの消費を促進するという2つの方法があります。そこで、治療を行う上で、脂肪治療法を使って減量させる手術などを行うことで摂取量の抑制を行ってきました。ところが、食欲は記憶として定着しているため、脳内の食欲中枢に作用して食欲を抑制する肥満治療薬では、うつ病や自殺のリスクが生じるなどの副作用があり、問題となっていました。また、欧米で多く実施されている小腸の一部を切除し付け替えることで消化吸収を抑える減量手術は効果が確認されていますが、カラダへの負担が大きいのが問題でした。それらを解決すべく、東京大学・糖尿病代謝内科では、脂肪を蓄積させずに燃やす方向に働く褐色脂肪細胞を増殖させ、この細胞を活性化させることでエネルギー消費を促進し、減量する方法の研究を続けてきました。
 脂肪細胞には、エネルギーの貯蔵庫として知られる白色脂肪細胞の他に、寒冷下で体温を保つために熱を作り出しエネルギーを活発に消費する褐色脂肪細胞があります。褐色脂肪細胞は、ヒトでは新生児の頃にしか存在しないと思われていました。ところが最近になって、成人にも首や肩甲骨・鎖骨・腎臓の周囲に存在することが確認されたのです。この褐色脂肪細胞には、筋肉の元となる筋芽細胞が分化し、発育してできるという特殊性があるので、筋芽細胞を利用しようと考えましたが、筋芽細胞は通常、筋細胞に直ちに分化してしまうため褐色脂肪細胞にはなりません。そこで褐色脂肪細胞に分化するように誘導する因子の探索が世界中で研究されるようになりました。研究が進む中、東京大学のグループはマウスのDNA解析からNFIAと呼ばれる新たな誘導遺伝子を発見しました。NFIA遺伝子が欠損したマウスは褐色脂肪細胞の遺伝子プログラムに大きな障害が起きることを突き止めたのです。過去にはPRDM16と呼ばれる誘導遺伝子が見つかっていましたが、PRDM16遺伝子だけでは十分に褐色脂肪細胞を誘導することができませんでした。そこで世界中で褐色脂肪細胞を誘導するための2つ目の遺伝因子の発見が待たれていました。
 脂肪細胞といえば、通常白色脂肪細胞のことを指します。しかし白色脂肪細胞の中に極めて少量で低い能力ではありますが、熱を作り出し、エネルギー消費を行う性質を持つベージュ細胞と呼ばれるものがあることが分かりました。そこで、脂肪細胞になる前の細胞にNFIA因子を導入することで白色脂肪細胞でも褐色遺伝子のプログラムを活性化できることを突き止めたのです。つまり、NFIA因子を導入することでベージュ細胞を作ることを可能にしたのです。

◆肥満対策の切り札
 NFIA因子の発見の報告は、イギリスの科学誌『ネイチャー・セル・バイオロジー』の8月15日付オンライン版に掲載され、国際的にも反響を呼んでいます。10年以内にはNFIA因子(遺伝子)の量を増量し、褐色脂肪細胞を活性化させる飲み薬を開発したいと考えられています。
 NFIA遺伝子には筋肉を増やす作用がないので、体力を増進し、維持するためには運動することが重要であることには変わりありません。肥満防止には運動は不可欠です。しかし、エネルギー消費細胞であるNFIA遺伝子は、肥満対策の切り札となる可能性を秘めています。薬の開発が期待される話題です。

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VOL.224『肥満防止の行動がストレスに』 [体]

