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VOL.238『オゾンの効能と危険性』 [健康]

◆ 紫外線から私たちを守るオゾン層
 大気圏は地表から近い順に『対流圏』『成層圏』『中間圏』『熱圏』『外気圏』の5層に分かれており、地球の表面は1気圧の空気に覆われています。空気の成分は、窒素が78%・酸素が21%で他はアルゴン・二酸化炭素・一酸化炭素・ネオン・ヘリウムなどの微量の混合ガスです。そして空気の密度は、地表から標高が上がるにつれて低下し、気圧も下がります。成層圏にはオゾン層があり、このオゾン層が太陽から放たれる紫外線を調節しています。
 南極上空のオゾン層には穴が空いている部分があります。このオゾンホールを世界で最初に発見したのは日本人です。1980年、南極の昭和基地に勤務していた日本人の観測員が南極上空のオゾンが減少しているのを見つけました。当時はまだオゾンホールという名称すらありませんでした。オゾン層のオゾン量が減ってくると、中長波の紫外線が皮膚に炎症を起こし、オゾンがない場所(オゾンホール)からは太陽光のすべての波長域が直接照射されます。なかでも短波長の紫外線は人体への影響が大きく、皮膚ガンの発生率が高まります。
 オゾン層を破壊してオゾンホールを作る物質の代表がフロン(ガス)です。フロンはフッ素と塩素からなる化合物で、オゾン層に入ると塩素が触媒となってオゾンの分解反応が継続的に繰り返されるため、オゾン層が破壊されます。フロンは冷蔵庫やエアコン、各種スプレーなどに大量に使用されていましたが、1987年にモントリオール議定書が採択されて1995年に製造が全廃されました。
 オゾンホールは年々増加し、ブラジルの南端からニュージーランド、オーストラリアの一部にまで拡大しています。紫外線照射の動物実験では発ガン率が急増しました。また、植物の生長を遅らせ、農作物の収穫量を減らします。短波長の紫外線は、無音の殺傷兵器あるいは殺人光線の可能性があります。

◆ 有害なオゾン
 オゾンには強力な酸化力があり、特有の生臭い匂いがする物質で、稲妻や蛍光灯・殺菌灯から発生します。発生したオゾンには活性酸素が混在します。最近の中国の近代化に伴い大陸から偏西風に乗って運ばれてくるオゾンによって、日本周辺のオゾン濃度は上昇しています。これが光化学スモッグの原因となっており、オゾンガスが人体に及ぼす影響が深刻になってきています。ヒトはオゾン濃度50ppmでは1時間で生命が危険な状態になります。現在、致死量のオゾンにさらされていることはありませんが安心はできません。オゾンの人体への影響から許容濃度は0.1ppmとされます。
 オゾンは空気と同じように体内に吸収されます。酸素とともに酸化力の強いオゾンが体内に吸収されると粘膜を酸化し、機能低下を起こすので、呼吸器の障害を起こす可能性があります。また、麻痺や肺浮腫の症状が出たり、眼粘膜の酸化による視力低下も起こります。

◆ 効果を知って上手に利用しよう
 オゾンには優れた殺菌効果があるため、コンビニやスーパーのおにぎり・サンドイッチ・サラダ・カット野菜などにはオゾンが使われています。オゾンは水を電気分解してできます。トイレを無臭にしたり、院内感染を防ぐのにも使われます。また、水の浄化処理にも使用され、プールの水なども再利用できるようにします。オゾンの処理水は養殖場でも使用され、水族館の水が汚れないのもオゾン処理によるものです。
 21世紀になり、人々のライフスタイルも急激に変化して、ますます便利な世の中となり、衛生環境も整備されました。ところが、オゾンの大量使用による環境汚染が進んでいます。オゾンは少量でも効果があるのにもかかわらず、知らず知らずのうちに過剰に使用してしまい、年々オゾン濃度は上昇しています。
 オゾンには活性酸素が含まれており、この活性酸素が人体に害を与えます。オゾンの効果を知るとともに悪影響も知りましょう。

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VOL.237『日本人の超清潔志向をどう思いますか?』 [生活]

◆ ヒトは細菌と共生している
 人類は進化の過程で、細菌やウイルスなどの微生物とともに生きてきました。つまり、多くの病原体と共存してきたのです。その微生物の中には感染症を引き起こすものがいる一方で、カラダの健康を守ってくれるものもいます。
 母親の胎内は無菌状態ですが、出産と同時に乳児は細菌やウイルスに感染します。しかし、感染しても直ちには病気を発症しません。それは乳児が母親から免疫機能を受け継いでいるためで、しばらくはその免疫機能によって発病することはなく、次第に自らも病気に感染しない防御機能を形成していきます。基本的にはカラダの周囲(皮膚・粘膜・腸内)に共生する微生物が免疫力を強化する方向に働いてくれます。

