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VOL.233『重症熱性血小板症候群(SFTS)』 [体]

◆ マダニが媒介する感染症
 近年、マダニが媒介するウイルス感染症(重症熱性血小板症候群:SFTS)が増加しており、イヌからヒトへの感染例も報告されました。SFTSは2011年に中国の研究者が発見したウイルスが原因で起こる感染症です。主にウイルスに感染したマダニに咬まれることで感染し、日本や中国・韓国で患者の報告があります。
 マダニは森林など屋外に生息する大型のダニで、SFTSウイルスを持っているものは5%ほどです。日本国内でヒトへの感染に関わっているマダニは、フタトゲチマダニとタカサゴキララマダニです。患者は2013年に40人、2014年に61人、2015年に60人、そして2017年が85人で内7人が亡くなりました。これまで国内では西日本を中心に315人の発症例があり、60人が死亡、致死率はなんと20%です。

◆ 国内での症例と感染経路
 2017年は日本紅斑熱などダニを媒介とする他の感染症も多く発症し、例年に比べてマダニが多い年でした。ウイルスに感染すると、6〜14日間の潜伏期間を経て、風邪に似た症状が出ます。重症化すると意識障害や言語障害のほか、下血を起こして死に至ることもあります。高齢になるほど重症化するリスクが高まります。
 マダニの多くは春から秋にかけて活動が活発になります。そのためSFTSの発症が多くなるのが5〜8月です。現在、SFTSに対する有効な治療薬やワクチンはなく、発症した場合には対症療法が中心です。国立感染症研究所や医療機関のチームが治療法の臨床研究を進めていますが、まだ有効な治療法は確立されていません。マダニに咬まれないようにするしかないので、野生動物が出没する場所やヤブなどマダニが多く生息しているような場所には入らないようにしましょう。止むを得ず入る場合にはできる限り肌を露出しないようにしましょう。ペットが感染している場合もあるので、ペットには素手で触れないようにし、咬まれないように注意しましょう。動物病院で感染の有無を確認するのも良いでしょう。
 SFTSウイルスはヒトだけでなく、シカやイノシシなどの動物にも感染します。厚生労働省によれば、2016年、西日本の女性が野良ネコに咬まれた後にSFTSを発症し、死亡したとのことです。ネコからヒトへの初めての感染です。同様にSFTSを発症した飼いイヌを介護していた男性がSFTSに感染していたことが報告され、その後回復しましたが、こちらもイヌからヒトへの初めての感染例となりました。ウイルスは唾液や血液、糞便などに含まれるので、SFTSを発症している動物に触れた手で自分の目の粘膜や傷口などに触れると、そこから感染する可能性があります。通常、健康な状態のペットからは感染する可能性は低いとみられています。

◆ ウイルス感染と予防法
 動物が感染源となる感染症を人畜共通感染症と呼びます。WHOは自然の条件下で伝搬して起こる感染症と定義しており、200種類以上の寄生虫・細菌・ウイルスがあります。特に問題なのがウイルス感染症です。ウイルスは地球上における最小の生物で、肉眼では見ることができません。独立して生きることができないので、生きている細胞に感染して生きながら常に繁殖の機会を伺っています。他者の細菌に感染することでしか生きられないウイルスが絶えず新たな感染先を探すのは当然のことです。
 ウイルスがヒトに感染する方法には直接感染と間接感染があります。直接感染では、血液や唾液・精液などの液体を介して移動します。間接感染は、動物や昆虫・寄生虫などを介して感染します。ウイルスの侵入口は、口や鼻などの呼吸器・肛門や尿道などの泌尿器・生殖器など、外部に接する部位です。人体に侵入したウイルスは標的にした臓器に入り増殖します。その結果、カラダは病気の症状を示します。
 SFTSのウイルス感染症はマダニを介して間接感染します。マダニには殺虫剤も効きません。感染症予防には手洗いの励行が基本です。そして自身の免疫力を上げることも大切です。ストレスをためずに規則正しい生活を心がけましょう。

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VOL.232『良いカルシウムを毎日たくさん摂ろう』 [体]

◆ カラダに最も大切な栄養素
 ヒトの生命はカルシウムによって始まり、カルシムの作用が中止すれば終わります。生命誕生の瞬間から生きている限り一時も欠かせない、カラダに最も大切な栄養素であるにもかかわらず、そのことを知らないヒトがほとんどです。
 カルシウム摂取が不足し、体内で足りなくなると、血液中のカルシウム濃度に異常が生じます。血液中のカルシウムは、筋肉の収縮や刺激の伝達など重要な機能を調節しているため常に一定の濃度でなければ、生命を維持することができなくなります。そこで脳は直ちに警告を発し副甲状腺に指令を出します。副甲状腺はその指令を受けると副甲状腺ホルモン(PTH)を血液中に放出して、骨に蓄積していたカルシウムを溶かし出し血液中のカルシウム濃度を元に戻します。このような働きにより、私たちの心臓は止まることなく動かされ、生き続けることができるのです。