◆飢餓状態が長かった人類
 ヒトの祖先が地球上に出現してから700万年が経過したと言われています。その間のほとんどをヒトは飢餓状態で過ごしてきました。ヒトには生きていく上で必要なエネルギー量があります。カラダを動かし、体温を維持して、基本的な代謝を円滑にするための熱量を基礎代謝と呼び、成人では1日あたり2000Kcalです。この範囲内であれば摂取した食物は燃やされ、エネルギーとして消費されるので、体重は増えません。人類の歴史の中で長く続いた飢餓状態を生き延びることができたのは、細胞内の遺伝子にこのシステムが組み込まれたからなのです。そこで、大量の食料が得られた際にはそれをできるだけ取り込み貯蔵するように、カラダの仕組みが整えられました。
 しかし、この数十年の間に人類を取り巻く食料事情は一変し、日本を含め経済発展を遂げた国々では飽食の時代となりました。ところがヒトの遺伝子や基礎代謝量のメカニズムは飢餓当時のままで、これを組み替えるには数十年では短か過ぎるのです。ヒトの遺伝子や代謝システムは飽食の時代に遭遇することがなかったためこの変化は想定外で、連日のように基礎代謝量以上のエネルギーが貯め込まれ、内蔵型脂肪や皮下型脂肪となって蓄積します。活動量の低下や便利な機械化によって全体的に基礎代謝量も減少しました。その結果、大人から子供にまで腹回りに脂肪の蓄積が進み、ダイエットがもてはやされるようになりました。

◆ドカ食いとチビチビ型
 同じように過剰なカロリー摂取であっても、一挙にたくさん食べるドカ食いと、食べる回数は多いけれど1回の量は少ないチビチビ型ではどちらの方が太りやすいでしょう?1000kcalの過剰食を一挙に食べると、体脂肪は100g増えます。一方、同量を10回に分けて食べると、脂肪の蓄積量は数的には変わりませんが、実際の生命現象では太りにくいのです。1回のカロリーを10分の1にすると体脂肪は2gで済みます。朝から何も食べていなければ、500kcalの甘いケーキを食べても基礎代謝の範囲内の熱量として燃やされ、エネルギー源となるので太りません。しかし、朝・昼・晩と食事をして食後に甘いケーキを食べれば、その余剰エネルギーは全て脂肪となり体重は増加します。この余剰カロリーを運動で無理やり燃やすには想像以上の運動量が必要となり、かなりの困難を伴います。例えば、500kcalを燃焼するためには水泳で1時間、マラソンで10km走る必要があります。それゆえ運動によるダイエット法はなかなか続かないのです。
 体脂肪は余分なエネルギー(ブドウ糖)を毛細血管から受け取り、脂肪細胞内に蓄えられた物です。通常、ブドウ糖は血液に溶け込んで各組織の細胞に取り込まれ、燃やされてエネルギーとなります。このエネルギーが細胞の代謝の原動力となり、体温の維持などに使われます。空腹感とはエネルギーの消費が進み、血糖値が低下した時に感じる感覚です。その時過剰に食事をすると、必要以上のブドウ糖が血液中に溶け込み、脂肪細胞が大量の脂肪を取り込みます。つまり、余分なカロリー摂取は体重増加につながるということです。

◆たまには甘いケーキも食べましょう
 人類は長い飢餓状態の中で進化してきたので、満腹中枢の規制が極めて弱いため余分に食べてしまい、太ってしまうのです。しかし、フルコースの料理のように、ゆっくり時間をかけて少しずつチビチビ食べることは賢い食べ方です。血液中のブドウ糖濃度が低下すると、脂肪細胞はそれ以上ブドウ糖を取り込みません。食物摂取量が少ない状態が続くと、一時的に過剰に摂取しても脂肪蓄積はせず体重は増えません。つまり、規則正しく、少ない量で、バランスの良い食事内容が続けば脂肪は蓄積せず、たまに甘いケーキなどの余剰カロリー摂取があっても脂肪量の増加にはなりません。日頃からダイエットで悩んでいる人はそれがストレスとなり、結果的に体重が増えてしまうことがあるようです。食欲の秋、たまにはストレス防止のために、甘いものを食べてみてはどうですか。

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VOL.219『グルテン不耐症・カゼイン不耐症』 [体]