◆ 健康を守るさまざまな常在菌
 第2次世界大戦直後の日本では衛生環境が劣悪だったため、病原体の感染により乳児の多くが死亡しました。栄養状態が悪い上に生活環境が悪化していたので、病原体に感染しての死亡率が最も高かった時代です。
 ところが今日、日本の衛生環境は世界トップクラスで、通常の生活をしている限り命を奪われるような恐ろしい病原微生物に遭遇する機会はほとんどありません。かつて蔓延していた死に直結する恐ろしい感染症は、乳児の時にワクチン接種することでほとんどが防げています。それなのに、毎年のように風邪をひき、食あたりを起こすのは、病原体に対して十分な免疫が自身のカラダに備わっていないからです。小児の病気のほとんどはまだ十分な免疫力が備わっていないのと水分不足から起こります。
 ヒトのカラダに共生し、健康の維持に関与している細菌(常在菌)は100兆個以上ともいわれ、ヒトの細胞数が37兆個といわれることから圧倒的に細菌の方が体内に多く存在していることになります。ヒトの細胞の遺伝情報は11兆個ほどで、細菌の持つ遺伝情報の方がはるかに多いそうです。特に腸内では、ヒトの遺伝情報が2万個なのに対し、腸内細菌は60〜100万個で30倍以上という圧倒的に多くの遺伝子情報を持っています。
 ヒトは細胞の数の約10倍の細菌と共生しています。その細菌を排除する過剰な行為が最近の傾向です。現代日本では、生活環境の中で免疫力を強くする方向に働いているのも細菌なのです。例えば、表皮をおおう皮膚や粘膜は通常、弱酸性に保つことで守られています。そこには外部からの病原体による感染症を防いでくれる常在菌が多く存在しています。これらはヒトに害を与えることはありません。これらの常在菌を無理やり化学合成された薬剤で排除するという行為が間違っているのです。消費者は殺菌効果や薬用効果を期待して商品を購入しますが、これらの合成化学薬剤の長期間の使用は、ヒトの健康に対し、効果より有害性の方が指摘されています。例えば、殺菌効果のある薬剤を使うことで病原菌の耐性を増加させるリスクが高まるとか、ホルモンの働きが阻害されるなどという健康面への影響が懸念されています。トリクロサンという薬剤は殺菌や抗菌の効果があり、薬用石鹸や薬用ハンドソープ・薬用ボディケアソープ・薬用洗顔料など液体抗菌製品の95%以上に含まれている成分です。この成分を含む商品は、病気を引き起こす菌とともに私たちを守っている常在菌も排除してしまいます。
◆ 日本は清潔すぎる?
 今日、日本の若者は極端な超清潔社会を人為的に作り出した環境の中で、生まれた時から生活しています。無数の洗剤に囲まれて暮らす生活が綺麗で衛生的で便利で心地よく、朝からシャンプーやボディローションなど化学物質づけの生活です。また、体毛を極端に嫌い、全身の体毛を除去する、特に男性はヒゲを除毛してツルツル肌にしてしまうそうです。汚らしい男性は女性からモテないのでしょうか?
 超清潔社会は本当に健康的で快適な社会といえるのでしょうか?人類の進化に逆行しているような気がしてなりません。清潔すぎる社会がヒトの健康を害しているかもしれません。

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VOL.236『生活習慣病を予防するミネラル』 [生活]

◆ 食生活が乱れている
 今日、日々のストレスによって食生活が乱れている人が増えています。朝はギリギリまで寝ていて、朝食はコンビニで買ったおにぎりやサンドイッチ、牛乳で済ませ、昼には元気をつけるために豚骨ラーメン大盛りに餃子もつける、夜は疲れているので居酒屋で冷えたビールを飲み、揚げ物や焼肉をお腹いっぱい食べる、そして週末にはアルコールと日頃の栄養不足を補うため肉類を中心にたらふく食べる…このような暴飲暴食が続く中高年の人は多いようです。

