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VOL.215『ガンの本態とは』 [体]

◆ガンという病気
 誰にでも、人生の最後には死が訪れます。戦乱の世なら戦死する人が多くいたでしょう。衛生環境の悪い国なら感染症で亡くなる人が多いでしょう。どのような原因で死亡するかはその国や時代の姿を映しています。日本では1980年代から死因の第1位はガンです。その結果、ガンは国民病と呼ばれるようになりました。
 古代にはガンによる死亡の記録はありません。その理由は多くのガンが体内深くの臓器で発生することから外から見ても分からなかったからです。また、ガンで死亡する前に伝染病などの感染症や脳卒中・心筋梗塞などで亡くなっていたこともあるでしょう。1760年から1839年の間のガンによる死亡を調査したところ、100人に1人もいませんでした。ガンが増加したのは150年前くらいからなのです。医薬品や衛生環境の改善によりガン以外の病気で死亡することが少なくなり、最後にガンになり死亡するのです。つまり、他の病気に対する治療法は進んでいるけれども、ガンの治療法は40年もの間、画期的な進展が見られていないということです。

◆ガン治療が進展しない理由
 ガンはガン化を起こすDNAを傷つける原因や機会が増えることで発症すると考えられています。DNAが傷つくことで細胞の制御システムが徐々に破壊され、無制限、無秩序な細胞増殖が始まります。ガン治療が進展しない理由は、感染症ならウイルスの種類を明確にすれば感染防御の対策ができますが、ガンはその原因が明らかでないためです。ガン細胞は栄養と酸素が供給されれば永遠に細胞分裂を続けるので「(悪性)新生物」とも呼ばれます。
 カラダを構成する細胞塊(組織・臓器)は1個の受精卵から始まります。この受精卵が分裂を繰り返すことでカラダが作られます。その作り方はすべての細胞の核にあるDNAの設計図が元となります。通常は、正常な細胞分裂にはさまざまな形で増加に歯止めがかかっています。細胞分裂は細胞増殖因子と呼ばれるタンパク質の信号を受けて行われます。細胞増殖を制御する仕組みが遺伝子の設計図に書き込まれているからです。
 また、正常な細胞は何か異常が発生したと察知すると遺伝子が働いて自爆し、異常な細胞が取り除かれる仕組みになっています。これをアポトーシスといいます。さらに、細胞には寿命があり、分裂してコピーされる度に染色体の末端にあるテロメアが少しずつ短くなります。テロメアが短くなると細胞は分裂できなくなります。これが細胞の死です。
 このように、正常細胞には分裂増殖を抑える仕組みがあります。また、カラダには免疫機能という防御能力があり、外部から侵入したウイルスや細菌を攻撃する仕組みがあります。通常、自分の細胞は攻撃しません。ところが、病原体からの攻撃を受けると正常細胞の分裂にミスコピーが生じ、蓄積してガン化します。生じたガン細胞は毎日5000個ほど発生しますが免疫担当細胞が攻撃排除してガンの発生を制御しています。ここで取り逃がしたガン細胞が増殖して成長するのです。

◆免疫力を上げよう
 1個のガン細胞が大きな塊になるまでには10年ほどかかります。若い頃には免疫力が強いので大きな塊にはなりにくいのですが、40歳を過ぎると免疫力が低下してくるので、ガン細胞は急速に増加する過程で変異を起こし、他の臓器に転移します。ガンは転移すると抗ガン剤を投与しても徐々に効果が薄れる薬剤耐性になります。
 ガンは生物の進化に似ています。親から子に遺伝子が受け継がれる際、遺伝子変異が起き環境に適合していきます。ガン細胞は細胞分裂するほどDNAが変異して高い増殖能力を持つ怪物になります。これが感染症よりガン治療が格段に難しい理由です。ガンにならないように免疫能力を維持することが大切です。

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VOL.214『腐敗と発酵の話』 [生活]

