So-net無料ブログ作成

VOL.242『リンパの流れを良くしよう』 [体]

◆ 医学の考え方
 最近は、健康維持のために医学情報を知る機会が増えました。自然の中に存在する生物の世界にある決まりや法則を見つけていく学問は生理学、異常や病気になる法則を見つけていく学問は病理学といい、これらを基礎医学と呼びます。
 外科や内科など病院で診察するのは臨床医学です。臨床という言葉は、死に瀕して床に臥している人に対して施すという意味の宗教用語で、臨床医学の成り立ちは宗教の考え方に由来しています。臨床医学は個人に対する医学でもあり、同じ風邪をひいても皆同じ薬で治るとは限らないように、症状だけを診るのではなくいろいろな角度からその人を診るのです。内科という言葉は『Medicine』を訳したもので、語源は祈祷師です。施す治療がなければ祈るだけという考え方が脈々と受け継がれてきたのが臨床医学なのです。

◆ リンパ液の流れと浮腫(むくみ)
 1日中立ち仕事をしていると、夕方頃には足がむくんで、靴が窮屈になったりします。特に女性は足がむくむとふくらはぎが太くなったような気がして嫌です。また、朝起きた時、顔がむくむこともあり、冷水で顔を洗っても、すっきりと引き締まった顔にはなりません。これを医学的には浮腫と呼びます。浮腫は細胞の周囲に過剰な水分が溜まった状態のことです。地球上には重力があり、1日中立ち仕事をしていれば心臓より下にある静脈血は足の方に溜まります。静脈に溜まった血液の一部が血管から細胞の隙間に漏れ出す、それがむくみです。朝顔がむくむのは、寝ている状態では顔と足が同じ高さになるので行き場を失った水分が顔に溜まるためです。ですから立ち上がって活動を始めれば数分で治ります。それでも気になる時は、顔をマッサージすれば体表面のリンパ液の流れが良くなり、細胞の周囲に溜まった水分が流れるので元に戻ります。
 血液には酸素や栄養素が含まれており、心臓から押し出された血液は太い血管を通って毛細血管に入り、全身の隅々の細胞まで酸素や栄養素を行き渡らせます。そして、各細胞から排泄された老廃物を回収するのが毛細血管とリンパ管です。老廃物や余分な水分の大部分は血液(静脈)に戻りますが、余分なものがリンパ管に入りリンパ液としてリンパ管を通り、胸管を経て静脈に回収されます。ところが、リンパ管の働きが悪くなると回収できない水分が細胞の周囲に溜まって浮腫の原因となります。リンパ管には心臓のような強力なポンプ作用がないため浮腫になりやすい反面、皮膚の下の皮下脂肪の中を流れているのでマーサージでリンパ液の流れを良くすることができます。体内に病的に水が溜まることで引き起こされる病気はたくさんあります。健康な人の足のむくみはマッサージなどで治りますが、病的な浮腫は医師の治療が必要です。

◆ リンパ液の流れは変えられる
 心臓を出た血液は心臓のポンプの作用によって全身を巡り40秒ほどで戻ります。それに比べリンパ液の流れはゆっくりで体内を1周するのに8〜10時間かかります。そのためリンパ液は濁りやすくなります。リンパ液の流れを正常に保つのは膵臓です。横になり、足を心臓よりも高くして、その状態を6〜7時間保てば回復します。お酒を飲みすぎた時などは、水をたくさん飲んで足を高くして寝ることでリンパの流れは良くなります。
 座る時足を組む人は片方のふくらはぎが圧迫されるので、背骨や骨盤が曲がりやすく浮腫が起こりやすくなります。また、浮腫を起こしやすい人は血液中のアルブミンが低下しているので、疲労物質や細胞周囲に水分が溜まりやすくなります。そして、浮腫(むくみ)を起こす人は肝臓や腎臓、心臓疾患になりやすいので、毎日早歩きで20〜30分散歩をするとリンパの流れが良くなります。この時良い水を十分に補給することも忘れないでください。

v242.jpg

VOL.241『日本人特有の遺伝子を知ろう』 [体]

◆ 病気の発症に関わる遺伝子
 かつて、四国の山奥や九州の山岳部、西日本の人里離れた山村などには平家の落人が住む集落があり、そこでは奇病や難病が多くみられ、感染症が蔓延したり、ガンで死亡する人、病気がちな人が多かったといいます。そのため、平家由来の遺伝子を持つ者は短命であると思われていましたが、集落内で繰り返された近親結婚や同族結婚・血族結婚が原因であると分かりました。病気の発症に遺伝子が関わっているのです。
 また、男性と女性では脳の働きが全く異なり、遺伝子も異なります。男性はY染色体を持ち、100個ほど遺伝子を持っています。男性は出産できないので、母と子を外敵から守り、食料を獲得する遺伝子の設計図が組み込まれています。女性のX染色体は生命活動に必須な遺伝子を持ち、特に免疫機能に関する遺伝子が多数含まれています。女性はこのX染色体を2つ持っていて片方のX染色体が壊れても、もう1つのX染色体が正常に機能してくれます。そのため女性は男性よりも平均寿命が長く、乳幼児期の死亡率も低くなっています。妊娠中に流産する受精卵も男性の方が多いのです。

