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VOL.231『誤嚥性肺炎を防ごう』 [生活]

◆口腔ケアが重要
 日本では急激な高齢化が進む中、食事中の嚥下障害(食べ物や飲み物を飲み込めない)、筋肉量の減少、運動器症候群(ロコモティブシンドローム)、虚弱、うつ病、認知症などを予防することが求められています。特に、食べることや話すことに直結している口腔や呼吸器の病気の予防が注目されています。
 口腔を専門とする病院では歯科衛生士による毎日の口腔ケア観察が行われ、高齢者の健康維持を考える上で重要となっており、歯科衛生士の需要も高まっています。そのため、さまざまな理由で現場を離れた人が復職できるように、研修するプログラムも進んできており、所定の研修を終了すれば修了証が発行され、復職できるようになりました。

◆誤嚥性肺炎の原因
 高齢者の健康を妨げる要因の一つに誤嚥性肺炎があります。今日、日本では死因の1位がガン、2位は心血管性疾患、3位が肺炎です。肺炎で亡くなる人の96%以上が65歳以上で、そのうちの70%が誤嚥性肺炎です。この誤嚥性肺炎を予防することができれば、90%が助かるので寿命を延ばすことができます。
 誤嚥性肺炎は、食べ物や飲み物が誤って気管に入ることで起こると考えられてきましたが、食べ物や飲み物が原因となるのは30%ほどと少なく、残りの70%は就寝中気づかないうちに唾液が気管に流れ込み、唾液中のウイルスや細菌によって肺炎になることが分かりました。健康であれば食べ物や飲み物・唾液は気管に入りそうになっても、むせることで防げます。しかし、高齢者では加齢や入院生活などのせいで筋力や体力が低下し、飲み込む力も弱ってきます。加えて咳反射(喉に異物が入ると瞬時に咳が出て異物の侵入を防ぐ)や、ものを飲み込む際の嚥下反射(ものを飲み込む運動)が悪化するため、食べ物や飲み物・唾液を誤嚥するリスクが高まります。さらに免疫力が低下している状態で誤嚥によって肺の奥に入ったウイルスや細菌が繁殖して肺炎になる、これが誤嚥性肺炎です。
 高齢になると誤嚥するリスクが増すといいますが、40歳を超える頃から誤嚥する人が増えてきます。これは嚥下反射の低下が考えられますが、目立った症状が現れないことから原因は不明でした。しかし、最近になって脳梗塞との関係が指摘されるようになりました。脳梗塞の1つであるラクナ脳梗塞(小さな脳梗塞、脳内の毛細血管が詰まる)によることが分かってきたのです。脳梗塞の原因は血管壁の動脈硬化です。動脈硬化が原因の高血圧症の人にこのラクナ脳梗塞が多く見られ、喫煙量の多い人や塩分過剰摂取の人なども30歳を超える頃から徐々にラクナ脳梗塞が進行します。症状は全くないので気づきませんが、ラクナ脳梗塞により脳の小梗塞の箇所が増えてくると、嚥下反射が徐々に低下してきます。若いうちには誤嚥性肺炎にはなりませんが、嘔吐する機会が増えてくると嚥下反射が低下してきたシグナルなので気をつけましょう。

◆予防するために
 高齢者の寿命は近年になって10年ほど延びています。ですから30歳代の若い頃から高血圧や動脈硬化を進行させるリスクを減らすことが大切です。口腔内を常に清潔に保つことも誤嚥性肺炎を防ぐ方法の一つです。また、常に口の中に溜まった唾液を飲み込む練習を習慣化することも必要です。唾液をなかなか飲み込めない人は、水をチビチビ飲むことを習慣にするのも有効です。
 また、家の中にばかりいないで外に出て、散歩程度の適度な運動をすることは、足の筋肉を鍛えることができます。ふくらはぎは第2の心臓とも呼ばれているので、散歩は誤嚥性肺炎の予防には最適です。その際、歩きながら水を飲むのも効果があります。天気が良い日に早朝に外に出て新鮮な空気を繰り返し吸い、正しい呼吸法を習慣にするのも誤嚥性肺炎の予防につながります。

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VOL.230『生命活動を活発にするタンパク質』 [体]

◆タンパク質とは
 タンパク質はカラダの主成分で体重の20%を占め、水の60〜70%に次いで多く含まれます。タンパク質は皮膚や筋肉に存在するコラーゲンやアクチンのようにカラダを構成するものや血糖値の調節などに関与するインスリンとして働くもの、体内の化学反応を助ける酵素として働くものがあります。また、鉄を運ぶ血液中のヘモグロビンのように物質の輸送に関わるものや、抗体のようにカラダの防御機構に関与するものなど、さまざまな特徴や役割を持つのがタンパク質です。
 体内に異常なタンパク質が蓄積したり、タンパク質の機能が異常になると病気の原因となり、老化が進みます。そこで、タンパク質がどのように酸化障害されるのか検証すると、その大きな要因は活性酸素であることが分かります。呼吸で吸い込んだ酸素のうちの2〜3%が反応性の高い活性酸素に変化します。細胞内のミトコンドリアの主な機能はエネルギー(ATP)を作ることで、そのATPが生産されるときに活性酸素が生じます。新陳代謝や虚血時にも活性酸素は発生します。また、ウイルスに感染した際の生体防御としても活性酸素が生産されます。紫外線や放射線照射、精神的ストレスの状態でも活性酸素が発生します。