◆ 細胞にカルシウムが溢れると…
 カルシウムが不足しているのにそのまま放置していると、カラダは副甲状腺ホルモンの放出ばかりに頼るようになってしまいます。すると、ホルモンの分泌が続いて骨は溶かされ続け、カルシウムは血液中や組織中に大量に放出されます。大量に放出され過ぎて余ってしまったカルシウムは、腎臓の尿細管・肝臓の細胞・血管内壁細胞・白血球・リンパ球など体内のあらゆる細胞中に蓄積して正常な生命活動を妨げます。
 カルシウムが血管壁に沈着すると動脈硬化となって血管内壁が細く狭くなり、血液が十分に流れなくなります。すると血管に栄養素や酸素を十分に供給できなくなるため、細胞にエネルギーを供給できなくなってしまします。細胞には余分に入ってくるカルシウムを排出するカルシウムポンプという機能がありますが、このポンプが働くためには大きなエネルギーが必要となります。細胞がエネルギー不足になればこのカルシウムポンプも働けなくなり、細胞内の余剰のカルシウムを排出できなくなって細胞は死滅し、細胞の周囲にカルシウムが沈着します。太古の昔、カルシウムによって誕生した生命体ですが、細胞の中にカルシウムが大量に溢れると細胞は死んでしまいます。そこで生命体は、カルシウム濃度を調節する仕組みを作って生き延びました。もともとカルシウムが豊富な海で誕生した生命体は水に溶けているカルシウムを体内にたやすく取り込むことができましたが、陸に上がり、動物からヒトへと進化した私たちがカルシウム不足になるのは当然で、それを補う仕組みが副甲状腺なのです。
 母体内の胎児に副甲状腺ホルモンはありません。すべてのカルシウムが母体から供給されるからです。生まれた後に副甲状腺ホルモンが作られ、余ったカルシウムは骨に蓄積し、カラダを支えます。新生児の頃は母親からの乳汁中のカルシウムが頼りです。ヒトの一生のうちでカルシウム量が最大となるのは18歳頃で、同時に骨量も最大となります。そして35歳以降は徐々に骨量が減少し、この減り方が急激だと骨粗鬆症になり、骨折が生じます。

◆ 不足させないために
 女性ホルモンであるエストロゲンには骨を溶かす物質の分泌を抑え、腎臓の働きで活性型ビタミンD3を放出し、腸管からのカルシウム吸収を盛んにする作用があります。またエストロゲンは腎臓に作用して尿によるカルシウムの排泄を抑えます。ところが、閉経後にはエストロゲン分泌が低下するため、腸からのカルシウム吸収も減少します。
 かつては人生50年と言われ、女性は閉経が人生の終わりでした。老化ではカラダの臓器や組織が衰えて機能が低下します。加齢とともにカルシウムの吸収性も急激に低下するためカルシウム不足となりやすくなります。カルシウム不足を防ぐために吸収性に優れたカルシウムを十分に摂取して大切なカルシウムの吸収効率を上げ、老化を防いで健康を保ちましょう。

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VOL.230『生命活動を活発にするタンパク質』 [体]

◆タンパク質とは
 タンパク質はカラダの主成分で体重の20%を占め、水の60〜70%に次いで多く含まれます。タンパク質は皮膚や筋肉に存在するコラーゲンやアクチンのようにカラダを構成するものや血糖値の調節などに関与するインスリンとして働くもの、体内の化学反応を助ける酵素として働くものがあります。また、鉄を運ぶ血液中のヘモグロビンのように物質の輸送に関わるものや、抗体のようにカラダの防御機構に関与するものなど、さまざまな特徴や役割を持つのがタンパク質です。
 体内に異常なタンパク質が蓄積したり、タンパク質の機能が異常になると病気の原因となり、老化が進みます。そこで、タンパク質がどのように酸化障害されるのか検証すると、その大きな要因は活性酸素であることが分かります。呼吸で吸い込んだ酸素のうちの2〜3%が反応性の高い活性酸素に変化します。細胞内のミトコンドリアの主な機能はエネルギー(ATP)を作ることで、そのATPが生産されるときに活性酸素が生じます。新陳代謝や虚血時にも活性酸素は発生します。また、ウイルスに感染した際の生体防御としても活性酸素が生産されます。紫外線や放射線照射、精神的ストレスの状態でも活性酸素が発生します。

◆活性酸素の影響
 通常、発生した活性酸素は体内のカタラーゼやスーパーオキシド・ジムスターゼ(SOD)の酵素によって消去されますが、活性酸素の量が異常に多くなると体内では消去しきれなくなります。すると、過剰な活性酸素は周囲の細胞内に入り込みDNAを損傷し、アミノ酸配列を切断し、タンパク質を酸化し、細胞機能を低下させる原因となります。その結果が血管の動脈硬化による脳卒中や心疾患、パーキンソン病、アルツハイマー病などの神経系疾患、糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満などの生活習慣病、ガンや老化を引き起こします。
 タンパク質のシステインやメチオニンなどイオウを含むアミノ酸は最も酸化を受けやすくなります。カモジュリンは、脳の機能を維持する役割を果たすカルシウムと結合するタンパク質ですが、加齢に伴って酸化されやすいので脳機能低下の原因となります。
 また、タンパク質のリシン、アルギニン、プロリン、トレオニンなどのアミノ酸は活性酸素の影響を受けやすく、酸化されると老化の原因として、皮膚ではシワ・シミ・たるみ・くすみとなり、内臓や脳では機能低下を引き起こします。さらに、加齢とともに活性酸素の酸化障害を受けるタンパク質は増加し、酸化を修復する酵素量の低下や、タンパク質の代謝機能の低下などによって酸化ストレスを受けた異常なタンパク質の蓄積が亢進します。
 過剰な活性酸素を消去する効果があるのは野菜や果物に含まれる抗酸化物質として知られているビタミン類、カロテン、ポリフェノールに加えてカルシウムやマグネシウム、ケイ素、鉄などのミネラル成分です。

