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VOL.212『末梢時計や時計遺伝子を知っていますか?』 [生活]

◆時計栄養学の研究
 近年、生活習慣病を予防する時計栄養学の研究が進んでいます。肝臓や膵臓などさまざまな臓器で時計遺伝子が働き、体内の各部で同時期に働いているのだそうです。体内時計では1日は24時間ではなく、24.5時間になっています。脳には親時計があり、人体で発生している多くの生物学的代謝の過程をタイミングよく調節しています。生物学的に時間的な乱れが生じた人は肥満や糖尿病、動脈硬化、うつ病、その他の慢性疾患を発症します。

◆時計栄養学と末梢時計
 人体における多くの時間的タイミングを再び元の状態に戻し合わせることで健康体と適切な機能を回復することができるという最先端の研究が進んでいるのです。例えば、飛行機で時速900kmの速度で数時間飛行すると、現在自分がいるタイムゾーンと体内時計がずれてきます。このような体験をした人は多いと思いますが、この時差ボケを解消するには長ければ1週間を要します。身体と脳が睡眠を求める時間と外が暗くなる時間を一致させるには脳内にある親時計を進ませるか、あるいは遅らせるしかありません。この体内時計が脳の親時計だけでなく、肝臓や膵臓などの臓器や脂肪組織にも多数の局所的な時計が存在し、人体はそれに依存しており、それを末梢時計と呼びます。この末梢時計を調節しているのが時計遺伝子です。1997年に哺乳動物で初めて時計遺伝子が発見され、カラダの時計合わせに関与する数10種類の遺伝子が特定されました。最大の進展は代謝疾患における体内時計の役割を読み取る研究です。代謝とはカラダが食物をエネルギーに変換し、利用に備えて蓄える一連の過程です。体重増加を調節する上ではいつ食べるか、何を食べるかが関係します。
 地球上の生命は1日24時間のサイクルで支配されています。地球上で最も古い単細胞生物も太陽エネルギーを利用し、光合成によりCO2と水から有機分子と酸素を作り出します。体内時計によって日没に合わせて光合成のスイッチを切り、夜間に働かないシステムで無駄なエネルギーや資源を費やすのを避けます。ヒトでは1970年代、体内時計が脳の視交叉上核(視神経が脳内で交差する部分)であることを見つけました。1990年代になり脳で働いているのと同じ時計遺伝子が、肝臓・腎臓・膵臓・心臓などの細胞で見つかりました。これらの細胞レベルの時計がさまざまな組織の遺伝子の3〜10%の活性を制御します。
 2005年には時計遺伝子の変異が肥満やメタボの発症に関連することが分かりました。メタボは心臓病や糖尿病のリスクを高めます。体内時計と昼夜の周期が慢性的にずれている生活をしている人は代謝疾患・心血管疾患・胃腸疾患のリスクが高まります。血糖値の低下が起こるのは、肝臓がブドウ糖を作り出して血液中に分泌する時期を調節する通常のリズムが失われるためです。血糖値が過剰に上昇するのを抑えるインスリンは血液中からブドウ糖を取り込んで筋肉や肝臓に蓄積する反応を促進します。この正常な血糖値の維持に膵臓時計遺伝子が不可欠なのです。そしてこの乱れが糖尿病となります。このような働きをさまざまな組織に存在する体内時計が果たしています。正確に同時期に働いてカラダの恒常性を維持しているのです。

◆時計遺伝子を活性化して健康に
 近年、心臓や胃の病気、ガン、神経疾患、精神疾患など、多くの病気には日内変動の乱れが関連することが分かってきました。体内時計の最適な働きに関する知識を考慮した新たな医学をサーカディアン医学と呼びます。これを組入れることで健康増進や慢性疾患の予防が容易になるといいます。つまり、規則正しい生活、睡眠時間の確保、野菜食、魚介類や適度な動物性タンパク質食、適度な運動習慣、笑いの絶えない日常生活、ミネラル十分な水分補給などが末梢時計を刺激し、時計遺伝子が活性化されて、健康な毎日につながります。

