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VOL.200『脳を活性化させる神経幹細胞』 [脳]

◆新しく増え続ける神経幹細胞
 脳の神経回路の働きは成人を過ぎると衰える一方だとか、毎日数千個の細胞が破壊されているなどと言われますが、最近の研究では、決してそんなことはないということが分かりました。人の脳は500万年にわたる進化の過程で変化し続け、その環境に適応していくために特別な装置を組み込んできたのです。
 脳の中には、今も新しく増え続けている神経細胞があります。それが神経幹細胞です。神経幹細胞は5〜50億個存在し、脳細胞全体の5%を占めています。海馬という記憶を生み出している場所では神経幹細胞が日々新しくニューロン(神経回路)を作っています。つまり神経幹細胞とは、記憶を作り出すためにある特別な仕組みなのです。脳はどんなに歳を重ねても幸福を感じ続けていたいために成長し、進化し続けているのです。

◆活力を失っているだけ
 近頃、若い人の話についていけないとか、自分には到底縁のないジャンルの話に対して参加する気持ちが起きないなど、興味も好奇心もなく、物忘れが多くなる…これは脳細胞が壊れたのではなく、神経細胞が萎縮してきた兆候です。脳細胞の数は変わりませんが、活力を失ってきているのです。かつて、脳細胞は1日に10万個以上死滅するとか、一切生まれ変わらないという俗説がありました。しかし、脳細胞の数は健康であれば劇的に減ることはありません。大部分の脳細胞は生まれ変わらないのですが、唯一海馬の歯状回では日々生まれ変わり、新生ニューロンを増やしているのです。急激に脳細胞が減少するのはアルツハイマーやパーキンソン病などの慢性的な病気です。
 脳細胞は、樹状突起と呼ばれる神経突起がシナプスという回路を使って情報伝達します。歳をとると、この神経細胞1つ1つのパワーが低下し、信号や刺激が伝わるスピードが落ちてきます。つまり、神経細胞の処理能力が落ちて気力や活力が低下するので、脳が衰えたと感じるのです。脳が衰えるスピードを遅らせるには脳に刺激を与えることです。物事に感動するとか、仕事や趣味に夢中になるとか、新しいことにチャレンジするのがいいでしょう。このような刺激を受けると脳は、ドーパミンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質を分泌させ、脳細胞を活性化させます。脳はいつでも新鮮で驚きのある刺激を求めているのです。いつもと違う変化や予期しない出来事に対応することが生じると、脳細胞は今まで使ったことがない別の神経回路を使って情報を処理します。別の神経回路を使うことで新しい神経回路が伸びるのです。新しい出会いや感動が毎日をイキイキと過ごす脳の栄養源となるので、若々しく輝いて見えるようになります。

◆新しいことにチャレンジしてみよう
 新生ニューロンは神経幹細胞が作ります。そして、新生ニューロンの活性化を補助する役割を担うのが神経伝達物質のGABAです。GABAは既存の神経ニューロンに対しては落ち着かせるように抑制的に働きますが、若いニューロンに対しては興奮させ活動を高めるように働きます。また、GABAの刺激を受けることで神経幹細胞は神経ニューロンへと成長します。神経幹細胞に対してGABAは必要不可欠な栄養素です。新生ニューロンの働きは記憶力の向上であり、思考力・発想力・意欲などを高め、嫌な記憶を消し、ストレスに対して抑制的に働き、適応力を高めるなどです。
 今日、神経幹細胞の存在が確認されているのは海馬の歯状回・脳室・大脳新皮質の3カ所です。ところが、新生ニューロンになるのは海馬の神経幹細胞のみです。今まで経験したこともない難問や、新しい課題にチャレンジすると、今まで使っていた神経回路では間に合わないので、新しい神経回路が作られ、気力が高まります。脳を活性化し、認知症を予防するために、新たな刺激を求めたり、新しいことにチャレンジして脳の神経幹細胞を増殖させ、活性化してみませんか。

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VOL.199『ヒ素の毒素について』 [生活]