◆活性酸素の影響
 通常、発生した活性酸素は体内のカタラーゼやスーパーオキシド・ジムスターゼ(SOD)の酵素によって消去されますが、活性酸素の量が異常に多くなると体内では消去しきれなくなります。すると、過剰な活性酸素は周囲の細胞内に入り込みDNAを損傷し、アミノ酸配列を切断し、タンパク質を酸化し、細胞機能を低下させる原因となります。その結果が血管の動脈硬化による脳卒中や心疾患、パーキンソン病、アルツハイマー病などの神経系疾患、糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満などの生活習慣病、ガンや老化を引き起こします。
 タンパク質のシステインやメチオニンなどイオウを含むアミノ酸は最も酸化を受けやすくなります。カモジュリンは、脳の機能を維持する役割を果たすカルシウムと結合するタンパク質ですが、加齢に伴って酸化されやすいので脳機能低下の原因となります。
 また、タンパク質のリシン、アルギニン、プロリン、トレオニンなどのアミノ酸は活性酸素の影響を受けやすく、酸化されると老化の原因として、皮膚ではシワ・シミ・たるみ・くすみとなり、内臓や脳では機能低下を引き起こします。さらに、加齢とともに活性酸素の酸化障害を受けるタンパク質は増加し、酸化を修復する酵素量の低下や、タンパク質の代謝機能の低下などによって酸化ストレスを受けた異常なタンパク質の蓄積が亢進します。
 過剰な活性酸素を消去する効果があるのは野菜や果物に含まれる抗酸化物質として知られているビタミン類、カロテン、ポリフェノールに加えてカルシウムやマグネシウム、ケイ素、鉄などのミネラル成分です。

◆分岐鎖アミノ酸を摂ろう
 健康を維持して病気を予防するためには病気の発症や進行に関わるタンパク質が発現しないようにします。つまり、未病(病気ではないが放置すると病気になることが予想される状態)の予防や不健康状態の改善が結果的に病気の予防に役立ちます。
 タンパク質を構成する20種類のアミノ酸のうち、9種類のアミノ酸は体内で合成できない必須アミノ酸で、食物やサプリメントから摂取する必要があります。特に分岐鎖アミノ酸(バリン・ロイシン・イソロイシン)が不足すると元気が出ません。分岐鎖アミノ酸は筋肉量を増やし、カルシウムの吸収も助けるので骨形成に効果があり、肥満の予防や運動不足の解消につながるので毎日の摂取を習慣づけたいものです。
 タンパク質の体内での働きを知ることでタンパク質がいかにして病気を予防しているかを知ることができます。体内では水の次に多いのがタンパク質です。そのタンパク質を構成する必須アミノ酸、特に分岐鎖アミノ酸を積極的に摂取しましょう。

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VOL.229『骨粗鬆症を予防して健康寿命を延ばす』 [体]

◆高齢化とQOLの低下
 日本は高齢化が加速しており、骨量が減少して骨がスカスカで脆くなる骨粗鬆症が自覚症状がないまま進行し、気づいたら骨折をしているという人が増えています。骨折は要介護や寝たきりの原因となり、QOL(生活の質)低下につながります。
 骨は常に破骨細胞が骨を壊し、骨芽細胞が新しい骨を形成するという新陳代謝を繰り返しています。これを骨の代謝回転と呼びます。成長期では骨芽細胞が破骨細胞の3倍以上の割合で骨を形成します。逆に閉経後の女性では破骨細胞が3倍以上の割合で骨を吸収し、壊します。骨の形成と吸収のバランス(カップリングという)を調整しているのがエストロゲンという女性ホルモンです。閉経によってエストロゲン分泌が減少すると、骨が吸収される速度が速まり、骨の形成が追いつかないため骨が脆くなります。