◆分岐鎖アミノ酸を摂ろう
 健康を維持して病気を予防するためには病気の発症や進行に関わるタンパク質が発現しないようにします。つまり、未病(病気ではないが放置すると病気になることが予想される状態)の予防や不健康状態の改善が結果的に病気の予防に役立ちます。
 タンパク質を構成する20種類のアミノ酸のうち、9種類のアミノ酸は体内で合成できない必須アミノ酸で、食物やサプリメントから摂取する必要があります。特に分岐鎖アミノ酸(バリン・ロイシン・イソロイシン)が不足すると元気が出ません。分岐鎖アミノ酸は筋肉量を増やし、カルシウムの吸収も助けるので骨形成に効果があり、肥満の予防や運動不足の解消につながるので毎日の摂取を習慣づけたいものです。
 タンパク質の体内での働きを知ることでタンパク質がいかにして病気を予防しているかを知ることができます。体内では水の次に多いのがタンパク質です。そのタンパク質を構成する必須アミノ酸、特に分岐鎖アミノ酸を積極的に摂取しましょう。

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VOL.229『骨粗鬆症を予防して健康寿命を延ばす』 [体]

◆高齢化とQOLの低下
 日本は高齢化が加速しており、骨量が減少して骨がスカスカで脆くなる骨粗鬆症が自覚症状がないまま進行し、気づいたら骨折をしているという人が増えています。骨折は要介護や寝たきりの原因となり、QOL(生活の質)低下につながります。
 骨は常に破骨細胞が骨を壊し、骨芽細胞が新しい骨を形成するという新陳代謝を繰り返しています。これを骨の代謝回転と呼びます。成長期では骨芽細胞が破骨細胞の3倍以上の割合で骨を形成します。逆に閉経後の女性では破骨細胞が3倍以上の割合で骨を吸収し、壊します。骨の形成と吸収のバランス(カップリングという)を調整しているのがエストロゲンという女性ホルモンです。閉経によってエストロゲン分泌が減少すると、骨が吸収される速度が速まり、骨の形成が追いつかないため骨が脆くなります。

◆骨粗鬆症の怖さ
 骨粗鬆症では骨量と骨密度が減少し、骨に鬆(す)が入ってスカスカ状態になります。するとほんのわずかな衝撃でも骨折を起こします。特に、高齢者が太ももの付け根の大腿骨近位部を骨折すると、寝たきりや要介護の原因となります。骨粗鬆症は女性に多く、更年期以降に急激に増えます。
 骨粗鬆症の危険因子は加齢と閉経によるホルモン低下の他に、ダイエットによる栄養不足や飲酒、喫煙、運動不足などの生活習慣や、長期のステロイド剤使用による慢性疾患があります。女性では60代で5人に1人、70代で3人に1人、75歳以上では2人に1人の割合で骨粗鬆症となります。男性でも70代で5人に1人の割合となり、骨粗鬆症患者は全国で1300万人以上と推計され増加傾向にあります。ほとんど自覚症状がなく、背骨が体の重さで潰れる圧迫骨折となり、身長が2〜3cm低くなります。病院で問診を受け、骨密度検査や骨吸収と骨形成のバランスを測る骨代謝マーカー検査、胸椎や腰椎の骨折や変形、X線検査によって骨粗鬆症かどうかの診断ができます。
 通常、骨量は20〜30歳ごろをピークに徐々に減少していきます。20〜40歳までの平均骨量が若年成人の平均値と定められており、平均骨量の20〜30%減少までは正常域とされます。骨量の減少が30%以上になると骨粗鬆症と診断されます。20〜30代に激しい運動していた女性はエストロゲン分泌が急激に低下するため、骨粗鬆症による疲労骨折を起こしやすいので注意が必要です。
 治療は、食事の栄養バランス・適度な運動の習慣・薬物治療が基本となります。服薬回数は程度によって1日1回から月1回、6ヶ月から1年に1回などさまざまです。
 厚生労働省によれば2016年の日本人の平均寿命は男性81歳、女性が87歳です。一方、内閣府の高齢社会白書では自立して生活できる健康寿命は男性が71歳、女性は74歳で、平均寿命と健康寿命の間には10歳前後の差があります。その大きな要因が骨粗鬆症による骨折です。要介護の原因の1位は認知症、2位が脳血管障害、3位が高齢による骨折・転倒でその背景には骨粗鬆症があります。