◆日常の体調不良
 現在、成人の10%以上が日常的に偏頭痛に悩んでおり、増加傾向にあるといいます。偏頭痛の原因はストレスや肩こり・睡眠不足・ホルモンバランスの乱れなどとされ、季節の変わり目、気圧や気温の変化などに影響されると言われてきました。また、日常的なストレスや体調不良、イライラ状態が続く不安定さから疲労がたまり発症すると多くの人が思ってきました。ところが最近、食物アレルギーのグルテン不耐症が原因であることが分かったのです。

◆グルテン不耐症
 グルテン不耐症は世界ランキング1位になったプロテニスプレーヤー、ジョコビッチ選手によって広く世に知られることとなりました。彼の実家はピザ屋で、ピザやパン・パスタなどの小麦製品を食べて育ちました。グルテンとは小麦や大麦・ライ麦などに含まれるタンパク質のことです。タンパク質は消化されアミノ酸に分解されて腸管から吸収されます。ところがグルテンは一部が分解されずにタンパク質のまま吸収されます。健康な人はグルテンが小腸から吸収されずに便中に排泄されるのですが、グルテンが吸収され続ける人がいます。すると、グルテンが過敏に反応し、胃痛や胃痙攣、腹痛、便秘、下痢などの症状を起こします。これがグルテン不耐症です。
 欧米ではパンやパスタが主食であり、小麦は人類最古の農作物ですが、日本でも小麦を食べて体調を崩す人が増えています。昔の小麦に比べてグルテンの量が増えていることが原因と考えられており、グルテンが粘着性を増し、腸粘膜の免疫機能に傷害を与えています。
 アメリカでのグルテン不耐症は20人に1人の割合となっており、日本でも同様に増加していますが、自分の不調の原因について気づいていない人がほとんどです。日本では近年、食生活が変化し、若い人を中心に3食すべて小麦粉食品という人が増えています。つまり、グルテンを多く摂取することで腸に与える影響や負担が大きくなっているのです。
 小麦アレルギーは、小麦に含まれるタンパク質にカラダの防御機構が反応し、少量でも摂取すると直ちに症状が出ます。グルテン不耐症は小麦粉グルテンに対する反応で、消化が進んで発症するまでには時間がかかります。また、長い間食べていても何でもなかったのに、ある日突然体調が悪化しアレルギー症状を示すため遅延型アレルギー疾患とも呼ばれます。
 また、過敏性腸症候群の人が増えており、現在は日本人の5〜10人に1人の割合となっています。例えば、通勤ラッシュの車内で急に腹痛を起こしてトイレに行きたくなる人、これは各駅停車症候群とも呼ばれます。ストレスが原因と思われてきたこの病気は最近になってアレルギーが原因であることが分かりました。特に、パンやシリアルなどの小麦粉を使った食品を常食としている人に多いようです。

◆カゼイン不耐症
 牛乳やヨーグルトなどの乳製品を多く摂っている人に見られる病気がカゼイン不耐症と呼ばれるアレルギーです。毎日下痢に悩まされ、小麦粉や乳製品を中心にした食事が原因とは全く思わず、知らず知らすのうちにアレルギーになり、その症状はある日突然現れます。カゼイン不耐症は、牛乳を飲むとお腹がゴロゴロして下痢を起こす乳糖不耐症(ラクターゼ分解酵素の欠損)とは異なり、カゼインというタンパク質に対するアレルギー疾患です。カゼインは食品の栄養を高める栄養強化剤で、加工品の保水効果を高め、乳化剤としても添加されます。
 グルテンやカゼインはアミノ酸に分解されずにタンパク質のまま腸から吸収されるので抗体(IgE)が形成されてアレルギー疾患となります。このような食品によって、病院に行くほどではないが症状が繰り返し起こる、病院に行っても一向に症状が改善しないなど、思い当たる節はありませんか。小麦粉食品の摂り方を少し考えてみてはいかがでしょう。

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VOL.218『ミネラルの働きと歯の大切さ』 [体]