◆ 太りやすい飢餓遺伝子
 日本人は数千年にわたる飢餓の時代を生き延びてきたので、飢餓に耐える遺伝子が刻み込まれています。例えば、アドレナリンに関する遺伝子には脂肪を燃えにくくする作用があり、この遺伝子を持っている人は持っていない人に比べて1日当たりの基礎代謝が200Kcalほど低く、内臓脂肪が溜まりやすくなります。日本人にはこの遺伝子が34%あり、欧米人の8%に比べてかなり多く持っています。糖質を吸収しやすくする遺伝子は、日本人が92%、欧米人が60%です。また、一度太ると痩せにくく筋肉がつきにくい遺伝子は日本人の95%が持っています。
 このように日本人は少量の食べ物を脂肪として体内に蓄積する飢餓遺伝子(肥満遺伝子)を持っています。この遺伝子は満足な食べ物がなかった時代には役立つ遺伝子でしたが、飽食の時代となった現代では肥満になる遺伝子です。日本では近年、急激に肥満の人が増え、糖尿病や高血圧・動脈硬化・高脂血症を発症させる結果となりました。

◆ おもてなし遺伝子
 2020年の東京オリンピックに向けて『おもてなし』という言葉が流行しました。このおもてなしも遺伝子によることが分かりました。この遺伝子は神経質遺伝子あるいは不安遺伝子・恐怖遺伝子とも呼ばれ、不足すると心が不安定になるという、日本人だけが持っている遺伝子です。この遺伝子を持つ人は細やかな気配りができ、相手に尽くせる、真面目なコツコツ型で、日本人の70%ほどが持っています。日本人のきめ細かいサービス、和食の繊細な味付けや盛り付けなどはこのおもてなし遺伝子によるものです。
 この遺伝子はひとえに小さな努力や工夫を積み重ねてきた日本人特有の遺伝子で、例えば米作りでは、まず苗床を作り、肥料をやり、苗を植え付けます。害虫に気を遣い、こまめに雑草を抜き、天候に気を配り、稲穂が実れば収穫する、その後田んぼを片付け、翌年の田植えに備えるという、実に細かい作業です。それが日本人の稲作文化であり、おもてなし遺伝子に刻み込まれているのです。他の国の人にはこのような遺伝子はほとんど見られません。アメリカ人もおおらかで大胆、外交的で、性格的に日本人とは大きく異なります。
 本来、米は日本のような温帯気候では育ちにくい作物です。それを日本人特有の細やかな気配りで、真面目にコツコツ丁寧に、小さな努力と工夫の積み重ねによって根付かせ、日本をお米の国にしたのです。日本人の気質は太古の昔から刻み込まれ、今日に至るまで変わりません。それが今、世界から高い評価を得ています。これが他の民族にはない日本人独特の遺伝子なのです。

v241a.jpg

VOL.240『食生活が乳ガン発症に影響する』 [体]

◆ 乳ガンが増加している
 近年、乳ガンが急激に増加しています。日本では200年以上前に華岡青洲が世界で初めて全身麻酔を用いての乳ガン手術を成功させました。彼の著書には乳ガンは『乳巌』と記録されています。乳巌は石のように固くゴツゴツしていることを表す漢字で、当時はしこりができるのが乳ガンの特徴として考えていたことを示しています。
 ガンを意味する英語『Cancer』は乳ガンに由来する言葉で、星座の蟹座を表す単語です。乳ガンは増殖すると周囲に血管が広がり、その様子がカニが足を伸ばした形に見えることから2000年以上前に命名されていたそうです。人類は昔から乳ガンの発生と増殖を手で触れ、目撃してきたのです。

◆ 乳ガン発症のリスク
 日本では1960年代から乳ガンが胃ガンを抜いて女性が発症するガンの1位となりました。同様に男性も前立腺ガンの発症が急増しており、2024年には最も発症率の高いガンになると推測されています。乳ガンは女性ホルモン、前立腺ガンは男性ホルモンの影響を受けて増殖します。前立腺ガンが60歳を過ぎる頃から急激に増え、70代でピークになるのに対し、乳ガンは30代で増加し、40代と60代に2つのピークがあります。現在は若い世代で発症する人の割合が高くなっています。
 一方、欧米では閉経後に乳ガンになり、60代がピークとなります。これには乳房の構成成分の違いが影響しています。乳房の成分は脂肪と乳腺です。乳腺の割合が高い乳房は脂肪の割合が高い乳房の4〜6倍乳ガンになりやすいとのことです。日本人は乳腺の割合が高く、欧米人の40%に対して80%となっています。これが若い女性に乳ガンを起こしやすくしているのです。日本人は閉経を迎えると乳腺が小さくなり脂肪に置き換わっていきます。しかし、閉経を迎えても乳腺の割合が高いままの人はそうでない人の3倍以上乳ガンになりやすいとの報告があります。
 乳ガンの発症にはBRCA1とBRCA2という遺伝子が関わっています。この2つのどちらかに生まれつき変異があると、乳ガンの発症率が10〜20倍となります。この遺伝子の変異は性別に関係なく、50%の確率で子供に伝わり、女性は卵巣ガン・男性は前立腺ガンの発症率が上がります。また、体格指数(BMI)が標準値を超えると乳ガン発症率が2倍以上に高まります。女性ホルモンは皮下脂肪でも作られるため、肥満の人は女性ホルモンの生産量が多く乳ガンの発生を促します。また身長の高い女性(160cm以上)は148cm以下の女性よりも1.5〜2.4倍の割合で多く乳ガンを発症します。さらに初潮年齢が早い人や閉経年齢が遅い人も乳ガンの発症率が高いことが報告されています。20歳前後で最初の子どもを産んだ人に比べ、30歳以上が初産の人も乳ガンになりやすいようです。