◆予防と治療
 骨粗鬆症の予防や治療の基本は栄養素です。つまり、骨の主成分となるカルシウム・マグネシウム・ケイ素などのミネラル成分や、骨の代謝回転に必要なタンパク質、ビタミンDや納豆に多く含まれるビタミンKなどを積極的に摂取することです。さらに、散歩程度の適度な運動習慣や日光浴も効果的です。日光浴をすることでビタミンDが形成されます。高齢者は骨に体重の負荷がかかるので激しい運動で筋肉を鍛えることは避けましょう。動脈硬化が進んで血管が切れ、出血する確率も増します。むしろ、転倒防止の方が重要です。
 最近、WHO(世界保健機関)が開発した骨折リスク評価法では、40歳以上で年齢や性別、骨折の質問に対してインターネットで答えると、10年以内の骨折の確率が算出されます。このような方法を活用して自分の骨の状態を確認してはどうですか?

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VOL.228『細胞間の情報交換が生命維持に関与する』 [体]

◆コミュニケーションの取り方
 ヒトは古代から情報交換を行って生き延びてきました。文字のないインカ帝国では紐にコヨリをつけて人口を把握していたそうです。指を折って数える代わりに紐に結び目を作り、区切りの良い数になると、新しく色の違う紐を結ぶことで間違いを減らしていました。この方法なら言葉や文字が無くてもみんなが数を共有できました。他の民族と突然会話する羽目になった時は、身振りや手振り、擬音や目つきで分かり合います。今日、世界の人口は70億人を超え、言語は6000種類にも及びます。
 機能が異なる200種類以上の体内の細胞は、内外からの刺激に対してバラバラに反応するのではなく、規則正しく一貫して働いています。細胞は横の繋がりばかりでなく、時間と空間との縦の流れにおいても統一した自己を維持します。つまり、自分以外の物質(病原体や異物など)が体内に入ってくると、全てを非自己と判断して免疫機能(白血球)が攻撃・排除することで病気にならないようにしています。

◆体内の情報伝達
 自分は自分ですが、身体的には昨日の自分と今日の自分とは違っています。つまり自分という存在は、変化しつつも心やカラダは統一性を保っているのです。その統一性は細胞同士が互いに情報交換しているからこそ成り立ちます。カラダの内部では情報伝達物質であるタンパク質が言葉の代わりに行き交いカラダをうまく調節しています。目も耳もない細胞がどのようにして別の細胞に情報を伝えるのか、そこには言葉を使いこなすシステムがあります。ある細胞がタンパク質をあるタイミングで分泌して近くの細胞に働きかける、また、あるタンパク質が血流を介して遠くの細胞にまで到達し働くなど。さらに栄養素や酸素、酵素、化学伝達物質などの情報が神経繊維に伝わり、電気信号となって別の神経細胞に届く、このような情報伝達が言葉となって生命維持の複雑な作業工程や高度な分業作業を遺伝子の設計図によってスムーズに進めていきます。そしてこれらは免疫機能の防御システムや神経伝達物質のネットワークシステムとなり、生命が統一された状態で維持されます。
 脳内には1000億個の神経細胞が密集し、それが1本の神経繊維となり、他の神経繊維と1000〜10000箇所のシナプスで結合しています。この膨大な数のシナプスの神経伝達活動によって情報伝達が行われるので、日々豊かな人生を送ることができます。神経ネットワークを形成することで情緒という心が他人を共感させることができ、心が自分の遺伝子を動かして免疫機能に影響を与え、カラダの防御システムが働きます。意識を強くする感覚は、直感・見る・聞く・嗅ぐ・味わう・想うで、気づかぬうちに内部から発せられます。これらも言葉ではないカラダの情報システムです。
 ヒトは仕事をして普通に暮らします。誰かを恋しく想ったり、家族を愛したり、些細な出来事に頭を悩ませ、突然の不運を呪い、病気や感染症を恐れ、健康維持を願います。日常生活の中で、寝ている時も、目が覚めている時も、意識がある時もない時も、カラダの中で細胞同士が言葉(情報交換)を交わすことで、カラダの仕組みは維持され、生命が維持されているのです。何事もなかったように毎日を過ごし、そのように時は流れていきます。

◆情報交換が維持された証
 カラダの細胞は内部の遺伝子プログラムに従って順序よく働いています。これは人類の進化の過程において遺伝子に組み込まれ、今日まで生殖行動によって優秀な遺伝子を継承し、存在してきた結果です。途中で突然変異が起こり、異常な遺伝子になっていれば死に絶えてしまっていたはずです。今ある存在は細胞と細胞との間の規則正しい情報交換によって遺伝子が維持された証です。その大きな役割を担うのがカルシウムやカリウムなどのミネラル成分です。これらミネラルがなければ情報は伝わりません。そして、細胞が老化し、壊死したた時、ヒトは死に至ります。細胞の情報交換は死ぬまでずっと続くのです。

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VOL.226『肥満対策となる新たな分化誘導因子の発見』 [体]