◆ヒトのカラダに必要なミネラル
 ヒトの生命活動に必要なミネラル成分は大きく2種類に分類されます。1つ目はナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、塩素、イオウで、これらは1日の摂取量が比較的多いミネラルです。2つ目は鉄、亜鉛、銅、クロム、ヨウ素、マンガン、セレン、モリブデン、コバルトで、これらは比較的少ないミネラルです。これらミネラル成分は、不足した場合に欠乏症を引き起こし、過剰摂取では過剰症を起こします。
 例えば、ナトリウム(食塩)は過剰摂取すると高血圧症を引き起こすので1日の摂取量は10g以下とされています。腎臓病でも食塩量は1日5〜6g以下に制限されます。食塩は過剰摂取すると血液中のナトリウムイオン濃度が上昇し、浸透圧が高まります。浸透圧とは水に物が溶けたときに生じる圧力のことです。血液の浸透圧の上昇は脳で常に測定され、高くなると喉が乾くので水を飲むように促します。浸透圧は生命維持の基本で、常に一定に維持されます。浸透圧が高まるとホルモンの作用で腎臓から水の排出量を減らし、血液量を増加させます。逆に利尿剤には尿の排出量を増やして血液量を減らすことで血圧を下げるという働きがあります。
 ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などは酸化されて陽イオンになりカラダ(細胞)が利用できるようになります。そのため、体内では必ずイオン化(水に溶けた状態)して存在します。カルシウムやマグネシウム、亜鉛は常に陽イオンの状態で存在します。これに鉄を加えたグループを必須ミネラル成分といいます。

◆鉄イオンの働き
 鉄イオンではヘムの鉄を除いた有機物をポルフィリンと呼び、体内で合成されます。ヘムは必須の栄養素ではありませんが、酸素はヘムのおかげで全身に運ばれます。血液が赤いのはヘム(鉄イオン)が赤いためです。空気中の鉄イオンは酸素で酸化されるので錆びます。しかし、体内では鉄イオンとして十二指腸から吸収され、タンパク質に吸着して酸化し、肝臓や骨髄に運ばれます。そこでフェリチン(タンパク質)となって貯蔵されます。肝臓に運ばれた血液中のヘムは酸素の力でビリルビンに変換され、肝臓から胆のうに貯蔵されます。
ビリルビンは胆汁中に入って、腸へ行き、腸内細菌によって分解され大便の色となります。
 赤血球の寿命は120日ほどで全身の赤血球の120分の1が毎日分解・造血されます。グロビン(タンパク質)はアミノ酸に分解されて再利用され、ヘムは分解されビリルビンが合成されます。これが正常な生命維持の活動です。肝臓が障害されビリルビンが胆汁によって排出されなくなると、目や皮膚に蓄積し黄色くなるのが黄疸です。また、鉄イオンは厳密にコントロールされていて、古くなった赤血球は膵臓でマクロファージによって分解され、ヘムとして鉄イオンは食事からの摂取量よりも多い1日あたり35mgが回収されます。したがって月経や臓器からの出血がなければ鉄欠乏にはなりにくいのです。マクロファージは鉄の排出タンパク質を通して鉄イオンを血液中に排出します。そして鉄イオンは骨髄に戻り再びヘモグロビンとなります。

◆歯を大切に
 生命維持に必須なミネラル成分は加齢とともに減少し、老化によって血管は硬くなり、動脈硬化が進みます。それでもカルシウム・マグネシウム・鉄・亜鉛などの摂取量が多ければ心血管疾患で死亡する割合は減ります。近年の疫学調査では、脳の記憶中枢が活性化されて、足が丈夫で、運動筋力が高い高齢者ほど長寿であることが分かりました。また、残っている歯の数が多いほど健康状態が良いという相関性が認められました。歯が丈夫で健康であれば運動能力に優れ、認知症がなく、記憶力も優れているというのです。血液中のカルシウム濃度は年齢に関係なく一定です。水に含まれるカルシウムとマグネシウムが1対1の割合で摂取できると歯も丈夫になります。歯が丈夫であれば肉や魚、野菜などをバランス良くしっかり噛んで食べることができます。ミネラル成分をしっかり摂っていれば歯も丈夫で、健康維持につながります。