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VOL.211『適度な運動の効果の新しい報告』 [生活]

◆運動が海馬を大きくする
 近年、日本では医療費が42兆円を超え、そのほとんどが高齢者への医療費です。そこで健康寿命を維持するために、適度な運動習慣が指導されています。
 2010年頃から世界各国で適度な運動の効果例が報告されており、運動と脳の海馬との関係では、運動能力が高い人は海馬の体積が大きいことが分かりました。2011年のピッツバーグ大学の報告によれば、運動が海馬を大きくするとのことです。平均年齢67歳の認知症のない健常者120人を2群に分け、1群には毎日40分のウォーキングをさせ、2群には運動させずにストレッチだけを週に3回、これを1年間続けた結果、運動群では海馬の体積が2%増加しましたが、非運動群では海馬の体積が1〜2%減少しました。この結果を受け、運動は高齢者の認知症予防になると結論しました。

◆イリシンという新規ホルモン
 また、運動と健康の効果についての論文では、筋肉内には未知なる物質ができる機構があり、運動するとその物質が放出されてカラダに良い影響を与えるという報告があります。運動すると筋肉から放出されるイリシンという新規ホルモンの発見は2012年にネイチャー誌などで発表されました。イリシンは白色脂肪細胞に作用し、褐色脂肪細胞に変えます。つまり、脂肪が燃焼し、蓄積した脂肪の蓄積を改善するということです。10週間運動を続けるとイリシン濃度は2倍になるといいます。動物実験でも、肥満で糖尿病状態のマウスにイリシンを注射したところ、血糖値とインスリン分泌量が改善され、体重も減少しました。日本でも、糖尿病患者とその予備軍577人を対象に、食事と運動療法を行う群と何もしない群に分けて、1986年から1992年まで続け、14年後の2006年に糖尿病状態を調査した結果、食事や運動療法を行った群では糖尿病の発症を予防したとの報告があります。
 しかしながら、激しい運動はカラダに悪影響を与えます。ヒトの心臓は生まれてから死ぬまでに20〜30億回拍動しますが、心臓を構成している細胞は終末分裂細胞と呼ばれ、子供の頃にすでに分裂が終了しています。ですから、たとえ心筋細胞が傷ついても補充することはできないのです。通常、大人の心臓は1分間に50回ほど拍動します。運動すると拍動数は増加するので、心臓に負担がかかります。子供の頃から激しいスポーツを続けたヒトの心臓はスポーツ心臓と呼ばれ、一般人よりも心拍数が少なくなります。
 スポーツ選手のエネルギーは運動代謝で消費されるので、筋肉中に蓄積されたグリコーゲンで内臓脂肪は消費されません。グリコーゲンを燃焼させると低血糖を起こし、激しい空腹感を覚えるので食事量が増します。現役中ならそのエネルギーを完全に消費できますが、40歳を過ぎる頃には運動量が激減するのでエネルギーが過剰になり、脂肪の蓄積が進んでしまいます。つまり、スポーツ選手は運動をやめると肥満になりやすく、スポーツ心臓になるということです。

◆適度な運動はいいことばかり
 心臓に負担をかけずに内臓脂肪を燃焼させるには、散歩などの適度な運動をすることです。歩くことでふくらはぎが第2の心臓となり、心臓に負担がかかりません。息が上がらない程度でウォーキングを続ければ、基礎代謝が高まり、内臓脂肪が消費されます。逆に歩かないと足の静脈に血液が詰まって血栓ができます。また、歩くことは肩こりや腰痛の解消にも効果があります。適度な運動は、脂肪細胞が分泌する悪玉アディポネクチンを減少させ、善玉アディポネクチンを増加させるので、インスリン抵抗性を低下させ、糖尿病状態が正常な状態に戻ってきます。
 適度な運動習慣は海馬の細胞を増やして脳を活性化し、認知症の予防につながり、糖尿病や生活習慣病の原因となるメタボの解消にもなることが科学的にも証明されています。また、心臓に負担をかけることがないので、心臓や血管系疾患の予防にもなります。

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