So-net無料ブログ作成
検索選択

VOL.196『肝臓にも分岐鎖アミノ酸』 [体]

◆分岐鎖アミノ酸とは
 今年の夏は、リオデジャネイロ五輪で日本選手たちの活躍が際立ちましたね。一方、ロシア選手の一部はドーピング違反の問題で参加できませんでした。運動選手の中には競技に勝つために、筋肉を増強したり、敏捷性を高めるような薬物を、飲んだり注射したりする人がいます。薬物使用の有無は尿検査で薬物濃度を調べることで明確になります。
 日本人選手は、日本で開発された分岐鎖アミノ酸(BCAA:バリン・ロイシン・イソロイシン)のサプリメントを試合前や試合後に飲む人が多いそうです。分岐鎖アミノ酸は筋肉量を増やし、筋肉のエネルギー源となるアミノ酸で、肝臓を通して筋肉に運ばれ30分後に優先的に取り込まれます。分岐鎖アミノ酸のサプリメントは選手のみならず、スポーツを愛好する人々に広く浸透しており、筋力増強や筋肉疲労の改善に効果があることが証明されています。分岐鎖アミノ酸は、体内に含まれる必須アミノ酸なので副作用は全くありません。そして運動以外にも肝臓障害のある人への効果が証明されており、治療薬として使用されています。

◆治療薬として使われている
 肝臓は、横隔膜の下の腹部右上から中央にかけて位置する体内で最大の臓器です。もし肝臓に障害があり、アルコール中毒などで腫れている場合、指で押してみれば分かります。肝臓は血液中のアミノ酸濃度(アルブミン濃度)が常に一定に保たれるように、アミノ酸代謝の調節の中心的役割を果たしており、老廃物の解毒を行っていますが、機能不全に陥ると体内のアミノ酸バランスが大きく崩れ、さまざまな障害を起こします。
 肝臓は常に休むことなく働き続けるので疲労が蓄積しやすく、沈黙の臓器と呼ばれるように慢性疾患になるまで症状が現れません。そして慢性疾患になると肝細胞の壊死が進み、長期化すると肝硬変になります。肝硬変は肝細胞が壊死した細胞を修復するために硬くなり、著しく機能低下して、10〜30年経過すると多くの場合肝臓ガンに移行します。肝硬変になると血液中のアミノ酸濃度に変化が現れ、分岐鎖アミノ酸濃度が低下します。一方、肝臓で代謝されるチロシン・フェニルアラニン・トリプトファンなどの芳香族アミノ酸の濃度は増加します。肝硬変では肝臓の分岐鎖アミノ酸が分解されるので筋肉が痩せて減少します。
 このように血液中・組織中・筋肉中の分岐鎖アミノ酸が減少すると、タンパク質が生成されないので栄養状態が悪化します。例えば、食べ過ぎで肥満であっても、分岐鎖アミノ酸の摂取が少ないと、むくみ・腹部に水が溜まる・肝臓が肥大するなどの症状が出ます。つまり栄養失調で、摂取するタンパク質のアミノ酸組成が悪化することで肝硬変が起きるのです。

◆健康のために分岐鎖アミノ酸
 肝硬変が原因で意識障害を起こした患者に、分岐鎖アミノ酸を4週間投与した臨床試験では、血液中のアミノ酸バランスが改善され、体内のタンパク質量が増加しました。この結果から、分岐鎖アミノ酸が肝硬変患者のタンパク質代謝には不可欠であることが証明されました。
 また、分岐鎖アミノ酸を2週間飲むことで血液中のタンパク質濃度やアルブミン濃度が増加したケースもありました。その結果、高価なアルブミン製剤の注射の使用を抑制することができたという臨床試験の効果も報告されています。
 分岐鎖アミノ酸は筋肉量を増やし、筋肉のエネルギー源になるだけでなく、肝機能の障害にも効果が発揮されることが証明されています。日頃から健康な人や運動をしない人でも分岐鎖アミノ酸を飲み続ける習慣を身につけてはいかがでしょう。

v196 (2).jpg