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VOL.215『ガンの本態とは』 [体]

◆ガンという病気
 誰にでも、人生の最後には死が訪れます。戦乱の世なら戦死する人が多くいたでしょう。衛生環境の悪い国なら感染症で亡くなる人が多いでしょう。どのような原因で死亡するかはその国や時代の姿を映しています。日本では1980年代から死因の第1位はガンです。その結果、ガンは国民病と呼ばれるようになりました。
 古代にはガンによる死亡の記録はありません。その理由は多くのガンが体内深くの臓器で発生することから外から見ても分からなかったからです。また、ガンで死亡する前に伝染病などの感染症や脳卒中・心筋梗塞などで亡くなっていたこともあるでしょう。1760年から1839年の間のガンによる死亡を調査したところ、100人に1人もいませんでした。ガンが増加したのは150年前くらいからなのです。医薬品や衛生環境の改善によりガン以外の病気で死亡することが少なくなり、最後にガンになり死亡するのです。つまり、他の病気に対する治療法は進んでいるけれども、ガンの治療法は40年もの間、画期的な進展が見られていないということです。

◆ガン治療が進展しない理由
 ガンはガン化を起こすDNAを傷つける原因や機会が増えることで発症すると考えられています。DNAが傷つくことで細胞の制御システムが徐々に破壊され、無制限、無秩序な細胞増殖が始まります。ガン治療が進展しない理由は、感染症ならウイルスの種類を明確にすれば感染防御の対策ができますが、ガンはその原因が明らかでないためです。ガン細胞は栄養と酸素が供給されれば永遠に細胞分裂を続けるので「(悪性)新生物」とも呼ばれます。
 カラダを構成する細胞塊(組織・臓器)は1個の受精卵から始まります。この受精卵が分裂を繰り返すことでカラダが作られます。その作り方はすべての細胞の核にあるDNAの設計図が元となります。通常は、正常な細胞分裂にはさまざまな形で増加に歯止めがかかっています。細胞分裂は細胞増殖因子と呼ばれるタンパク質の信号を受けて行われます。細胞増殖を制御する仕組みが遺伝子の設計図に書き込まれているからです。
 また、正常な細胞は何か異常が発生したと察知すると遺伝子が働いて自爆し、異常な細胞が取り除かれる仕組みになっています。これをアポトーシスといいます。さらに、細胞には寿命があり、分裂してコピーされる度に染色体の末端にあるテロメアが少しずつ短くなります。テロメアが短くなると細胞は分裂できなくなります。これが細胞の死です。
 このように、正常細胞には分裂増殖を抑える仕組みがあります。また、カラダには免疫機能という防御能力があり、外部から侵入したウイルスや細菌を攻撃する仕組みがあります。通常、自分の細胞は攻撃しません。ところが、病原体からの攻撃を受けると正常細胞の分裂にミスコピーが生じ、蓄積してガン化します。生じたガン細胞は毎日5000個ほど発生しますが免疫担当細胞が攻撃排除してガンの発生を制御しています。ここで取り逃がしたガン細胞が増殖して成長するのです。

◆免疫力を上げよう
 1個のガン細胞が大きな塊になるまでには10年ほどかかります。若い頃には免疫力が強いので大きな塊にはなりにくいのですが、40歳を過ぎると免疫力が低下してくるので、ガン細胞は急速に増加する過程で変異を起こし、他の臓器に転移します。ガンは転移すると抗ガン剤を投与しても徐々に効果が薄れる薬剤耐性になります。
 ガンは生物の進化に似ています。親から子に遺伝子が受け継がれる際、遺伝子変異が起き環境に適合していきます。ガン細胞は細胞分裂するほどDNAが変異して高い増殖能力を持つ怪物になります。これが感染症よりガン治療が格段に難しい理由です。ガンにならないように免疫能力を維持することが大切です。