◆肥満対策の朗報
 脳梗塞や心筋梗塞につながるメタボリックシンドローム:内臓脂肪症候群、通称メタボや肥満症の予防または抑制には、食事の減量や運動などで生活習慣を改善することが基本とされていますが、それを長期間継続することは極めて難しいことです。
 2017年9月、東京大学の研究グループはエネルギーを消費してくれる細胞を薬で増量し、活性化するという新たな治療法を発見し、報告しました。かなりの朗報です。

◆エネルギー消費促進を誘導する因子
 メタボや肥満の対策にはエネルギー摂取量を抑制することと、摂取したエネルギーの消費を促進するという2つの方法があります。そこで、治療を行う上で、脂肪治療法を使って減量させる手術などを行うことで摂取量の抑制を行ってきました。ところが、食欲は記憶として定着しているため、脳内の食欲中枢に作用して食欲を抑制する肥満治療薬では、うつ病や自殺のリスクが生じるなどの副作用があり、問題となっていました。また、欧米で多く実施されている小腸の一部を切除し付け替えることで消化吸収を抑える減量手術は効果が確認されていますが、カラダへの負担が大きいのが問題でした。それらを解決すべく、東京大学・糖尿病代謝内科では、脂肪を蓄積させずに燃やす方向に働く褐色脂肪細胞を増殖させ、この細胞を活性化させることでエネルギー消費を促進し、減量する方法の研究を続けてきました。
 脂肪細胞には、エネルギーの貯蔵庫として知られる白色脂肪細胞の他に、寒冷下で体温を保つために熱を作り出しエネルギーを活発に消費する褐色脂肪細胞があります。褐色脂肪細胞は、ヒトでは新生児の頃にしか存在しないと思われていました。ところが最近になって、成人にも首や肩甲骨・鎖骨・腎臓の周囲に存在することが確認されたのです。この褐色脂肪細胞には、筋肉の元となる筋芽細胞が分化し、発育してできるという特殊性があるので、筋芽細胞を利用しようと考えましたが、筋芽細胞は通常、筋細胞に直ちに分化してしまうため褐色脂肪細胞にはなりません。そこで褐色脂肪細胞に分化するように誘導する因子の探索が世界中で研究されるようになりました。研究が進む中、東京大学のグループはマウスのDNA解析からNFIAと呼ばれる新たな誘導遺伝子を発見しました。NFIA遺伝子が欠損したマウスは褐色脂肪細胞の遺伝子プログラムに大きな障害が起きることを突き止めたのです。過去にはPRDM16と呼ばれる誘導遺伝子が見つかっていましたが、PRDM16遺伝子だけでは十分に褐色脂肪細胞を誘導することができませんでした。そこで世界中で褐色脂肪細胞を誘導するための2つ目の遺伝因子の発見が待たれていました。
 脂肪細胞といえば、通常白色脂肪細胞のことを指します。しかし白色脂肪細胞の中に極めて少量で低い能力ではありますが、熱を作り出し、エネルギー消費を行う性質を持つベージュ細胞と呼ばれるものがあることが分かりました。そこで、脂肪細胞になる前の細胞にNFIA因子を導入することで白色脂肪細胞でも褐色遺伝子のプログラムを活性化できることを突き止めたのです。つまり、NFIA因子を導入することでベージュ細胞を作ることを可能にしたのです。

◆肥満対策の切り札
 NFIA因子の発見の報告は、イギリスの科学誌『ネイチャー・セル・バイオロジー』の8月15日付オンライン版に掲載され、国際的にも反響を呼んでいます。10年以内にはNFIA因子(遺伝子)の量を増量し、褐色脂肪細胞を活性化させる飲み薬を開発したいと考えられています。
 NFIA遺伝子には筋肉を増やす作用がないので、体力を増進し、維持するためには運動することが重要であることには変わりありません。肥満防止には運動は不可欠です。しかし、エネルギー消費細胞であるNFIA遺伝子は、肥満対策の切り札となる可能性を秘めています。薬の開発が期待される話題です。

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VOL.224『肥満防止の行動がストレスに』 [体]

◆飢餓状態が長かった人類
 ヒトの祖先が地球上に出現してから700万年が経過したと言われています。その間のほとんどをヒトは飢餓状態で過ごしてきました。ヒトには生きていく上で必要なエネルギー量があります。カラダを動かし、体温を維持して、基本的な代謝を円滑にするための熱量を基礎代謝と呼び、成人では1日あたり2000Kcalです。この範囲内であれば摂取した食物は燃やされ、エネルギーとして消費されるので、体重は増えません。人類の歴史の中で長く続いた飢餓状態を生き延びることができたのは、細胞内の遺伝子にこのシステムが組み込まれたからなのです。そこで、大量の食料が得られた際にはそれをできるだけ取り込み貯蔵するように、カラダの仕組みが整えられました。
 しかし、この数十年の間に人類を取り巻く食料事情は一変し、日本を含め経済発展を遂げた国々では飽食の時代となりました。ところがヒトの遺伝子や基礎代謝量のメカニズムは飢餓当時のままで、これを組み替えるには数十年では短か過ぎるのです。ヒトの遺伝子や代謝システムは飽食の時代に遭遇することがなかったためこの変化は想定外で、連日のように基礎代謝量以上のエネルギーが貯め込まれ、内蔵型脂肪や皮下型脂肪となって蓄積します。活動量の低下や便利な機械化によって全体的に基礎代謝量も減少しました。その結果、大人から子供にまで腹回りに脂肪の蓄積が進み、ダイエットがもてはやされるようになりました。