◆骨粗鬆症の怖さ
 骨粗鬆症では骨量と骨密度が減少し、骨に鬆(す)が入ってスカスカ状態になります。するとほんのわずかな衝撃でも骨折を起こします。特に、高齢者が太ももの付け根の大腿骨近位部を骨折すると、寝たきりや要介護の原因となります。骨粗鬆症は女性に多く、更年期以降に急激に増えます。
 骨粗鬆症の危険因子は加齢と閉経によるホルモン低下の他に、ダイエットによる栄養不足や飲酒、喫煙、運動不足などの生活習慣や、長期のステロイド剤使用による慢性疾患があります。女性では60代で5人に1人、70代で3人に1人、75歳以上では2人に1人の割合で骨粗鬆症となります。男性でも70代で5人に1人の割合となり、骨粗鬆症患者は全国で1300万人以上と推計され増加傾向にあります。ほとんど自覚症状がなく、背骨が体の重さで潰れる圧迫骨折となり、身長が2〜3cm低くなります。病院で問診を受け、骨密度検査や骨吸収と骨形成のバランスを測る骨代謝マーカー検査、胸椎や腰椎の骨折や変形、X線検査によって骨粗鬆症かどうかの診断ができます。
 通常、骨量は20〜30歳ごろをピークに徐々に減少していきます。20〜40歳までの平均骨量が若年成人の平均値と定められており、平均骨量の20〜30%減少までは正常域とされます。骨量の減少が30%以上になると骨粗鬆症と診断されます。20〜30代に激しい運動していた女性はエストロゲン分泌が急激に低下するため、骨粗鬆症による疲労骨折を起こしやすいので注意が必要です。
 治療は、食事の栄養バランス・適度な運動の習慣・薬物治療が基本となります。服薬回数は程度によって1日1回から月1回、6ヶ月から1年に1回などさまざまです。
 厚生労働省によれば2016年の日本人の平均寿命は男性81歳、女性が87歳です。一方、内閣府の高齢社会白書では自立して生活できる健康寿命は男性が71歳、女性は74歳で、平均寿命と健康寿命の間には10歳前後の差があります。その大きな要因が骨粗鬆症による骨折です。要介護の原因の1位は認知症、2位が脳血管障害、3位が高齢による骨折・転倒でその背景には骨粗鬆症があります。

◆予防と治療
 骨粗鬆症の予防や治療の基本は栄養素です。つまり、骨の主成分となるカルシウム・マグネシウム・ケイ素などのミネラル成分や、骨の代謝回転に必要なタンパク質、ビタミンDや納豆に多く含まれるビタミンKなどを積極的に摂取することです。さらに、散歩程度の適度な運動習慣や日光浴も効果的です。日光浴をすることでビタミンDが形成されます。高齢者は骨に体重の負荷がかかるので激しい運動で筋肉を鍛えることは避けましょう。動脈硬化が進んで血管が切れ、出血する確率も増します。むしろ、転倒防止の方が重要です。
 最近、WHO(世界保健機関)が開発した骨折リスク評価法では、40歳以上で年齢や性別、骨折の質問に対してインターネットで答えると、10年以内の骨折の確率が算出されます。このような方法を活用して自分の骨の状態を確認してはどうですか?

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VOL.228『細胞間の情報交換が生命維持に関与する』 [体]

◆コミュニケーションの取り方
 ヒトは古代から情報交換を行って生き延びてきました。文字のないインカ帝国では紐にコヨリをつけて人口を把握していたそうです。指を折って数える代わりに紐に結び目を作り、区切りの良い数になると、新しく色の違う紐を結ぶことで間違いを減らしていました。この方法なら言葉や文字が無くてもみんなが数を共有できました。他の民族と突然会話する羽目になった時は、身振りや手振り、擬音や目つきで分かり合います。今日、世界の人口は70億人を超え、言語は6000種類にも及びます。
 機能が異なる200種類以上の体内の細胞は、内外からの刺激に対してバラバラに反応するのではなく、規則正しく一貫して働いています。細胞は横の繋がりばかりでなく、時間と空間との縦の流れにおいても統一した自己を維持します。つまり、自分以外の物質(病原体や異物など)が体内に入ってくると、全てを非自己と判断して免疫機能(白血球)が攻撃・排除することで病気にならないようにしています。

◆体内の情報伝達
 自分は自分ですが、身体的には昨日の自分と今日の自分とは違っています。つまり自分という存在は、変化しつつも心やカラダは統一性を保っているのです。その統一性は細胞同士が互いに情報交換しているからこそ成り立ちます。カラダの内部では情報伝達物質であるタンパク質が言葉の代わりに行き交いカラダをうまく調節しています。目も耳もない細胞がどのようにして別の細胞に情報を伝えるのか、そこには言葉を使いこなすシステムがあります。ある細胞がタンパク質をあるタイミングで分泌して近くの細胞に働きかける、また、あるタンパク質が血流を介して遠くの細胞にまで到達し働くなど。さらに栄養素や酸素、酵素、化学伝達物質などの情報が神経繊維に伝わり、電気信号となって別の神経細胞に届く、このような情報伝達が言葉となって生命維持の複雑な作業工程や高度な分業作業を遺伝子の設計図によってスムーズに進めていきます。そしてこれらは免疫機能の防御システムや神経伝達物質のネットワークシステムとなり、生命が統一された状態で維持されます。
 脳内には1000億個の神経細胞が密集し、それが1本の神経繊維となり、他の神経繊維と1000〜10000箇所のシナプスで結合しています。この膨大な数のシナプスの神経伝達活動によって情報伝達が行われるので、日々豊かな人生を送ることができます。神経ネットワークを形成することで情緒という心が他人を共感させることができ、心が自分の遺伝子を動かして免疫機能に影響を与え、カラダの防御システムが働きます。意識を強くする感覚は、直感・見る・聞く・嗅ぐ・味わう・想うで、気づかぬうちに内部から発せられます。これらも言葉ではないカラダの情報システムです。
 ヒトは仕事をして普通に暮らします。誰かを恋しく想ったり、家族を愛したり、些細な出来事に頭を悩ませ、突然の不運を呪い、病気や感染症を恐れ、健康維持を願います。日常生活の中で、寝ている時も、目が覚めている時も、意識がある時もない時も、カラダの中で細胞同士が言葉(情報交換)を交わすことで、カラダの仕組みは維持され、生命が維持されているのです。何事もなかったように毎日を過ごし、そのように時は流れていきます。

