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VOL.216『食べ物の不思議の科学』 [食べ物]

◆お餅の秘密
 日本人に馴染みの深い食べ物の一つに餅があります。つきたての餅は軟らかいですが時間が経つと硬くなります。これは餅の成分であるデンプン(糖質)の構造が変化するせいで、時間が経過して乾燥するからではありません。
 デンプンは、房状構造のアミロペクチンと直鎖状構造のアミロースからなります。もち米は80℃のお湯で15〜20分温めると、つきたてに近い食感になります。これは房状構造が開いて内部に水分が入り込むためです。それが冷めると再び房状構造が閉じて硬くなります。また、焼いて温めても房状構造が開くので軟らかくなりふっくらします。これはアミロペクチンの房状構造が緩み、気泡の中の気体が加熱されて膨張するためです。電子レンジは一気に水分が沸騰するので餅には適しません。
 餅の食感はデンプン構造だけではなく、米の破砕片や細胞壁、気泡の割合で大きく変化するので、杵と臼でついた場合の方が市販の餅よりも食感がよくなります。市販の餅は細かい組織片や気泡・水分量が多いので食感が落ちるのです。冷凍保存した場合は房状構造が広がりアミロペクチンがそのまま固まります。

◆肉の美味しさの秘密
 次に、肉の美味しさは何で決まるのでしょう。牛肉・豚肉・鶏肉の中で一番硬いのは牛肉です。硬さの原因は筋繊維の太さで、筋繊維が太い牛肉は硬く、ついで豚肉、鶏肉の順になります。そのため牛肉は数週間冷蔵庫で熟成させます。すると筋繊維に含まれる酵素が筋繊維の結合を分解するため軟らかい肉質に変化します。肉の美味しさは、肉に含まれる脂肪やアミノ酸に起因します。豚肉は牛肉や鶏肉に比べてイノシン酸やグアニル酸などのうまみ成分が多く、牛肉には焼くことでうまみ成分に変わるアミノ酸が多く含まれています。和牛には和牛香と呼ばれる甘い香り(ラクトン)が含まれており、この香りは80℃で最も強くなります。80℃はすき焼きやしゃぶしゃぶの最適温度です。
 肉は脂がのっていると美味しいと言いますが、実は脂肪の質と香りのバランスが重要なのです。美味しい肉の脂肪(脂肪酸)には低温で溶けるオレイン酸が多く含まれています。オレイン酸量が多いほど口どけが良く美味しくなります。鶏肉の脂肪は牛肉や豚肉に比べて低温の30〜43℃で溶けるので、冷えた体でも口の中で溶けて美味しく感じます。
 また、牛肉はオスとメスで味が違います。オスは男性ホルモンによって肉が臭くなるので加工食品に使われます。また健康に発育していない場合は水っぽく、筋繊維が弱く肉質が悪くなるので美味しくありません。餌にビタミンAを含ませて肉質を変え、肉に脂肪が入りやすくなるように工夫した肉もあります。

◆納豆の科学
 次は日本伝統の発酵食品である納豆の科学です。納豆は煮た(蒸した)大豆に納豆菌を加え、16〜24時間ほど発酵させます。納豆菌は土の中の稲わらなどに分布し、バチルス属という菌種に含まれます。納豆菌の胞子は熱に強く、熱湯で30分程度熱しても死滅しないので、稲わらを熱湯で煮沸し、大豆の納豆菌以外の細菌を殺して作ります。納豆の最大の特徴であるネバネバの正体は、グルタミン酸が1万個ほど結合したポリグルタミン酸(PGA)です。納豆をかき混ぜるとPGAが糸を作りますが、グルタミン酸が増えるわけではありません。
 納豆は高タンパク質、低脂肪で大豆の80倍のビタミンKを含んでいます。ビタミンKは骨を作りますが、血栓を溶かす効果を弱めるので、心臓の人工弁の薬を飲んでいる人は食べられません。2010年、納豆のゲノムが解読され、新しい品種改良や健康効果が期待されています。
 毎日食べる食品を美味しく食べながら、それぞれの食べ物の特徴を知ることで健康的かつ人生が豊かになれば幸いです。

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