◆ヒ素とは
 最近、築地市場の移転先となる豊洲市場の施設の地下に空洞があり、そこに溜まった地下水にヒ素成分が含まれていることが分かりました。
 ヒ素は複雑な物質で金属と非金属の中間の性質を持つ元素です。そのため、電気を通したり、通さなかったりという半導体の性質を持ち、自然界ではさまざまな鉱物として存在します。
 古代から顔料として使用され、鮮やかな赤や黄色はエジプトでは古い墳墓の装飾に使用されました。毒や薬としても使用され、紀元前4世紀頃には潰瘍に効果があるとされ、中国では膿傷や腺病の治療に用いられました。その後、伝承薬として中国やインドから世界各地に広がりました。

◆さまざまな顔を持つ物質
 1786年からイギリスで本格的に薬剤として使用し始め、19世紀末までマラリア・結核・喘息・糖尿病・頭痛などに効く万能薬とされていました。また、強壮剤としての効果も認められており、1940年には梅毒の治療薬として有効性を示しました。その後、世界初の化学療法剤として、ネズミに噛まれた傷やワイル病・イチゴ腫に有効とされました。
 ヨーロッパには古くから致死量を超す二酸化ヒ素(毒性の強い亜ヒ酸化合物)を直接食べている農村地域がありました。ヒ素を摂取することで健康障害が消え、消化能力や性的能力が亢進し、顔色が良くなるという理由からです。体内に入ったヒ素は皮膚表面の血管を傷害するので顔が赤くなります。この効果がヨーロッパでは美肌効果として化粧品に利用され流行しました。日本でも化粧品として江戸時代から昭和初期まで歌舞伎役者や遊郭関係者が肌色を白くするのに使用していました。
 ヒ素は無味無臭という特徴から暗殺用の毒として古代ローマから流行しました。しかし、髪の毛に高濃度で蓄積する特徴を持つため証拠として残ります。日本では古くから小説や演劇で暗殺に使われる毒の代名詞のように用いられ、実際にヒ素を使った殺人事件も起きています。1955年の森永ミルク事件は粉ミルクにヒ素が製造過程で媒介として混入し、岡山県を中心に130人以上の乳児が死亡し、1万3000人が被害に遭いました。
 また、農薬、シロアリ対策、木材の腐敗防止、ペンキ塗料などにも大量使用されました。現在では環境毒性が指摘され使用禁止となっています。また、古い建物を壊す時にも汚染物質が出ると言われています。戦争でもその毒性から劣化ウラン弾・枯れ葉剤・鉛弾などに多量に使用されました。発ガン性もあり、皮膚ガンは19世紀頃から発生していました。ヒマラヤ山脈やチベット高原などの鉱山から流れ出るヒ素を含む水は、ガンジス川やメコン川に流れ込み、下流の国ではその水を飲料水や農業用水、地下水として使用するため環境汚染被害が拡大しています。

◆安全なの?
 近年、レアメタルの有効性や希少性が注目され資源価値が高騰したことで、ヒ素を含むレアメタルが増産されています。そのせいで途上国ではヒ素化合物が飲料水や農業用水に混入しています。日本では1971年、宮崎県土呂久ヒ素公害事件で慢性ヒ素中毒が出ました。肝臓や腎臓の疾患により死者が出て平均寿命も39歳とされました。村落住人はヒ素の毒性によって美肌美人が多かったそうです。
 ヒ素は海産物に高濃度で含まれ、タンパク質と結合しやすく、細胞内で呼吸に関する酵素を阻害します。海産物を多く摂取する日本人は体内のヒ素レベルが高いのですが、有機ヒ素は体内で代謝され尿から排泄されるため、毎日摂取しても問題にならない濃度です。ヒ素化合物は体内で酵素活性に影響を与えないため、微量のヒ素毒性なら全く問題はありません。
 現在、環境庁によればヒ素化合物による健康被害が起こる危険性はないと言います。今後豊洲の地下水問題がどのように進展するのか見守っていきたいと思います。

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