◆情報交換が維持された証
 カラダの細胞は内部の遺伝子プログラムに従って順序よく働いています。これは人類の進化の過程において遺伝子に組み込まれ、今日まで生殖行動によって優秀な遺伝子を継承し、存在してきた結果です。途中で突然変異が起こり、異常な遺伝子になっていれば死に絶えてしまっていたはずです。今ある存在は細胞と細胞との間の規則正しい情報交換によって遺伝子が維持された証です。その大きな役割を担うのがカルシウムやカリウムなどのミネラル成分です。これらミネラルがなければ情報は伝わりません。そして、細胞が老化し、壊死したた時、ヒトは死に至ります。細胞の情報交換は死ぬまでずっと続くのです。

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VOL.227『美味しい水・健康に良い水』 [水]

◆日本の水
 日本は自然が豊かで水量も豊富です。欧米では水道水を安易に飲むのは危険とされていますが、日本の水道水は安全で美味しいというのが常識でした。ですから蛇口をひねれば出てくる水を当然のように飲んでいました。
 しかし、最近ではグルメ志向や健康志向の高まりから、水道水をそのまま飲む人は減っているように思われます。実際、水道水は安全性を高めるため塩素消毒されており、そのため多少匂いもします。食器洗いや洗濯、風呂の水などに水道水を使っても、飲料水として使うことは減っています。

◆水道水の消毒
 アメリカでは1992年以降、水道水に汚染物質がl混入していることが問題となり、その後はミネラルウォーターが飲まれています。日本でも工業廃水や家庭排水などが河川に流れ込むことによる水質汚染が進み、それを浄化するための消毒剤の量も増えています。通常、日本で消毒剤として使われるのは塩素で、細菌などの病原微生物を殺すのに非常に強い効力を発揮します。しかし、同時に別の有害物質も作り出します。例えば、塩素と水中のアンモニアが結合するとクロラミンという物質ができてカルキ臭を放ちます。これが水道水をまずいと感じさせる理由の一つです。また、水道管の末端まで安全を保持し、赤サビの発生を防ぐためにメタリン酸ソーダが入れられます。
 1957年の水道法により、塩素消毒は義務化されました。現在、水道水に投入されている塩素の量は他の国と比べても多い方です。WHOが定めたEU各国の水道水の大腸菌基準は100ml中100個の検出が5回以内であれば合格とされています。日本では1回でも検出されれば即アウトで、多くの塩素が投入されます。高濃度の塩素は皮膚や粘膜に障害を与えます。塩素は有機物と反応し、発ガン性物質トリハロメタンが発生します。トリハロメタンは流産や死産との因果関係も指摘されています。
 1945年アメリカで、水に含まれる硝酸性窒素がヘモグロビンをメトヘモグロビンに変化させ、酸素が運搬できず呼吸困難を起こすブルーベビー症候群が問題となりました。日本でも1950年代以降、硝酸性窒素が原因で酸素欠乏状態になる症例の報告があります。
 EU諸国では塩素を消毒剤として使用する代わりにオゾン処理した浄水が使われています。オゾン処理とは、強い酸化力や殺菌力を持つオゾンを用いてカビ臭の除去や消毒をすることです。近年、東京全域でもこのオゾンを使用した高度浄水処理が導入され、水道局は水道水をペットボトルに入れ、東京水として販売し安全性をアピールしています。

◆飲料水は、選び作る時代へ
 しかし現代は、安全性に加えて健康や美容・味の良さといった質の向上を人々は求めています。2001年の調査でも水道水を飲むという人は50%以下で、多くの人がミネラルウォーターや浄水器を使用しています。1960年代から登場した浄水器は簡易なものから、機能水を作るものまで多種多様です。2002年からは家庭用品質表示法が適用され、品質や性能を正しく表示することが義務づけられました。
 その中で、塩素やトリハロメタン、硝酸性窒素などの有害物質を取り除く機能を持ち、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分を放出して弱アルカリ性水にしているものがあります。カルシウムやマグネシウムは緑茶の成分であるカテキンと結合すると味わいが深まります。日本の自然水のほとんどはカルシウムやマグネシウムの量が少ない軟水で、日本人は長くこの水に接しているので軟水を美味しく感じます。ですが、カラダの健康維持に効果があって美味しい水は、ミネラル成分を豊富に含んだ弱アルカリ性水です。世界的にも有名な大阪大学名誉教授・橋本奨氏(故人)は健康に良い水と美味しい水の条件としてカルシウム・マグネシウム・ケイ素などのミネラル成分を多く含む水を挙げています。
 日本の自然水も汚染が進んでいます。安全性に優れ、美味しい水は、選ばれ作られる時代が来たようです。

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VOL.226『肥満対策となる新たな分化誘導因子の発見』 [体]

