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VOL.172『人喰いバクテリアを知っていますか?』 [生活]

◆人喰いバクテリア
 最近、人喰いバクテリアと呼ばれる恐ろしい感染症が増加しています。この感染症は劇症型溶血性連鎖球菌によるものです。国立感染症研究所の報告では、感染者は8月23日までに291人となっており、2014年の273人を超えて、調査を始めた1999年以降最多となっています。地域別では東京が44人、大阪28人、神奈川20人、千葉と兵庫で15人の感染者が出ています。

◆(1)溶血性連鎖球菌
 溶血性連鎖球菌はグラム陽性の連鎖球菌で、鞭毛がなく、芽胞を形成しません。感染症の初期症状としては手足の腫れや激しい喉の痛みが起こります。その後、急速に手足が壊死することから『人喰いバクテリア』と呼ばれるのです。
 1987年にアメリカで初めて報告され、その後、ヨーロッパやアジア諸国に広がりました。日本では1992年に最初の報告があり、毎年100〜200人の患者が確認されています。血圧低下やショック症状が突然現れ、腕や肢に痛みや腫れが生じます。連鎖球菌が急激に増殖して筋肉や筋膜を壊死させ、菌毒素が全身に広がり多臓器不全を引き起こします。
免疫不全などの基礎疾患を持っていなくても突然発病する例もあります。通常は小児の風邪(咽頭炎など)の原因として広く知られているこの溶血性連鎖球菌がなぜ劇症化するのか、理由は分かっていません。この感染症は子供からお年寄りまで広範囲で発症しますが、30代に最も多いという特徴があります。
 2012〜2014年に国立感染症研究所に届け出があった患者712人のうち、209人(29%)が死亡し、そのほとんどが3日以内に死亡しています。その多くは男性が70代、女性は60〜80歳代で、年齢が上がるにつれて死亡率が高まります。感染経路が明確でない症例が多く、予防対策は手洗いしかありません。

◆(2)ビブリオ・バルニフィカス
 ビブリオ・バルニフィカスも人喰いバクテリアと呼ばれています。この菌による感染症も数時間から数日で手足が壊死し、致死率は70%です。
 日本では1978年以降100例の報告があります。最北は秋田県で、東京が9人、京都や大阪で10人、熊本2人、福岡で1人の報告例があります。静岡県では、肝臓疾患を持つ男性(72歳)が手足の壊死を起こすビブリオ・バルニフィカス菌による感染症で急激な発熱を起こして死亡しました。この菌は生の魚介類、生カキなどに多く含まれています。夏場に汚染された生の魚介類を食べて感染することが多く、傷口からも感染します。特に、肝臓機能が低下している人や慢性疾患のある人は重症化します。この菌は、塩分濃度が1%ほどになると急激に増殖します。通常、海水の塩分濃度は3%前後ですが、大雨などで河川から大量の水が流れ込んで塩分濃度が下がったり、海水温が上がった場合には増殖します。
 大阪大学歯学部では劇症型のA群溶血性連鎖球菌がインフルエンザウイルスと同時に感染すると致死率が一気に上がることをマウス実験で証明しました。インフルエンザ、A群溶血性連鎖球菌ともに単独感染では致死率10%以下でしたが、2つが併用感染すると致死率90%以上になったとのことです。
 以上のように、人喰いバクテリアの感染症が日本各地で増えています。高齢者や慢性疾患のある人は特に注意が必要であり、感染が疑われる時は早期に医師の治療を受けましょう。

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