◆ 大豆製品でイソフラボンを
 日本での乳ガン患者は50年前は50人に1人でしたが、現在は14人に1人となっています。この背景には食生活の欧米化があり、肉類や乳製品などの動物性タンパク質の摂取量の増加に比例しています。大豆や大豆製品に含まれるイソフラボンの化学構造は女性ホルモン様作用を示すので乳ガンを予防します。イソフラボンは他にインスリン分泌の効果を高め、脳梗塞や心筋梗塞を抑制するほか、骨からのカルシウム流出を少なくするなどの効果が知られています。日本人はイソフラボンの90%以上を大豆や納豆などから摂取します。男性は乳製品の摂取が多いと前立腺ガンになりやすくなります。日本では女性5万人以上の大規模調査により、閉経後に週3回以上の適度な運動習慣がある人は大腸ガンの発症率が30%以下に低下したとの報告が示されました。また、夜中に起きて昼間に寝ることによる睡眠不足は乳ガンの発症率を高めます。つまり、不規則な生活習慣は乳ガンを発症させやすく、肥満にもなりやすいということです。
 日本人の乳ガンは若い世代に多いのが特徴です。早期の検診受診と規則正しい生活、適度な運動習慣を心がけ、乳ガンから身を守りましょう。


v240.jpg

VOL.239『日本人と欧米人は体質が違う』 [体]

◆ 異なる遺伝子、異なる環境
 ヒトのカラダは37兆個ほどの細胞からなり、個々の細胞には遺伝子が存在し、遺伝子によって体質が決まります。遺伝子は基本的に一生変わらない部分(ジェネティクス)と、生活習慣やストレスなどの環境要因によって変わる部分(エピジェネティクス)が絡み合っています。
 日本人と欧米人では基本的には変わりませんが、それぞれ異なる遺伝子を受け継ぎ、異なる環境で進化しました。日本は島国なので、日本人は外国からの侵入を受けずに農耕民族として生きてきました。一方、欧米人は狩猟民族で、陸続きの異民族との戦いの中で生きてきました。そのため髪や肌・瞳の色などの外見はもとより、筋肉や脂肪の量や質、体温、消化吸収、アルコールの分解能力、インスリンの分泌量、腸内細菌のバランスなど、さまざまな点で違いがあります。そして体質の違いにより病気になる割合や発症の仕方も違います。

◆ 筋肉も違う
 近年、ヒト遺伝子の解明によってゲノム解析技術が急速に進歩しました。2003年には欧米人の遺伝子を使用してヒトの全遺伝子が解明され、日本人の遺伝子配列は2016年に明らかにされ、日本人と欧米人の体質の違いが明らかになりました。例えば、筋肉には赤筋と白筋の2種類があり、白筋の割合はアフリカ人が70%、欧米人は50〜60%で日本人は30%以下です。一般に筋トレで鍛えるのは白金です。日本人は白筋の合成に関する遺伝子に変異があり、白筋が作りにくいので赤筋が発達しました。筋肉が増えると基礎代謝は上がります。基礎代謝とは安静にしていても消費する必要最低限のエネルギーです。日本人は筋肉が簡単にはつきにくいので、運動で筋肉をつけようとすると少ない白筋を集中的に鍛えることになり、効率が良くありません。つまり、筋トレだけで基礎代謝を高めることが難しいのです。
 欧米では、地中海沿岸地域の人々が心臓病による死亡率が低いことから、オリーブ油に動脈硬化を抑制する効果があるとされています。オリーブ油にはコレステロールの合成を抑える不飽和脂肪酸が多く含まれていますが、悪玉コレステロールや中性脂肪を減らす効果はありません。これはゴマ油や大豆油・コーン油・アマニ油なども同様です。日本人は欧米人に比べて白筋が少ないため内臓脂肪がつきやすく、脂肪を過剰に摂取すると血糖値や血圧が上昇し、動脈硬化が進んで心臓病が増えます。つまり、欧米人には効果があっても日本人にはありません。ですから、摂り過ぎに気をつけましょう。オリーブ油にはオレイン酸が豊富に含まれていますが、オレイン酸は肝臓で合成できるので意識して摂取する必要はありません。