◆肥満対策の朗報
 脳梗塞や心筋梗塞につながるメタボリックシンドローム:内臓脂肪症候群、通称メタボや肥満症の予防または抑制には、食事の減量や運動などで生活習慣を改善することが基本とされていますが、それを長期間継続することは極めて難しいことです。
 2017年9月、東京大学の研究グループはエネルギーを消費してくれる細胞を薬で増量し、活性化するという新たな治療法を発見し、報告しました。かなりの朗報です。

◆エネルギー消費促進を誘導する因子
 メタボや肥満の対策にはエネルギー摂取量を抑制することと、摂取したエネルギーの消費を促進するという2つの方法があります。そこで、治療を行う上で、脂肪治療法を使って減量させる手術などを行うことで摂取量の抑制を行ってきました。ところが、食欲は記憶として定着しているため、脳内の食欲中枢に作用して食欲を抑制する肥満治療薬では、うつ病や自殺のリスクが生じるなどの副作用があり、問題となっていました。また、欧米で多く実施されている小腸の一部を切除し付け替えることで消化吸収を抑える減量手術は効果が確認されていますが、カラダへの負担が大きいのが問題でした。それらを解決すべく、東京大学・糖尿病代謝内科では、脂肪を蓄積させずに燃やす方向に働く褐色脂肪細胞を増殖させ、この細胞を活性化させることでエネルギー消費を促進し、減量する方法の研究を続けてきました。
 脂肪細胞には、エネルギーの貯蔵庫として知られる白色脂肪細胞の他に、寒冷下で体温を保つために熱を作り出しエネルギーを活発に消費する褐色脂肪細胞があります。褐色脂肪細胞は、ヒトでは新生児の頃にしか存在しないと思われていました。ところが最近になって、成人にも首や肩甲骨・鎖骨・腎臓の周囲に存在することが確認されたのです。この褐色脂肪細胞には、筋肉の元となる筋芽細胞が分化し、発育してできるという特殊性があるので、筋芽細胞を利用しようと考えましたが、筋芽細胞は通常、筋細胞に直ちに分化してしまうため褐色脂肪細胞にはなりません。そこで褐色脂肪細胞に分化するように誘導する因子の探索が世界中で研究されるようになりました。研究が進む中、東京大学のグループはマウスのDNA解析からNFIAと呼ばれる新たな誘導遺伝子を発見しました。NFIA遺伝子が欠損したマウスは褐色脂肪細胞の遺伝子プログラムに大きな障害が起きることを突き止めたのです。過去にはPRDM16と呼ばれる誘導遺伝子が見つかっていましたが、PRDM16遺伝子だけでは十分に褐色脂肪細胞を誘導することができませんでした。そこで世界中で褐色脂肪細胞を誘導するための2つ目の遺伝因子の発見が待たれていました。
 脂肪細胞といえば、通常白色脂肪細胞のことを指します。しかし白色脂肪細胞の中に極めて少量で低い能力ではありますが、熱を作り出し、エネルギー消費を行う性質を持つベージュ細胞と呼ばれるものがあることが分かりました。そこで、脂肪細胞になる前の細胞にNFIA因子を導入することで白色脂肪細胞でも褐色遺伝子のプログラムを活性化できることを突き止めたのです。つまり、NFIA因子を導入することでベージュ細胞を作ることを可能にしたのです。

◆肥満対策の切り札
 NFIA因子の発見の報告は、イギリスの科学誌『ネイチャー・セル・バイオロジー』の8月15日付オンライン版に掲載され、国際的にも反響を呼んでいます。10年以内にはNFIA因子(遺伝子)の量を増量し、褐色脂肪細胞を活性化させる飲み薬を開発したいと考えられています。
 NFIA遺伝子には筋肉を増やす作用がないので、体力を増進し、維持するためには運動することが重要であることには変わりありません。肥満防止には運動は不可欠です。しかし、エネルギー消費細胞であるNFIA遺伝子は、肥満対策の切り札となる可能性を秘めています。薬の開発が期待される話題です。

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VOL.225『古代の人も疫病を予防していた』

◆古代の疫病
 古代の人は、清潔な身体に汚らわしいものが取り付いた時に病(やまい)が起こると考えていました。古代人はこのけがれ(病)をまじないによって取り去ろうとしました。このまじないを担当したのが呪術師です。呪術師は禊(みそぎ)やお祓いによって病家のけがれを取り除き病根を断ち去りました。そのため呪術師は強い権力を持っていました。ある家に死者が出ると、10日余り喪に服した後、水浴びと身体を洗い清める禊を行うことでけがれをとります。人々は病をけがれであると考え、白いものにはけがれがないので白布や白砂を尊びました。また、疾病は神意によって起こるのだと解釈していました。
 古来、日本の疾病は大陸からもたらされました。例えば、もがさ(痘瘡・天然痘)はインド北部で発生し、中国から朝鮮半島へと侵入し、九州に初めて上陸したのは552年です。その後、3年間猛威をふるい、朝廷にまで伝播し、朝廷の権力者のほとんどが死に絶えました(続日本記より)。天然痘ウイルスは特に処女地で猛威をふるうという習性を持っています。インカ帝国は、スペイン兵士300人余りが持ち込んだ天然痘によって、免疫のなかったインカ帝国の兵士が戦う間もなく死亡したため滅亡したと言われています。1384年から4年間ヨーロッパで大流行したペストでは2500万人が死亡しました。また、1918年から1923年に大流行したスペイン風邪は全世界で5000万人が死亡し、日本でも25万7000人が死亡しました。ひとたび疫病が大流行すると社会の秩序は破壊されてしまいます。