◆ドカ食いとチビチビ型
 同じように過剰なカロリー摂取であっても、一挙にたくさん食べるドカ食いと、食べる回数は多いけれど1回の量は少ないチビチビ型ではどちらの方が太りやすいでしょう?1000kcalの過剰食を一挙に食べると、体脂肪は100g増えます。一方、同量を10回に分けて食べると、脂肪の蓄積量は数的には変わりませんが、実際の生命現象では太りにくいのです。1回のカロリーを10分の1にすると体脂肪は2gで済みます。朝から何も食べていなければ、500kcalの甘いケーキを食べても基礎代謝の範囲内の熱量として燃やされ、エネルギー源となるので太りません。しかし、朝・昼・晩と食事をして食後に甘いケーキを食べれば、その余剰エネルギーは全て脂肪となり体重は増加します。この余剰カロリーを運動で無理やり燃やすには想像以上の運動量が必要となり、かなりの困難を伴います。例えば、500kcalを燃焼するためには水泳で1時間、マラソンで10km走る必要があります。それゆえ運動によるダイエット法はなかなか続かないのです。
 体脂肪は余分なエネルギー(ブドウ糖)を毛細血管から受け取り、脂肪細胞内に蓄えられた物です。通常、ブドウ糖は血液に溶け込んで各組織の細胞に取り込まれ、燃やされてエネルギーとなります。このエネルギーが細胞の代謝の原動力となり、体温の維持などに使われます。空腹感とはエネルギーの消費が進み、血糖値が低下した時に感じる感覚です。その時過剰に食事をすると、必要以上のブドウ糖が血液中に溶け込み、脂肪細胞が大量の脂肪を取り込みます。つまり、余分なカロリー摂取は体重増加につながるということです。

◆たまには甘いケーキも食べましょう
 人類は長い飢餓状態の中で進化してきたので、満腹中枢の規制が極めて弱いため余分に食べてしまい、太ってしまうのです。しかし、フルコースの料理のように、ゆっくり時間をかけて少しずつチビチビ食べることは賢い食べ方です。血液中のブドウ糖濃度が低下すると、脂肪細胞はそれ以上ブドウ糖を取り込みません。食物摂取量が少ない状態が続くと、一時的に過剰に摂取しても脂肪蓄積はせず体重は増えません。つまり、規則正しく、少ない量で、バランスの良い食事内容が続けば脂肪は蓄積せず、たまに甘いケーキなどの余剰カロリー摂取があっても脂肪量の増加にはなりません。日頃からダイエットで悩んでいる人はそれがストレスとなり、結果的に体重が増えてしまうことがあるようです。食欲の秋、たまにはストレス防止のために、甘いものを食べてみてはどうですか。

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VOL.219『グルテン不耐症・カゼイン不耐症』 [体]

◆日常の体調不良
 現在、成人の10%以上が日常的に偏頭痛に悩んでおり、増加傾向にあるといいます。偏頭痛の原因はストレスや肩こり・睡眠不足・ホルモンバランスの乱れなどとされ、季節の変わり目、気圧や気温の変化などに影響されると言われてきました。また、日常的なストレスや体調不良、イライラ状態が続く不安定さから疲労がたまり発症すると多くの人が思ってきました。ところが最近、食物アレルギーのグルテン不耐症が原因であることが分かったのです。

◆グルテン不耐症
 グルテン不耐症は世界ランキング1位になったプロテニスプレーヤー、ジョコビッチ選手によって広く世に知られることとなりました。彼の実家はピザ屋で、ピザやパン・パスタなどの小麦製品を食べて育ちました。グルテンとは小麦や大麦・ライ麦などに含まれるタンパク質のことです。タンパク質は消化されアミノ酸に分解されて腸管から吸収されます。ところがグルテンは一部が分解されずにタンパク質のまま吸収されます。健康な人はグルテンが小腸から吸収されずに便中に排泄されるのですが、グルテンが吸収され続ける人がいます。すると、グルテンが過敏に反応し、胃痛や胃痙攣、腹痛、便秘、下痢などの症状を起こします。これがグルテン不耐症です。
 欧米ではパンやパスタが主食であり、小麦は人類最古の農作物ですが、日本でも小麦を食べて体調を崩す人が増えています。昔の小麦に比べてグルテンの量が増えていることが原因と考えられており、グルテンが粘着性を増し、腸粘膜の免疫機能に傷害を与えています。
 アメリカでのグルテン不耐症は20人に1人の割合となっており、日本でも同様に増加していますが、自分の不調の原因について気づいていない人がほとんどです。日本では近年、食生活が変化し、若い人を中心に3食すべて小麦粉食品という人が増えています。つまり、グルテンを多く摂取することで腸に与える影響や負担が大きくなっているのです。
 小麦アレルギーは、小麦に含まれるタンパク質にカラダの防御機構が反応し、少量でも摂取すると直ちに症状が出ます。グルテン不耐症は小麦粉グルテンに対する反応で、消化が進んで発症するまでには時間がかかります。また、長い間食べていても何でもなかったのに、ある日突然体調が悪化しアレルギー症状を示すため遅延型アレルギー疾患とも呼ばれます。
 また、過敏性腸症候群の人が増えており、現在は日本人の5〜10人に1人の割合となっています。例えば、通勤ラッシュの車内で急に腹痛を起こしてトイレに行きたくなる人、これは各駅停車症候群とも呼ばれます。ストレスが原因と思われてきたこの病気は最近になってアレルギーが原因であることが分かりました。特に、パンやシリアルなどの小麦粉を使った食品を常食としている人に多いようです。