◆ 健康維持の方法も違う
 骨粗鬆症の発症率では日本人が欧米人の50%以下です。骨粗鬆症は遺伝的要因が大きく、カルシウムやビタミンD・女性ホルモン(エストロゲン)の作用、骨基質の減少、動脈硬化に関連する遺伝子によって発症します。この遺伝子に変異が起こると骨粗鬆症の発症率が上昇します。日本人は海藻や緑黄色野菜、大豆、魚介類からカルシウムを摂ってきました。これらの食品に含まれるイソフラボン成分が骨のカルシウムの流出を抑え、骨粗鬆症の発症率を低くしています。一方、遺伝的に乳糖不耐性が多いので、赤ちゃんの頃はラクターゼ分解酵素で母乳を消化できますが、成長すると分解できなくなって70〜90%が乳糖不耐性となります。欧米人では10%以下です。ですから、日本人はカルシウムを摂るために乳製品にこだわる必要はないのです。
 また、フランス人は狭心症や心筋梗塞などの心臓病の発症が欧米諸国で最も少ないのですが、それは赤ワインに含まれるポリフェノールが悪玉コレステロールの酸化を防ぐためだと言われています。その代わり肝臓ガンの発症率は日本人の3〜5倍です。日本人は心臓病が世界一少ないので赤ワインを飲み過ぎる必要もありません。
 以上のように日本人と欧米人では体質の違いから、病気の発症率も異なります。日本人には日本人に適した健康維持の方法があることを知りましょう。

v239.jpg

VOL.234『アレルギーによる過敏性腸症候群』 [体]

◆ 増えるアレルギー疾患
 近年、日本ではアレルギー疾患が増えており、その割合は3人に1人と言われます。
 1963年、日本で初めてのスギ花粉アレルギーが栃木県日光市で見つかりました。日光のスギ並木は17世紀前半に2万4000本植えられ、その後300年に渡って存続していますが、それまではスギ花粉アレルギーの報告はありませんでした。それが1963年以降爆発的に増加したのです。日本では1960年代以降、結核や寄生虫の感染は急激に減少しているのに対し、花粉症によるアレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎・気管支喘息は急増しています。

◆ 寄生虫がアレルギーを防いでいた?
 日本人が寄生虫を持っていたのは縄文時代からであるとの報告があります。寄生虫とアレルギーとの関連性について、発展途上国では寄生虫の感染はありますがアレルギーはありません。寄生虫がアレルギー反応を抑制するのです。寄生虫の分泌物や排泄物の中には分子量2万ほどのタンパク質(DiAg)が含まれています。このDiAgは、寄生虫を攻撃する抗体の働きを抑制するだけでなく、アレルギー物質にもカラダが反応しなくなるように作用します。そのため、腸内に寄生虫が生息しているとアレルギー反応は起こらなくなります。ヒトの腸内に住む寄生虫はヒトの腸内でしか生きられません。寄生虫とヒトとの共生関係は
太古の昔から続いています。日本での寄生虫感染率は第二次世界大戦から1950年代にかけては70%以上で、小中学校では検便が義務付けられていました。つまりその時期、日本人のほとんどが寄生虫に感染していたのです。当時、ヒトの糞便は肥料となり、これを利用して野菜を作っていました。寄生虫(回虫)は1日に1〜20万個の卵を産み、糞便中に排泄されます。回虫は土壌中で2〜3週間後に成熟卵となり、野菜の肥料となって再び野菜から腸内に戻ります。現代は水洗トイレの生活環境となりましたので、回虫に感染する機会はありません。当時野菜は生では食べませんでした。回虫の卵は加熱すると死滅するので、回虫の卵が大量に腸内に入ることはなく、ほどよく感染していました。野菜を生で食べるようになったのは、日本人の食事が欧米化してからです。

◆ 腸に優しい食生活を
 最近、有機農法の野菜を好む人が増えています。農薬を全く使わず、糞便を有機肥料として使っているものもあるので、知らず知らずのうちに寄生虫に感染している人も増えてきました。この人たちにアレルギー疾患はみられません。有機野菜食に変えることでアトピー性皮膚炎や花粉症が治った人もいるそうです。つまり、寄生虫に感染したためにアレルギー疾患が改善されたと考えられます。
 今日、食生活が欧米食に変わってきており、若い人にその傾向が顕著です。その結果、腸内の細菌数が減少し、糞便量も減少しました。腸内細菌は腸粘膜の細胞とともに食物の消化吸収や糞便の形成・免疫機能の維持・有害物質の排除・ビタミン類の合成・酵素の合成・腸の粘膜の蠕動運動など、生命活動そのものと言える働きをしています。
 糞便は単純に食べ物のカスではなく、60%が水分、20%が腸内細菌の死骸、15%が腸内粘膜細胞の死骸、そして5%が食べ物のカスなのです。かつて、日本人の糞便量は1日当たり300gほどでしたが、今日、若者では80gほどしかありません。しかも悪玉菌が異常繁殖したかのような非常に強い匂いを放ちます。その理由も食べ物にあります。肉類や乳製品が多く食物繊維を多く含む食品の摂取が不足しているのです。この状態が続くことで起こる病気が食物アレルギー(アレルギー疾患)であり、ガンや脳梗塞、心筋梗塞、糖尿病、うつ病、自閉症、若年性認知症などにつながります。そして、男性では下痢症、女性には便秘が増えています。これらは過敏性腸症候群や各駅停車症候群と呼ばれます。常に吸収されない脂っこいタンパク質が腸内に長く停滞することによって引き起こされる疾患です。タンパク質はアミノ酸に分解されて腸から吸収されますが、腸内に長く停滞すると、大腸粘膜を刺激して大腸ガンの原因にもなります。腸内の過剰なタンパク質がアレルギー反応を起こし、これがアレルギー疾患を増やしているのです。

v234.jpg


VOL.233『重症熱性血小板症候群(SFTS)』 [体]