◆古代の予防法
 古事記によれば流行病は疫病(えやみ)、疫の病(えのやまい)と表記され、奈良時代には麻疹(はしか)や痘瘡(天然痘)が大流行したとあります。麻疹や痘瘡の感染力は強力で未流行地帯に侵入するやその激烈さは想像を絶するほどです。日本では621年、推古天皇の頃、疫病(はしか)が猛威をふるい622年には聖徳太子も高熱を発して死亡しました。
 日本疫病史によると、6世紀頃には夏に疫病による死者が出た家では、火酒などを用いてハエや蚊を駆除して掃除をし、それ以降の疫病を免れたと書いてあります。当時はハエや蚊の駆除が疫病予防の基本だったようです。また、疫病に罹った者は人家から遠く離れた場所に送るという風習もありました。病人を隔離し、健康な人に近づけないやり方で、疫病の蔓延を防ぐようにしていたのです。
 さらに、疫病を予防するために室内を燻蒸することもありました。疫病が侵入しないように麻黄・甘草・草烏頭・芍薬などの薬種や薬草を室内で燻して邪気を撤退させる方法です。当時もこのような消毒に似た概念があったようです。
 奈良時代以前には薬を使って疫病を予防する方法として大黄・烏頭・桔梗などの薬種を酒に混ぜて飲み、病を防ぐ屠蘇(とそ)酒がありました。この方法が朝廷に採用され、江戸時代には京都から将軍家に屠蘇を献ずる儀式が入り、それが元旦に屠蘇を飲む風習となりました。こうして疫病を予防する習わしが一般の人々にまで浸透し、現在も続いているのです。

◆疫病との長い戦い
 古代に疫病が流行すると人々の免疫力は一気に衰え、病気に対して無防備になりました。それでもウイルスや細菌に感染しながら生き残った人々は、免疫を獲得しました。そしてその後10〜20年間はその地域の住民は疫病にかかりません。新しい世代が育ち、別の地域から疫病が侵入してくると再び大流行し、新しい世代の住民が疫病で死滅する。このような悪循環が世代ごとに繰り返されてきました。現在、日本では痘瘡(天然痘)は撲滅されましたが、地球上に人類が存在する限り、全く新しいウイルスとの戦いは今後も続いていきます。古代の人々が考えた知恵と経験に基づき、現代の人々も疫病を予防する新たな予防法を考えなければならないでしょう。

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VOL.224『肥満防止の行動がストレスに』 [体]

◆飢餓状態が長かった人類
 ヒトの祖先が地球上に出現してから700万年が経過したと言われています。その間のほとんどをヒトは飢餓状態で過ごしてきました。ヒトには生きていく上で必要なエネルギー量があります。カラダを動かし、体温を維持して、基本的な代謝を円滑にするための熱量を基礎代謝と呼び、成人では1日あたり2000Kcalです。この範囲内であれば摂取した食物は燃やされ、エネルギーとして消費されるので、体重は増えません。人類の歴史の中で長く続いた飢餓状態を生き延びることができたのは、細胞内の遺伝子にこのシステムが組み込まれたからなのです。そこで、大量の食料が得られた際にはそれをできるだけ取り込み貯蔵するように、カラダの仕組みが整えられました。
 しかし、この数十年の間に人類を取り巻く食料事情は一変し、日本を含め経済発展を遂げた国々では飽食の時代となりました。ところがヒトの遺伝子や基礎代謝量のメカニズムは飢餓当時のままで、これを組み替えるには数十年では短か過ぎるのです。ヒトの遺伝子や代謝システムは飽食の時代に遭遇することがなかったためこの変化は想定外で、連日のように基礎代謝量以上のエネルギーが貯め込まれ、内蔵型脂肪や皮下型脂肪となって蓄積します。活動量の低下や便利な機械化によって全体的に基礎代謝量も減少しました。その結果、大人から子供にまで腹回りに脂肪の蓄積が進み、ダイエットがもてはやされるようになりました。