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VOL.210『病気を予防するカルシウムの働き』 [体]

◆骨や歯になるだけではない
 カルシウムといえば骨や歯の成分であることは知られていますが、他にも生命維持に直結した働きがあり欠かせない栄養素の一つです。
 カルシウムの大切な働きには心臓や脳を動かすための情報伝達機能がありますが、この機能が細胞分裂に関わることも知られています。精子と卵子が受精する時、精子の先端にはカルシウムが存在し、このカルシウムが信号となって受精した瞬間から細胞分裂が始まります。ですから、精子がなくても卵子にカルシウムを注入すればその信号が伝わって細胞分裂は始まります。これを処女生殖または単為生殖といいます。

◆カルシウム不足が招く疾患
 細胞分裂の盛んな組織、例えば、骨髄の造血細胞や腸管の上皮細胞などは放射線で障害されやすいのだそうです。この放射線からカラダを守るのが副甲状腺ホルモンです。副甲状腺ホルモンは細胞中のカルシウムを増加させ、細胞の分裂と増殖を促進させます。放射線によって障害された骨髄細胞や腸管上皮細胞が分裂増殖することで、放射線の被害から立ち直るという動物実験があります。ところが、副甲状腺ホルモンが細胞増殖を刺激する作用は両刃の剣で過剰に働くと、骨を溶かし出すスピードが増すのでカルシウム摂取不足では骨粗鬆症になります。遺伝性の病気で副甲状腺ホルモンが大量に分泌される原発性副甲状腺機能亢進症という疾患があります。この疾患ではガンの発生が増加します。副甲状腺ホルモンが長期にわたって過剰に分泌されるため細胞内のカルシウムが増加し続け、細胞分裂と細胞増殖が刺激され続けてガンが発症してしまうのです。
 食生活の中でカルシウム摂取が少なく、欠乏状態が続くと、腎臓の働きが低下するのでビタミンDの活性型ビタミンD3への変換が低下し、カルシウムの腸管からの吸収が低下します。同時に副甲状腺ホルモンの分泌が亢進するためガンが発症しやすくなります。
 また、カルシウム欠乏が続くと免疫機能も低下します。カルシウム摂取量が低下すると細胞内のカルシウム濃度が上がり、病原体を攻撃・排除する免疫担当細胞内にカルシウムが増えるため働きが低下してきます。すると免疫細胞間の情報伝達機能が混乱し、ガン細胞を攻撃するNK細胞の働きが低下するので、ガン細胞を見逃してしまい処理することができず、ガンが発生しやすくなるのです。つまり、カルシウム不足はガンの発症を助長することになります。カルシウム不足によって活性型ビタミンD3の働きが低下し、胃がんや大腸ガンになる人が増えます。カルシウムは食事中の脂肪酸と結合し、腸管内の老廃物の排泄を促進しますが、カルシウム摂取量が不足すると腸管内に大量の脂肪分が流れ、腸粘膜を刺激し続けるので大腸ガンの発生を助長します。
 カルシウム濃度は、細胞内液と細胞外液の間で1対10000の差があり、この割合が維持されていれば生理的に正常です。ところがこの割合が乱れ、細胞内のカルシウム濃度が増すと病気になります。細胞内にカルシウムが異常に入らないようにする薬がカルシウム拮抗薬です。カルシウムが細胞に入らないことで高血圧にも効果があります。また、抗がん剤としても有効です。

◆しっかり摂って健康を維持
 カルシウムを毎日しっかり摂り続ければ、細胞内にカルシウムが異常に入り込むことがないので、血液中のカルシウム濃度が一定に保たれ、健康寿命が伸びます。さらに、吸収されないカルシウムが腸管内の老廃物と結合して糞便と共に排泄されるため、大腸ガンの予防となります。
 しかし、カルシウムは加齢と共に吸収力が低下します。カルシウムやビタミンDを大量に摂っても吸収性に優れているカルシウムでなければカルシウム不足になってしまいます。吸収性に優れているカルシウムを十分に摂取するように心がけ、同時にマグネシウムを摂取すればカルシウムの吸収を助けるのでカルシウム不足を防ぐことができます。