◆ マダニが媒介する感染症
 近年、マダニが媒介するウイルス感染症(重症熱性血小板症候群:SFTS)が増加しており、イヌからヒトへの感染例も報告されました。SFTSは2011年に中国の研究者が発見したウイルスが原因で起こる感染症です。主にウイルスに感染したマダニに咬まれることで感染し、日本や中国・韓国で患者の報告があります。
 マダニは森林など屋外に生息する大型のダニで、SFTSウイルスを持っているものは5%ほどです。日本国内でヒトへの感染に関わっているマダニは、フタトゲチマダニとタカサゴキララマダニです。患者は2013年に40人、2014年に61人、2015年に60人、そして2017年が85人で内7人が亡くなりました。これまで国内では西日本を中心に315人の発症例があり、60人が死亡、致死率はなんと20%です。

◆ 国内での症例と感染経路
 2017年は日本紅斑熱などダニを媒介とする他の感染症も多く発症し、例年に比べてマダニが多い年でした。ウイルスに感染すると、6〜14日間の潜伏期間を経て、風邪に似た症状が出ます。重症化すると意識障害や言語障害のほか、下血を起こして死に至ることもあります。高齢になるほど重症化するリスクが高まります。
 マダニの多くは春から秋にかけて活動が活発になります。そのためSFTSの発症が多くなるのが5〜8月です。現在、SFTSに対する有効な治療薬やワクチンはなく、発症した場合には対症療法が中心です。国立感染症研究所や医療機関のチームが治療法の臨床研究を進めていますが、まだ有効な治療法は確立されていません。マダニに咬まれないようにするしかないので、野生動物が出没する場所やヤブなどマダニが多く生息しているような場所には入らないようにしましょう。止むを得ず入る場合にはできる限り肌を露出しないようにしましょう。ペットが感染している場合もあるので、ペットには素手で触れないようにし、咬まれないように注意しましょう。動物病院で感染の有無を確認するのも良いでしょう。
 SFTSウイルスはヒトだけでなく、シカやイノシシなどの動物にも感染します。厚生労働省によれば、2016年、西日本の女性が野良ネコに咬まれた後にSFTSを発症し、死亡したとのことです。ネコからヒトへの初めての感染です。同様にSFTSを発症した飼いイヌを介護していた男性がSFTSに感染していたことが報告され、その後回復しましたが、こちらもイヌからヒトへの初めての感染例となりました。ウイルスは唾液や血液、糞便などに含まれるので、SFTSを発症している動物に触れた手で自分の目の粘膜や傷口などに触れると、そこから感染する可能性があります。通常、健康な状態のペットからは感染する可能性は低いとみられています。

◆ ウイルス感染と予防法
 動物が感染源となる感染症を人畜共通感染症と呼びます。WHOは自然の条件下で伝搬して起こる感染症と定義しており、200種類以上の寄生虫・細菌・ウイルスがあります。特に問題なのがウイルス感染症です。ウイルスは地球上における最小の生物で、肉眼では見ることができません。独立して生きることができないので、生きている細胞に感染して生きながら常に繁殖の機会を伺っています。他者の細菌に感染することでしか生きられないウイルスが絶えず新たな感染先を探すのは当然のことです。
 ウイルスがヒトに感染する方法には直接感染と間接感染があります。直接感染では、血液や唾液・精液などの液体を介して移動します。間接感染は、動物や昆虫・寄生虫などを介して感染します。ウイルスの侵入口は、口や鼻などの呼吸器・肛門や尿道などの泌尿器・生殖器など、外部に接する部位です。人体に侵入したウイルスは標的にした臓器に入り増殖します。その結果、カラダは病気の症状を示します。
 SFTSのウイルス感染症はマダニを介して間接感染します。マダニには殺虫剤も効きません。感染症予防には手洗いの励行が基本です。そして自身の免疫力を上げることも大切です。ストレスをためずに規則正しい生活を心がけましょう。

v233.jpg


VOL.232『良いカルシウムを毎日たくさん摂ろう』 [体]

◆ カラダに最も大切な栄養素
 ヒトの生命はカルシウムによって始まり、カルシムの作用が中止すれば終わります。生命誕生の瞬間から生きている限り一時も欠かせない、カラダに最も大切な栄養素であるにもかかわらず、そのことを知らないヒトがほとんどです。
 カルシウム摂取が不足し、体内で足りなくなると、血液中のカルシウム濃度に異常が生じます。血液中のカルシウムは、筋肉の収縮や刺激の伝達など重要な機能を調節しているため常に一定の濃度でなければ、生命を維持することができなくなります。そこで脳は直ちに警告を発し副甲状腺に指令を出します。副甲状腺はその指令を受けると副甲状腺ホルモン(PTH)を血液中に放出して、骨に蓄積していたカルシウムを溶かし出し血液中のカルシウム濃度を元に戻します。このような働きにより、私たちの心臓は止まることなく動かされ、生き続けることができるのです。