◆カゼイン不耐症
 牛乳やヨーグルトなどの乳製品を多く摂っている人に見られる病気がカゼイン不耐症と呼ばれるアレルギーです。毎日下痢に悩まされ、小麦粉や乳製品を中心にした食事が原因とは全く思わず、知らず知らすのうちにアレルギーになり、その症状はある日突然現れます。カゼイン不耐症は、牛乳を飲むとお腹がゴロゴロして下痢を起こす乳糖不耐症(ラクターゼ分解酵素の欠損)とは異なり、カゼインというタンパク質に対するアレルギー疾患です。カゼインは食品の栄養を高める栄養強化剤で、加工品の保水効果を高め、乳化剤としても添加されます。
 グルテンやカゼインはアミノ酸に分解されずにタンパク質のまま腸から吸収されるので抗体(IgE)が形成されてアレルギー疾患となります。このような食品によって、病院に行くほどではないが症状が繰り返し起こる、病院に行っても一向に症状が改善しないなど、思い当たる節はありませんか。小麦粉食品の摂り方を少し考えてみてはいかがでしょう。

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VOL.218『ミネラルの働きと歯の大切さ』 [体]

◆ヒトのカラダに必要なミネラル
 ヒトの生命活動に必要なミネラル成分は大きく2種類に分類されます。1つ目はナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、塩素、イオウで、これらは1日の摂取量が比較的多いミネラルです。2つ目は鉄、亜鉛、銅、クロム、ヨウ素、マンガン、セレン、モリブデン、コバルトで、これらは比較的少ないミネラルです。これらミネラル成分は、不足した場合に欠乏症を引き起こし、過剰摂取では過剰症を起こします。
 例えば、ナトリウム(食塩)は過剰摂取すると高血圧症を引き起こすので1日の摂取量は10g以下とされています。腎臓病でも食塩量は1日5〜6g以下に制限されます。食塩は過剰摂取すると血液中のナトリウムイオン濃度が上昇し、浸透圧が高まります。浸透圧とは水に物が溶けたときに生じる圧力のことです。血液の浸透圧の上昇は脳で常に測定され、高くなると喉が乾くので水を飲むように促します。浸透圧は生命維持の基本で、常に一定に維持されます。浸透圧が高まるとホルモンの作用で腎臓から水の排出量を減らし、血液量を増加させます。逆に利尿剤には尿の排出量を増やして血液量を減らすことで血圧を下げるという働きがあります。
 ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などは酸化されて陽イオンになりカラダ(細胞)が利用できるようになります。そのため、体内では必ずイオン化(水に溶けた状態)して存在します。カルシウムやマグネシウム、亜鉛は常に陽イオンの状態で存在します。これに鉄を加えたグループを必須ミネラル成分といいます。

◆鉄イオンの働き
 鉄イオンではヘムの鉄を除いた有機物をポルフィリンと呼び、体内で合成されます。ヘムは必須の栄養素ではありませんが、酸素はヘムのおかげで全身に運ばれます。血液が赤いのはヘム(鉄イオン)が赤いためです。空気中の鉄イオンは酸素で酸化されるので錆びます。しかし、体内では鉄イオンとして十二指腸から吸収され、タンパク質に吸着して酸化し、肝臓や骨髄に運ばれます。そこでフェリチン(タンパク質)となって貯蔵されます。肝臓に運ばれた血液中のヘムは酸素の力でビリルビンに変換され、肝臓から胆のうに貯蔵されます。
ビリルビンは胆汁中に入って、腸へ行き、腸内細菌によって分解され大便の色となります。
 赤血球の寿命は120日ほどで全身の赤血球の120分の1が毎日分解・造血されます。グロビン(タンパク質)はアミノ酸に分解されて再利用され、ヘムは分解されビリルビンが合成されます。これが正常な生命維持の活動です。肝臓が障害されビリルビンが胆汁によって排出されなくなると、目や皮膚に蓄積し黄色くなるのが黄疸です。また、鉄イオンは厳密にコントロールされていて、古くなった赤血球は膵臓でマクロファージによって分解され、ヘムとして鉄イオンは食事からの摂取量よりも多い1日あたり35mgが回収されます。したがって月経や臓器からの出血がなければ鉄欠乏にはなりにくいのです。マクロファージは鉄の排出タンパク質を通して鉄イオンを血液中に排出します。そして鉄イオンは骨髄に戻り再びヘモグロビンとなります。