◆食品の腐敗とは
 食品は初夏であるこの季節から腐敗しやすくなります。では、腐敗とはどのような現象なのか、また、気温が高まる夏に向けてどのような点に注意が必要なのか、見てみましょう。
 食品にはさまざまな細菌が存在し、腐敗していない食品でも1g当たり100〜100万個の細菌が存在しています。これらが大量に繁殖することが腐敗です。腐敗した食品には1g当たり1千万〜1億個の細菌が繁殖しています。腐敗を起こす細菌は食品の表面だけでなく内部でも増殖しており、それが急激に増殖することで腐敗が起きるのです。細菌は、温度条件によって数十分で分裂し、倍々に増えるので短時間で爆発的に増殖します。魚介類に多い腸炎ビブリオ金は一個の細菌が4.5時間で27回分裂し、1億4000万個に増殖します。腐敗が進んだ食品は味も匂いも急激に変化します。腐敗臭は主にタンパク質がアンモニアに変化することで生じます。同時に硫化水素、糖からは有機酸が作られ、それらがミックスして腐敗臭が起きます。
 細菌類は、腐敗の化学反応を進める酵素で食品中のタンパク質や糖を分解して、必要なエネルギーを得ています。その過程でアンモニアと硫化水素という腐敗臭の原因となる気体が生じます。これが人体には有害物質となります。腐敗の初期であれば摂取しても人体に影響はありません。一方、腐敗していなくても下痢や嘔吐を引き起こす食中毒菌が存在すれば食中毒を発症します。例えば、大腸菌O ー 157は100個程度の摂取でも重篤な食中毒となります。つまり、腐敗しているかどうかと食中毒になるかどうかは必ずしも一致しないのです。しかしながら、腐敗した食品を大量に摂取することで食中毒を起こす場合もあるので十分注意しましょう。

◆腐敗を防ぐ
 では、腐敗を防ぐにはどうすればいいのでしょう?基本的に細菌は水分量(細菌が利用する自由水)を減らすことで増殖を抑えることができます。これを利用したのが、塩漬けや砂糖漬け・干物です。食塩や砂糖を加えて自由水を減らし、乾燥させることで細菌が自由水を利用できなくなり増殖できなくなるのです。
 また、細菌の持つ酵素を働きにくい環境におくことで、菌の増殖を抑えることができます。通常、細菌の酵素は低温になると働きません。ですから冷蔵庫内は細菌の増殖を抑制できるのです。ただ、冷蔵庫内は10℃前後なので長期間の保存は期待できません。また、強い酸性の環境下では酵素が破壊され細菌は死滅します。例えば、酢漬けや乳酸菌を利用したぬか漬けは酸性度を高める保存方法です。

◆美味しくて体に良い発酵食品
 腐敗と同様な現象に発酵があります。古くからヨーグルトなどの乳製品や納豆などは発酵食品として知られていました。乳酸菌や納豆菌により食品が変質することで美味しい食品になります。乳酸発酵では、乳酸菌を利用して乳糖を乳酸に変え保存でき、美味しい味を作り出すことができます。腐敗と醗酵は細菌による同じ現象ですが、日本には数多くの発酵食品があり、発酵によって日本の食文化は発展したとも言えるでしょう。醤油や味噌は、塩味と旨味を合体させた発酵食品の中心的存在です。その中には旨み成分のグルタミン酸やイノシン酸をはじめ各種のアミノ酸などが含まれていて複雑な香味が生み出されます。
 食品を発酵させることで腐敗しやすい食品の保存性は高まりました。そして発酵食品は世界中で見ることができます。発酵させることで保存することが可能となり、さらに、栄養源にすることもできます。人類は膨大な時間をかけ、微生物を利用して知識を積み重ね、細かい感性と注意力によって発酵食品を作り、複雑で個性的な食品が生み出されています。食品の腐敗と発酵の違いについてお分かりいただけたでしょうか。

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VOL.213『21世紀型の感染症』 [健康]