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VOL.208『心房細動による疾患を防ぎましょう』 [体]

◆脳梗塞や心筋梗塞の原因になる
 近年、日本では高齢化が進み、加齢に伴う動脈硬化や高血圧症が同時に進行しています。これに関係するのが心房細動と呼ばれる心臓の不整脈です。心房細動によって心臓内に血栓が生じ、これが脳や心臓の血管を詰まらせ、梗塞を起こすことで脳梗塞や心筋梗塞が起こります。
 このような慢性疾患を予防するのに、心臓の冠動脈や脳動脈へのカテーテル医療法や血液をサラサラにして血栓をできにくくする抗凝固薬を用いる医療法があります。抗凝固薬は5年ほど前から使われ始め、予防法が画期的に進歩しました。抗凝固薬は服用を続けることが予防のために必要となりますが、予防薬の特徴としてその効果が明確でないため多くの人が途中でやめてしまいがちです。そうなると薬効が切れ、梗塞が起きる危険性が高まります。

◆高齢になると起こりやすい
 心臓は1分間に60〜70回という一定のリズムで収縮し、全身に血液を送り出しています。ところが、年齢を重ねると原因不明の不整脈が生じてきます。不整脈とは1分間に300〜400回の非常に速い頻度で脈拍が生じ、収縮力が弱まります。すると心臓では血液の流れる速度が非常に遅くなり、血液の流れが滞って、よどみが生じるので血の塊である血栓が心臓にできやすくなる、この状態が心房細動と呼ばれる不整脈です。
 60歳を過ぎる頃からこのような現象が急激に増加します。血栓は、たとえ血液がドロドロでなくても血液の流れが遅ければできてしまいます。さらに血管壁が傷ついていれば、何かの拍子に血管内に血栓が剥がれ落ち、それが血流によって脳に運ばれ、そこで血管を詰まらせれば、脳梗塞が起きてしまいます。心房細動が原因で発症する脳梗塞は心原性脳塞栓症と呼ばれ、多くの場合その後の社会復帰が困難なほど重篤化します。心房細動の50%以上は自覚症状が全くありません。つまり、ある時突然に脳梗塞を引き起こすのです。その時になって初めて心房細動に気づいて見つかったりします。
 心房細動を引き起こす最大の原因は加齢です。60歳を過ぎると心房細動に罹患する確率は急速に上昇し、70代以降では3%以上となります。同時に高血圧や肥満、糖尿病などのメタボの人でも多くなります。心臓は1日に10万回も拍動しています。脈拍の回数やリズムの変化に気をつけ、自分で気づくようにしましょう。

◆自分の体の変化に注意しよう
 抗凝固薬は血管内に血栓ができないように血液を固まりにくくする薬です。そのため何らかの理由で出血した場合にはその対策が必要となります。高齢になると、転倒したり、つまずいたり、何かにぶつけたりして出血することが増えます。この時、抗凝固薬を服用していると止血が難しくなりますし、処置が遅れることで致命的になることもあります。特に注意が必要なのは頭を打った時で、高齢者は皮膚の毛細血管自体がもろくなっており、同時に脳内の血管壁が薄く破れやすくなっているため脳出血を起こしやすいのです。
 日本は高齢化が進み、健康を維持することで健康寿命を延ばすことが求められています。そのため、毎日の食事内容・適度な運動習慣・睡眠時間の確保・脱水症状を起こさないための十分な水分補給など日常生活でのケアが極めて重要となります。また、高齢者のいる家庭では慢性疾患の病名や服用している薬の名前などの情報を共有することも大切です。
 心房細動によって、心臓の収縮が行われず血流が滞ることで、心房内に血栓が形成されます。その血栓が血流に乗って脳に運ばれれば脳梗塞を起こし、心臓に運ばれれば心筋梗塞を起こします。これが心原性塞栓症であり、死に直結する病気です。そうなる前に自分の体の変化を見落とさないように心がけ、酸素たっぷりの水分を十分に摂り、血液や血管を元気に保ちましょう。