◆歯を大切に
 生命維持に必須なミネラル成分は加齢とともに減少し、老化によって血管は硬くなり、動脈硬化が進みます。それでもカルシウム・マグネシウム・鉄・亜鉛などの摂取量が多ければ心血管疾患で死亡する割合は減ります。近年の疫学調査では、脳の記憶中枢が活性化されて、足が丈夫で、運動筋力が高い高齢者ほど長寿であることが分かりました。また、残っている歯の数が多いほど健康状態が良いという相関性が認められました。歯が丈夫で健康であれば運動能力に優れ、認知症がなく、記憶力も優れているというのです。血液中のカルシウム濃度は年齢に関係なく一定です。水に含まれるカルシウムとマグネシウムが1対1の割合で摂取できると歯も丈夫になります。歯が丈夫であれば肉や魚、野菜などをバランス良くしっかり噛んで食べることができます。ミネラル成分をしっかり摂っていれば歯も丈夫で、健康維持につながります。

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VOL.215『ガンの本態とは』 [体]

◆ガンという病気
 誰にでも、人生の最後には死が訪れます。戦乱の世なら戦死する人が多くいたでしょう。衛生環境の悪い国なら感染症で亡くなる人が多いでしょう。どのような原因で死亡するかはその国や時代の姿を映しています。日本では1980年代から死因の第1位はガンです。その結果、ガンは国民病と呼ばれるようになりました。
 古代にはガンによる死亡の記録はありません。その理由は多くのガンが体内深くの臓器で発生することから外から見ても分からなかったからです。また、ガンで死亡する前に伝染病などの感染症や脳卒中・心筋梗塞などで亡くなっていたこともあるでしょう。1760年から1839年の間のガンによる死亡を調査したところ、100人に1人もいませんでした。ガンが増加したのは150年前くらいからなのです。医薬品や衛生環境の改善によりガン以外の病気で死亡することが少なくなり、最後にガンになり死亡するのです。つまり、他の病気に対する治療法は進んでいるけれども、ガンの治療法は40年もの間、画期的な進展が見られていないということです。

◆ガン治療が進展しない理由
 ガンはガン化を起こすDNAを傷つける原因や機会が増えることで発症すると考えられています。DNAが傷つくことで細胞の制御システムが徐々に破壊され、無制限、無秩序な細胞増殖が始まります。ガン治療が進展しない理由は、感染症ならウイルスの種類を明確にすれば感染防御の対策ができますが、ガンはその原因が明らかでないためです。ガン細胞は栄養と酸素が供給されれば永遠に細胞分裂を続けるので「(悪性)新生物」とも呼ばれます。
 カラダを構成する細胞塊(組織・臓器)は1個の受精卵から始まります。この受精卵が分裂を繰り返すことでカラダが作られます。その作り方はすべての細胞の核にあるDNAの設計図が元となります。通常は、正常な細胞分裂にはさまざまな形で増加に歯止めがかかっています。細胞分裂は細胞増殖因子と呼ばれるタンパク質の信号を受けて行われます。細胞増殖を制御する仕組みが遺伝子の設計図に書き込まれているからです。
 また、正常な細胞は何か異常が発生したと察知すると遺伝子が働いて自爆し、異常な細胞が取り除かれる仕組みになっています。これをアポトーシスといいます。さらに、細胞には寿命があり、分裂してコピーされる度に染色体の末端にあるテロメアが少しずつ短くなります。テロメアが短くなると細胞は分裂できなくなります。これが細胞の死です。
 このように、正常細胞には分裂増殖を抑える仕組みがあります。また、カラダには免疫機能という防御能力があり、外部から侵入したウイルスや細菌を攻撃する仕組みがあります。通常、自分の細胞は攻撃しません。ところが、病原体からの攻撃を受けると正常細胞の分裂にミスコピーが生じ、蓄積してガン化します。生じたガン細胞は毎日5000個ほど発生しますが免疫担当細胞が攻撃排除してガンの発生を制御しています。ここで取り逃がしたガン細胞が増殖して成長するのです。

◆免疫力を上げよう
 1個のガン細胞が大きな塊になるまでには10年ほどかかります。若い頃には免疫力が強いので大きな塊にはなりにくいのですが、40歳を過ぎると免疫力が低下してくるので、ガン細胞は急速に増加する過程で変異を起こし、他の臓器に転移します。ガンは転移すると抗ガン剤を投与しても徐々に効果が薄れる薬剤耐性になります。
 ガンは生物の進化に似ています。親から子に遺伝子が受け継がれる際、遺伝子変異が起き環境に適合していきます。ガン細胞は細胞分裂するほどDNAが変異して高い増殖能力を持つ怪物になります。これが感染症よりガン治療が格段に難しい理由です。ガンにならないように免疫能力を維持することが大切です。

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