◆ドカ食いとチビチビ型
 同じように過剰なカロリー摂取であっても、一挙にたくさん食べるドカ食いと、食べる回数は多いけれど1回の量は少ないチビチビ型ではどちらの方が太りやすいでしょう?1000kcalの過剰食を一挙に食べると、体脂肪は100g増えます。一方、同量を10回に分けて食べると、脂肪の蓄積量は数的には変わりませんが、実際の生命現象では太りにくいのです。1回のカロリーを10分の1にすると体脂肪は2gで済みます。朝から何も食べていなければ、500kcalの甘いケーキを食べても基礎代謝の範囲内の熱量として燃やされ、エネルギー源となるので太りません。しかし、朝・昼・晩と食事をして食後に甘いケーキを食べれば、その余剰エネルギーは全て脂肪となり体重は増加します。この余剰カロリーを運動で無理やり燃やすには想像以上の運動量が必要となり、かなりの困難を伴います。例えば、500kcalを燃焼するためには水泳で1時間、マラソンで10km走る必要があります。それゆえ運動によるダイエット法はなかなか続かないのです。
 体脂肪は余分なエネルギー(ブドウ糖)を毛細血管から受け取り、脂肪細胞内に蓄えられた物です。通常、ブドウ糖は血液に溶け込んで各組織の細胞に取り込まれ、燃やされてエネルギーとなります。このエネルギーが細胞の代謝の原動力となり、体温の維持などに使われます。空腹感とはエネルギーの消費が進み、血糖値が低下した時に感じる感覚です。その時過剰に食事をすると、必要以上のブドウ糖が血液中に溶け込み、脂肪細胞が大量の脂肪を取り込みます。つまり、余分なカロリー摂取は体重増加につながるということです。

◆たまには甘いケーキも食べましょう
 人類は長い飢餓状態の中で進化してきたので、満腹中枢の規制が極めて弱いため余分に食べてしまい、太ってしまうのです。しかし、フルコースの料理のように、ゆっくり時間をかけて少しずつチビチビ食べることは賢い食べ方です。血液中のブドウ糖濃度が低下すると、脂肪細胞はそれ以上ブドウ糖を取り込みません。食物摂取量が少ない状態が続くと、一時的に過剰に摂取しても脂肪蓄積はせず体重は増えません。つまり、規則正しく、少ない量で、バランスの良い食事内容が続けば脂肪は蓄積せず、たまに甘いケーキなどの余剰カロリー摂取があっても脂肪量の増加にはなりません。日頃からダイエットで悩んでいる人はそれがストレスとなり、結果的に体重が増えてしまうことがあるようです。食欲の秋、たまにはストレス防止のために、甘いものを食べてみてはどうですか。

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VOL.223『食物繊維摂取の重要性』 [食べ物]

◆サプレッサーT細胞
 免疫細胞は病原体の侵入を防ぐとともに病原体と闘って炎症を引き起こします。その免疫細胞には、キラーT細胞(体内に侵入した毒素や病原体を攻撃・排除・殺す)やヘルパーT細胞(キラーT細胞に攻撃の指令を出す細胞で指令官の役割を持つ)、サプレッサーT細胞(キラーT細胞の攻撃を抑制する役割を持つ)があり、炎症の度合いを見てバランスよく働いています。具体的には、攻撃的なキラーT細胞が多く働き、制御するサプレッサーT細胞が少なければ炎症が激しくなり、その逆であれば炎症は弱まります。
 炎症の状態を和らげるにはサプレッサーT細胞を増やすことで、その働きをするのが短鎖脂肪酸です。短鎖脂肪酸とは、酢酸・酪酸・プロピオン酸などの有機脂肪酸の総称で、その中の一つ、酪酸が多いとサプレッサーT細胞へと成長分化する細胞が増えます。短鎖脂肪酸は食物繊維やオリゴ糖の豊富な食事によって生成量を増やすことができます。

◆短鎖脂肪酸の役割
 短鎖脂肪酸はアレルギーの予防や改善にも役立ちます。2013年、理化学研究所は動物実験で、食物繊維を少なく与えたマウスと多く与えたマウスを比較した結果、多く与えたマウスの方が酪酸の生産量を増やし、サプレッサーT細胞の働きが活性化しました。酪酸がサプレッサーT細胞の遺伝子に働いて活性化することが分かったのです。
 その結果を実証しているのがアメリカで文明を避けて昔ながらの生活をする宗教団体「アーミッシュ」の人々です。彼らにはアレルギー疾患がありません。しかも血液検査の結果、サプレッサーT細胞が通常よりも35%以上多いことが分かったのです。アーミッシュの人々は生まれた時から牛やシマウマなどの家畜と共に生活し、車を持たず、電気も使わず、電話もありません。畑を耕す際には牛や馬に農耕具を引かせて、食事は自給自足です。自分たちが畑で育てたものを収穫し調理する、自然と共にある暮らしをしています。このような生活のおかげで彼らの腸内フローラはバランスが良く、短鎖脂肪酸を多量に生産します。
 短鎖脂肪酸は腸粘膜の上皮細胞のエネルギー源となります。上皮細胞には腸壁を保護する粘液を分泌し、水分や栄養素の吸収を助ける働きがあります。上皮細胞がエネルギー不足になると、腸壁のバリア機能が低下し炎症を起こします。短鎖脂肪酸は腸内フローラのバランスを整え、腸粘膜上皮細胞との間隔を塞ぐ方向に働きます。短鎖脂肪酸が減少すると、ウェルシュ菌や大腸菌などの悪玉菌が増え、腸内フローラのバランスが乱れます。すると、腸粘膜上皮細胞間の接合を緩めてしまうゾヌリンというタンパク質が増え、ゾヌリンの分泌量が多くなると、細胞間隙をつなぐ鎖が緩んで腸粘膜上皮細胞の透過性を高めてしまいます。また、セリアック症はグルテン摂取量の増加によりゾヌリン分泌が増し、小腸が損傷する自己免疫疾患です。自己免疫疾患とは自分の正常細胞や組織に対して過剰に反応し、攻撃してしまう免疫異常の病気で、強い炎症症状を示します。この病気の人はわずかなグルテン摂取でも腸の絨毛組織が破壊されて下痢症となる重症なグルテン不耐性になります。
 グルテンは、タンパク質で分解されてアミノ酸となり、腸の上皮細胞から吸収されます。ところが、グルテン含有量が多いとアミノ酸にまで分解されず、タンパク質のままで粘着性が増し、腸粘膜から吸収されなくなります。これがアレルギーの原因ともなります。