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VOL.203『高血圧や動脈硬化の原因はカルシウム不足』 [体]

◆メタボは要注意
 今日、肥満は生活習慣病(メタボ)の代名詞とされ、特に内臓脂肪型肥満のリスクが高いとされています。内臓脂肪型肥満では血管の動脈硬化により高血圧・糖尿病・高脂血症を起こしやすくなります。
 脂肪細胞は主にエネルギーを蓄積する役割を持ちますが、アディポネクチンという生理活性物質も分泌します。アディポネクチンには動脈硬化を防ぐ善玉成分と、インスリンの効き方が悪化し動脈硬化を促進する悪玉成分があります。肥満でない状態ではアディポネクチンがバランス良く分泌します。ところが内臓脂肪が過剰に蓄積すると善玉が減少し、悪玉が増えて高血圧や動脈硬化、血糖値の上昇、インスリンの効き方の悪化が生じ、生活習慣病に進行します。つまり、メタボな体型のまま放置しておくと血管壁が狭くなり、動脈硬化が起こって心筋梗塞や脳卒中などの慢性疾患になりやすいということです。

◆高血圧と動脈硬化
 高血圧と動脈硬化は深い関係にあり、高血圧であれば動脈硬化になり、動脈硬化であれば高血圧になります。高血圧が続くと動脈の太い血管も障害を受けますが、毛細血管はさらに強く障害を受けます。傷ついた血管は脆くなり、血管内で出血が起きたり、詰まったりする箇所が増えます。
 高血圧や動脈硬化の原因の一つは塩分の摂り過ぎです。塩分の多い食品を摂取すると、血液中のナトリウム量が増え、これを体内の水分が薄めます。すると、血液中の水分が増えて血管が膨らみ、血管壁が圧迫されるため血圧が上昇するのです。
 血管は平滑筋という筋肉からなり、これが収縮すると血管は狭くなり、拡張すると広がります。平滑筋は自律神経のコントロール下にある筋肉なので、カラダの必要に応じて収縮したり、拡張したりしています。血管平滑筋が収縮して高血圧になるのはカルシウム不足が原因です。血液中のカルシウム濃度は常に一定に保たれています。そのためカルシウムが不足すると、副甲状腺ホルモンが分泌され、骨からカルシウムを溶かし出して補います。この時必要以上のカルシウムが溶け出してしまうのです。すると血管の細胞内に余分なカルシウムが取り込まれ、蓄積します。カルシウムの摂取が十分であればこのようなことは起こらず、高血圧にもならないのです。
 塩分摂取量が少なければ細胞の水分量が一定に保たれるので、細胞内外のカルシウムイオンのバランスは乱れません。ところが、塩分摂取量が増すと細胞内にナトリウムイオンが増え、ナトリウムイオンを細胞外に出してカリウムイオンと交換することができなくなるためナトリウムイオンとカルシウムイオンの交換が起き、カルシウムイオンが細胞内に取り込まれてしまうのです。その結果、細胞内にカルシウムイオンが増えるので高血圧になります。

◆カルシウムは命の炎
 このようなメカニズムからカルシウムの摂取不足や塩分の摂り過ぎが、高血圧や動脈硬化の原因と考えられています。この傾向は加齢とともに強くなっていきます。つまり、健康寿命を維持することは、毎日がカルシウム欠乏との戦いでもあり、人間の宿命とも言えます。これは人類の進化の過程に起因します。人類の先祖である生命体は海中で生存していて、カルシウムイオンを細胞内1に対して細胞外1万の比率にしたり、骨や歯に99%、血液中に1%の割合を常に一定に維持するバランスを整えました。これは奇跡のバランスと呼ばれ、こうすることで生命の恒常性が維持されているのです。これが『カルシウムは生命の炎』と言われる所以です。

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