◆増加傾向の感染症
 一般に世界3大感染症と呼ばれているのは、マラリア・結核・エイズ(AIDS)で、これらは毎年100万人以上が死亡する恐ろしい感染症でした。そんな中、最近ではマラリア対策が進み、死者は年間65万人ほどに低下しました。マラリアの原因はマラリア原虫という微生物で、結核は結核菌、エイズはHIVウイルス(ヒト免疫不全ウイルス)です。
 これら3大感染症とは別に、毎年100万人ほどが命を奪われている感染症が増加傾向にあります。それは呼吸器感染症と呼ばれる肺炎・下痢症・腸炎です。

◆下痢症・肺炎について
 ヒトは体の60〜70%が水分です。その水分を急激に奪うのが下痢症で、死亡のリスクも低くありません。特に、小児や高齢者が下痢症になると重篤な病気になることが多いので注意が必要です。WHOでは子供の下痢症を起こすロタウイルスのワクチン接種を奨励しており、日本でも小児科学会がワクチン接種を指導していますが、定期的接種には至っていません。高齢者(75歳以上)では冬場にノロウイルスによる腸炎が重篤化し、死に至ることがあります。ノロウイルスはロタウイルスと違って有効なワクチンがありません。有効な治療薬がないので、老人ホームや介護施設で流行すると死亡のリスクが高まります。下痢症は体の水分を奪う病気で、治療の根幹は失った水分を補給することです。
 日本人の死因の1位はガンで、2位が心筋梗塞や脳梗塞などの心臓・血管系疾患、3位が肺炎です。肺炎の原因は種々ありますが、主なものは細菌です。この細菌にも肺炎球菌・インフルエンザ菌・マイコプラズマ・レジオネラ菌など多種多様な菌があります。さらに、インフルエンザウイルス・RSウイルスなど多種のウイルスも原因となり、過敏性肺炎や間質性肺炎のように感染症でないものもあります。
 下痢症も大腸菌やサルモネラ菌、カンピロパクターなどの細菌が原因になるし、ノロウイルスやロタウイルスなどウイルスが原因にもなります。さらに、アメーバやジアルジアなどの寄生虫が原因となることもあります。

◆感染症の原因は多様化している
 このように、21世紀型の感染症は肺炎や下痢症、腸炎など原因が多種多様で複雑化しています。従来の感染症、例えば肺炎球菌なら抗生物質のペニシリンが効くペニシリン感受性肺炎球菌とペニシリンが効かないペニシリン耐性肺炎球菌に区別して治療できましたが、21世紀型の感染症はこれだけでは解決しません。そこで2008年、肺炎球菌の分類が変更されました。肺炎球菌の中でも肺炎を起こす肺炎球菌には抗生物質が効きますが、髄膜炎を起こす肺炎球菌には抗生物質が効きません。そのため分類を変え、治療法を変更しました。
 これらの違いは脾臓によることが最近の研究で判明しました。脾臓は左脇腹、腎臓と胃の間にある臓器で、日常的に脾臓の具合が悪いという人はいませんし、症状も現れませんが、感染症に対抗する免疫機能を持っています。しかし、交通事故や胃ガン、膵臓ガンなどの手術で血小板が減少すると、血液の病気の治療のために脾臓を摘出することがあります。すると感染症を引き起こしやすくなってしまうのです。特に、肺炎球菌に対して強い免疫力を持っており、攻撃・排除するのが脾臓なので、摘出した人は感染症を起こしやすくなります。すると、目やカラダの各部から出血し、多臓器不全を起こします。抗生物質を使用しても効果が見られず、みるみる体力が衰えて死に至るようなこともあります。
 近年、日本人の免疫力の低下が進んでおり、皮肉なことに、衛生環境が整備されたことも種々の感染症の発症の確率を急激に増加させる一因となっています。高齢者や小児の場合、重篤化するリスクが高いので、肺炎や下痢症、腸炎など身近に起きる病気に対して細心の注意を払い、早めに対処することが望まれます。感染症は新しい時代に入ってきたようです。


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