◆ 細胞にカルシウムが溢れると…
 カルシウムが不足しているのにそのまま放置していると、カラダは副甲状腺ホルモンの放出ばかりに頼るようになってしまいます。すると、ホルモンの分泌が続いて骨は溶かされ続け、カルシウムは血液中や組織中に大量に放出されます。大量に放出され過ぎて余ってしまったカルシウムは、腎臓の尿細管・肝臓の細胞・血管内壁細胞・白血球・リンパ球など体内のあらゆる細胞中に蓄積して正常な生命活動を妨げます。
 カルシウムが血管壁に沈着すると動脈硬化となって血管内壁が細く狭くなり、血液が十分に流れなくなります。すると血管に栄養素や酸素を十分に供給できなくなるため、細胞にエネルギーを供給できなくなってしまします。細胞には余分に入ってくるカルシウムを排出するカルシウムポンプという機能がありますが、このポンプが働くためには大きなエネルギーが必要となります。細胞がエネルギー不足になればこのカルシウムポンプも働けなくなり、細胞内の余剰のカルシウムを排出できなくなって細胞は死滅し、細胞の周囲にカルシウムが沈着します。太古の昔、カルシウムによって誕生した生命体ですが、細胞の中にカルシウムが大量に溢れると細胞は死んでしまいます。そこで生命体は、カルシウム濃度を調節する仕組みを作って生き延びました。もともとカルシウムが豊富な海で誕生した生命体は水に溶けているカルシウムを体内にたやすく取り込むことができましたが、陸に上がり、動物からヒトへと進化した私たちがカルシウム不足になるのは当然で、それを補う仕組みが副甲状腺なのです。
 母体内の胎児に副甲状腺ホルモンはありません。すべてのカルシウムが母体から供給されるからです。生まれた後に副甲状腺ホルモンが作られ、余ったカルシウムは骨に蓄積し、カラダを支えます。新生児の頃は母親からの乳汁中のカルシウムが頼りです。ヒトの一生のうちでカルシウム量が最大となるのは18歳頃で、同時に骨量も最大となります。そして35歳以降は徐々に骨量が減少し、この減り方が急激だと骨粗鬆症になり、骨折が生じます。

◆ 不足させないために
 女性ホルモンであるエストロゲンには骨を溶かす物質の分泌を抑え、腎臓の働きで活性型ビタミンD3を放出し、腸管からのカルシウム吸収を盛んにする作用があります。またエストロゲンは腎臓に作用して尿によるカルシウムの排泄を抑えます。ところが、閉経後にはエストロゲン分泌が低下するため、腸からのカルシウム吸収も減少します。
 かつては人生50年と言われ、女性は閉経が人生の終わりでした。老化ではカラダの臓器や組織が衰えて機能が低下します。加齢とともにカルシウムの吸収性も急激に低下するためカルシウム不足となりやすくなります。カルシウム不足を防ぐために吸収性に優れたカルシウムを十分に摂取して大切なカルシウムの吸収効率を上げ、老化を防いで健康を保ちましょう。

v232.jpg

VOL.230『生命活動を活発にするタンパク質』 [体]

◆タンパク質とは
 タンパク質はカラダの主成分で体重の20%を占め、水の60〜70%に次いで多く含まれます。タンパク質は皮膚や筋肉に存在するコラーゲンやアクチンのようにカラダを構成するものや血糖値の調節などに関与するインスリンとして働くもの、体内の化学反応を助ける酵素として働くものがあります。また、鉄を運ぶ血液中のヘモグロビンのように物質の輸送に関わるものや、抗体のようにカラダの防御機構に関与するものなど、さまざまな特徴や役割を持つのがタンパク質です。
 体内に異常なタンパク質が蓄積したり、タンパク質の機能が異常になると病気の原因となり、老化が進みます。そこで、タンパク質がどのように酸化障害されるのか検証すると、その大きな要因は活性酸素であることが分かります。呼吸で吸い込んだ酸素のうちの2〜3%が反応性の高い活性酸素に変化します。細胞内のミトコンドリアの主な機能はエネルギー(ATP)を作ることで、そのATPが生産されるときに活性酸素が生じます。新陳代謝や虚血時にも活性酸素は発生します。また、ウイルスに感染した際の生体防御としても活性酸素が生産されます。紫外線や放射線照射、精神的ストレスの状態でも活性酸素が発生します。