◆食物繊維を摂りましょう
 腸内フローラのバランスが乱れると、ゾヌリン分泌量が増え、腸粘膜上皮細胞の間隙が開いて、腸の内容物が血液中に流れ込む異常事態に進展します。
 腸内フローラにとって最高の栄養素は食物繊維で、人類の命の源となって今日に至っています。ところが日本人の食物繊維の摂取量は、かつて1日あたり300gほどであったものが120g以下に著しく減少しています。その結果、1日の糞便量も100g以下となり、排便を毎日しない人も増えています。これがアレルギー疾患やうつ病のなどの病気、炎症疾患に関係しているのです。

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VOL.222『命の基本、カルシウム』 [生命]

◆カルシウムという元素
 カルシウムは地球上で5番目に多く存在する物質です。例えば、砂浜で星の砂をつくるプランクトンやサンゴの硬い殻は炭酸カルシウムからできています。
 脊椎動物の骨や歯を形成する必須微量金属元素の一つがカルシウムです。カルシウムは生体の中でも生命維持に極めて重要な役割を果たしています。地球誕生以来、生命体の祖先は多細胞化した生物が特定の細胞に一定の役割を与え、それらを結合・統合することで高等動物へと進化させました。この細胞同士を結合させる役割を果たしたのがカルシウムなどの微量金属元素です。

◆体内の情報伝達の中心
 本来、カルシウムは細胞にとって猛毒だったので、細胞内にカルシウムが侵入すると、有害な活性酸素が発生、増加し、細胞内のエネルギー源であるATPの反応に影響を与えて細胞を死に導いてしまいます。そこで、カラダは正常細胞内のカルシウム濃度を極めて低く抑えました。一方、細胞外液のカルシウムは細胞内に対して1万倍の濃度にしたのです。このように細胞の内と外で極端な濃度差を持つ物質はカルシウムしかありません。この濃度差をカラダは、細胞を自ら自殺させるアポトーシスと呼ばれる機能の引き金として利用しています。アポトーシスとは、細胞内遺伝子プログラムに書き込まれている細胞の自己死のことです。これは新しい細胞に置き換えるために古くなった細胞を消滅させる役割を持っており、常に新しい組織を維持する働きをします。また、正常細胞がガン細胞に変異した際には、その細胞にアポトーシスを起こさせガン細胞の増殖を抑えます。さらに、ウイルスに感染した細胞にもアポトーシスを起こさせウイルスの増殖を抑えます。このように、カルシウムイオンは細胞内に流入して細胞内濃度を高めることで、細胞を機能不全にしてアポトーシスを起こさせるのです。つまり、カルシウムは不要になった細胞が自殺するスイッチを入れているのです。
 また、すべての細胞はカルシウムによる電気信号によって細胞間の情報交換が可能となります。例えば、筋肉はカルシウムがないと収縮しません。筋肉細胞内にカルシウムが入ってきて結合することによって筋肉は収縮するのです。かつて生命体は海から生まれました。ですからカルシウム・カリウム・ナトリウムなど体内の多くの微量金属原子の組成は海水によく似ています。生物は原子の環境を維持した細胞に守られて、カルシウムやナトリウムなどを細胞間に放出し、一方では安定した電位を使用することで細胞内の情報伝達を発達させました。

◆生命に直結している栄養素
 海から陸に上がった生物には、海水の成分を固めたカルシウムの塊(骨)と、海水成分を運搬する血液が必要でした。カルシウムが豊富な海で生きる魚には副甲状腺がありません。副甲状腺はカルシウムが不足した時にカルシウムを補う内分泌腺で、カルシウム濃度の変化を感知するサンサーです。カルシウムが体内で不足している時に副甲状腺ホルモンが分泌されます。この内分泌液がカルシウムの働きをコントロールしているのです。上陸した両生類には副甲状腺があるため、生物は脂質という水を通さない油の膜に包まれた細胞や骨・血液・副甲状腺・腎臓などを持つことで陸に上がり進化することができたのです。
 このように、カルシウムは生命と直結している栄養素です。陸上では生物は常にカルシム不足の状態です。カルシウムの吸収を助けるのが副甲状腺と腎臓です。摂取するカルシウムは吸収性に優れた炭酸カルシウムでイオン化した状態のものが良いでしょう。太古の昔、生命体として海の中で生活していた頃の遺伝子は、人類へと進化した現在も細胞内に存在しており、その状態のままなのです。

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