◆活性酸素の影響
 通常、発生した活性酸素は体内のカタラーゼやスーパーオキシド・ジムスターゼ(SOD)の酵素によって消去されますが、活性酸素の量が異常に多くなると体内では消去しきれなくなります。すると、過剰な活性酸素は周囲の細胞内に入り込みDNAを損傷し、アミノ酸配列を切断し、タンパク質を酸化し、細胞機能を低下させる原因となります。その結果が血管の動脈硬化による脳卒中や心疾患、パーキンソン病、アルツハイマー病などの神経系疾患、糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満などの生活習慣病、ガンや老化を引き起こします。
 タンパク質のシステインやメチオニンなどイオウを含むアミノ酸は最も酸化を受けやすくなります。カモジュリンは、脳の機能を維持する役割を果たすカルシウムと結合するタンパク質ですが、加齢に伴って酸化されやすいので脳機能低下の原因となります。
 また、タンパク質のリシン、アルギニン、プロリン、トレオニンなどのアミノ酸は活性酸素の影響を受けやすく、酸化されると老化の原因として、皮膚ではシワ・シミ・たるみ・くすみとなり、内臓や脳では機能低下を引き起こします。さらに、加齢とともに活性酸素の酸化障害を受けるタンパク質は増加し、酸化を修復する酵素量の低下や、タンパク質の代謝機能の低下などによって酸化ストレスを受けた異常なタンパク質の蓄積が亢進します。
 過剰な活性酸素を消去する効果があるのは野菜や果物に含まれる抗酸化物質として知られているビタミン類、カロテン、ポリフェノールに加えてカルシウムやマグネシウム、ケイ素、鉄などのミネラル成分です。

◆分岐鎖アミノ酸を摂ろう
 健康を維持して病気を予防するためには病気の発症や進行に関わるタンパク質が発現しないようにします。つまり、未病(病気ではないが放置すると病気になることが予想される状態)の予防や不健康状態の改善が結果的に病気の予防に役立ちます。
 タンパク質を構成する20種類のアミノ酸のうち、9種類のアミノ酸は体内で合成できない必須アミノ酸で、食物やサプリメントから摂取する必要があります。特に分岐鎖アミノ酸(バリン・ロイシン・イソロイシン)が不足すると元気が出ません。分岐鎖アミノ酸は筋肉量を増やし、カルシウムの吸収も助けるので骨形成に効果があり、肥満の予防や運動不足の解消につながるので毎日の摂取を習慣づけたいものです。
 タンパク質の体内での働きを知ることでタンパク質がいかにして病気を予防しているかを知ることができます。体内では水の次に多いのがタンパク質です。そのタンパク質を構成する必須アミノ酸、特に分岐鎖アミノ酸を積極的に摂取しましょう。

v230.jpg

VOL.229『骨粗鬆症を予防して健康寿命を延ばす』 [体]

◆高齢化とQOLの低下
 日本は高齢化が加速しており、骨量が減少して骨がスカスカで脆くなる骨粗鬆症が自覚症状がないまま進行し、気づいたら骨折をしているという人が増えています。骨折は要介護や寝たきりの原因となり、QOL(生活の質)低下につながります。
 骨は常に破骨細胞が骨を壊し、骨芽細胞が新しい骨を形成するという新陳代謝を繰り返しています。これを骨の代謝回転と呼びます。成長期では骨芽細胞が破骨細胞の3倍以上の割合で骨を形成します。逆に閉経後の女性では破骨細胞が3倍以上の割合で骨を吸収し、壊します。骨の形成と吸収のバランス(カップリングという)を調整しているのがエストロゲンという女性ホルモンです。閉経によってエストロゲン分泌が減少すると、骨が吸収される速度が速まり、骨の形成が追いつかないため骨が脆くなります。

◆骨粗鬆症の怖さ
 骨粗鬆症では骨量と骨密度が減少し、骨に鬆(す)が入ってスカスカ状態になります。するとほんのわずかな衝撃でも骨折を起こします。特に、高齢者が太ももの付け根の大腿骨近位部を骨折すると、寝たきりや要介護の原因となります。骨粗鬆症は女性に多く、更年期以降に急激に増えます。
 骨粗鬆症の危険因子は加齢と閉経によるホルモン低下の他に、ダイエットによる栄養不足や飲酒、喫煙、運動不足などの生活習慣や、長期のステロイド剤使用による慢性疾患があります。女性では60代で5人に1人、70代で3人に1人、75歳以上では2人に1人の割合で骨粗鬆症となります。男性でも70代で5人に1人の割合となり、骨粗鬆症患者は全国で1300万人以上と推計され増加傾向にあります。ほとんど自覚症状がなく、背骨が体の重さで潰れる圧迫骨折となり、身長が2〜3cm低くなります。病院で問診を受け、骨密度検査や骨吸収と骨形成のバランスを測る骨代謝マーカー検査、胸椎や腰椎の骨折や変形、X線検査によって骨粗鬆症かどうかの診断ができます。
 通常、骨量は20〜30歳ごろをピークに徐々に減少していきます。20〜40歳までの平均骨量が若年成人の平均値と定められており、平均骨量の20〜30%減少までは正常域とされます。骨量の減少が30%以上になると骨粗鬆症と診断されます。20〜30代に激しい運動していた女性はエストロゲン分泌が急激に低下するため、骨粗鬆症による疲労骨折を起こしやすいので注意が必要です。
 治療は、食事の栄養バランス・適度な運動の習慣・薬物治療が基本となります。服薬回数は程度によって1日1回から月1回、6ヶ月から1年に1回などさまざまです。
 厚生労働省によれば2016年の日本人の平均寿命は男性81歳、女性が87歳です。一方、内閣府の高齢社会白書では自立して生活できる健康寿命は男性が71歳、女性は74歳で、平均寿命と健康寿命の間には10歳前後の差があります。その大きな要因が骨粗鬆症による骨折です。要介護の原因の1位は認知症、2位が脳血管障害、3位が高齢による骨折・転倒でその背景には骨粗鬆症があります。

◆予防と治療
 骨粗鬆症の予防や治療の基本は栄養素です。つまり、骨の主成分となるカルシウム・マグネシウム・ケイ素などのミネラル成分や、骨の代謝回転に必要なタンパク質、ビタミンDや納豆に多く含まれるビタミンKなどを積極的に摂取することです。さらに、散歩程度の適度な運動習慣や日光浴も効果的です。日光浴をすることでビタミンDが形成されます。高齢者は骨に体重の負荷がかかるので激しい運動で筋肉を鍛えることは避けましょう。動脈硬化が進んで血管が切れ、出血する確率も増します。むしろ、転倒防止の方が重要です。
 最近、WHO(世界保健機関)が開発した骨折リスク評価法では、40歳以上で年齢や性別、骨折の質問に対してインターネットで答えると、10年以内の骨折の確率が算出されます。このような方法を活用して自分の骨の状態を確認してはどうですか?

v229.jpg

VOL.228『細胞間の情報交換が生命維持に関与する』 [体]

◆コミュニケーションの取り方
 ヒトは古代から情報交換を行って生き延びてきました。文字のないインカ帝国では紐にコヨリをつけて人口を把握していたそうです。指を折って数える代わりに紐に結び目を作り、区切りの良い数になると、新しく色の違う紐を結ぶことで間違いを減らしていました。この方法なら言葉や文字が無くてもみんなが数を共有できました。他の民族と突然会話する羽目になった時は、身振りや手振り、擬音や目つきで分かり合います。今日、世界の人口は70億人を超え、言語は6000種類にも及びます。
 機能が異なる200種類以上の体内の細胞は、内外からの刺激に対してバラバラに反応するのではなく、規則正しく一貫して働いています。細胞は横の繋がりばかりでなく、時間と空間との縦の流れにおいても統一した自己を維持します。つまり、自分以外の物質(病原体や異物など)が体内に入ってくると、全てを非自己と判断して免疫機能(白血球)が攻撃・排除することで病気にならないようにしています。

◆体内の情報伝達
 自分は自分ですが、身体的には昨日の自分と今日の自分とは違っています。つまり自分という存在は、変化しつつも心やカラダは統一性を保っているのです。その統一性は細胞同士が互いに情報交換しているからこそ成り立ちます。カラダの内部では情報伝達物質であるタンパク質が言葉の代わりに行き交いカラダをうまく調節しています。目も耳もない細胞がどのようにして別の細胞に情報を伝えるのか、そこには言葉を使いこなすシステムがあります。ある細胞がタンパク質をあるタイミングで分泌して近くの細胞に働きかける、また、あるタンパク質が血流を介して遠くの細胞にまで到達し働くなど。さらに栄養素や酸素、酵素、化学伝達物質などの情報が神経繊維に伝わり、電気信号となって別の神経細胞に届く、このような情報伝達が言葉となって生命維持の複雑な作業工程や高度な分業作業を遺伝子の設計図によってスムーズに進めていきます。そしてこれらは免疫機能の防御システムや神経伝達物質のネットワークシステムとなり、生命が統一された状態で維持されます。
 脳内には1000億個の神経細胞が密集し、それが1本の神経繊維となり、他の神経繊維と1000〜10000箇所のシナプスで結合しています。この膨大な数のシナプスの神経伝達活動によって情報伝達が行われるので、日々豊かな人生を送ることができます。神経ネットワークを形成することで情緒という心が他人を共感させることができ、心が自分の遺伝子を動かして免疫機能に影響を与え、カラダの防御システムが働きます。意識を強くする感覚は、直感・見る・聞く・嗅ぐ・味わう・想うで、気づかぬうちに内部から発せられます。これらも言葉ではないカラダの情報システムです。
 ヒトは仕事をして普通に暮らします。誰かを恋しく想ったり、家族を愛したり、些細な出来事に頭を悩ませ、突然の不運を呪い、病気や感染症を恐れ、健康維持を願います。日常生活の中で、寝ている時も、目が覚めている時も、意識がある時もない時も、カラダの中で細胞同士が言葉(情報交換)を交わすことで、カラダの仕組みは維持され、生命が維持されているのです。何事もなかったように毎日を過ごし、そのように時は流れていきます。

◆情報交換が維持された証
 カラダの細胞は内部の遺伝子プログラムに従って順序よく働いています。これは人類の進化の過程において遺伝子に組み込まれ、今日まで生殖行動によって優秀な遺伝子を継承し、存在してきた結果です。途中で突然変異が起こり、異常な遺伝子になっていれば死に絶えてしまっていたはずです。今ある存在は細胞と細胞との間の規則正しい情報交換によって遺伝子が維持された証です。その大きな役割を担うのがカルシウムやカリウムなどのミネラル成分です。これらミネラルがなければ情報は伝わりません。そして、細胞が老化し、壊死したた時、ヒトは死に至ります。細胞の情報交換は死ぬまでずっと続くのです。

v228.jpg