◆ 自律神経と生活習慣病
 多少体調が悪くても休めないので無理して出勤するという行動にはストレスが反映されます。つまり、自律神経に変調をきたしているのです。自律神経は24時間休むことなく働いている神経で、生きていくために必要なカラダの機能を無意識のうちに調節しています。自律神経には日中やカラダを動かしている時に活発に働く交感神経と、夜間や安静にしている時に働く副交感神経があります。この交感神経と副交感神経のバランスが乱れることを自律神経の乱れと呼びます。日常生活の中で常にストレスを感じていると、交感神経が優位のままの状態が続き、副交感神経の働きが弱まります。このような自律神経の乱れが続くとカラダの各器官に様々な不調が生じます。その最大のリスクが、高血圧や動脈硬化・糖尿病・高脂血症などのいわゆる生活習慣病で、血管の弾力性が失われます。
 ストレス状態が長期間続くと、副腎からコルチゾールというストレスホルモンが分泌されます。コルチゾールは血糖値を上昇させ、糖尿病を引き起こします。これには毎日の食生活も深く関わっており、アルコールや肉類・乳製品・糖質の摂りすぎは血糖値の上昇を招きます。そのため膵臓からは大量のインスリンというホルモンが分泌され、血糖値を正常に戻して生命は維持されます。この状態が続くとインスリンは多量に分泌されているのに血糖値が低下しない事態となりインスリンを分泌するβ細胞は疲弊してしまいます。これをインスリン抵抗性と呼び、血糖値が異常に上昇した状態となります。これが2型糖尿病です。糖尿病の恐ろしさは合併症で、目の網膜部から出血することで失明する糖尿病網膜症・腎臓での老廃物のろ過機能が低下してしまう糖尿病性腎症、この場合人工透析をしなければ生きられなくなります。また、末梢血液の循環障害で神経障害が起きて足壊疽となると足を切断しなければなりません。そして最後には認知症に移行します。
 日本では高齢化に伴って認知症患者が増加しています。認知症の中で最も多いのがアルツハイマー型認知症で、脳神経細胞にアミロイドβというタンパク質が蓄積して老人斑ができ、脳障害が生じます。通常、65歳以上の高齢者に生じますが、60歳以下で生じる若年性アルツハイマー病の人も増えています。認知症には他に血管性認知症があります。原因は血管障害でアルツハイマーとは異なり、高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病を伴います。認知症を予防するには基本的には30代から食生活や運動習慣を見直すことです。毎食、お腹いっぱいになる満腹感は遺伝子によって記憶されます。満腹感や塩分濃度の高い刺激的な味も記憶されるとやめられなくなります。甘みのある冷たい飲み物も同様です。

◆ ミネラル豊富な水を摂取しましょう
 交感神経が優位に働いていると、心臓の拍動が高まり、全身の筋肉が緊張して血管が収縮し、高血圧が悪化します。これが脳で起これば脳出血や動脈瘤破裂で死に直結します。最近、高血圧の予防としてニガリが注目されています。ニガリの主成分はマグネシウムです。マグネシウムは細胞が健全に代謝活動をする上で不可欠なミネラルです。そしてマグネシウムの摂取不足が生活習慣病である心臓病や高血圧・糖尿病に深く関与することが分かってきました。また、花粉症やアトピー、便秘や下痢の解消に効果があることも分かってきました。さらに料理の美味しさを引き出すことも知られています。マグネシウムにはカリウムやナトリウム(塩分)と結合し、体外に排出する作用もあります。
 誰もが生活習慣病になり得る時代、適度な運動とマグネシウムをはじめとするミネラルを豊富に含む水を摂取することで予防してみてはどうでしょう。

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VOL.235『脳と健康維持の関係』 [脳]

◆ 脳細胞は新しく作られる
 人は加齢とともに疲れがたまるようになり、朝目覚めると十分寝たはずなのに頭がすっきりせず、1日じゅう体が重く感じたりすることがあります。そしてそれを仕方ないと思って生活しています。しかし、年齢を重ねても記憶力に優れている人もいるし、元気で活力にあふれ、若い頃のように行動力がある人もいます。認知症の発症が早い人もいるし、遅い人もいます。最近の脳科学の急速な進歩によって、このような健康状態の違いに脳の働きが関与することが分かってきました。
 1980年代までの脳科学では、脳の神経細胞は再生して生産されることはないと言われていました。脳神経細胞は20代から徐々に減少し、失われた脳神経細胞は元に戻ることはないと。ところが、最近の研究では脳神経細胞が新しく作られることがわかり、脳の容積が増加する現象がMRI(画像診断)でも確認されています。基本的には、脳の機能は加齢とともに低下します。しかし、脳を毎日意識して習慣として使い続ける人は、脳神経細胞が萎縮しても脳の機能は衰えていきません。つまり、40〜50代からの脳の使い方や働き方を含めた生活習慣が後の人生に大きく影響するということなのです。

◆ 脳のトレーニング
 脳の前頭前野には、司令塔として明確に指示を出す場所があります。脳に入ってきた情報を一時的に保存し、他の情報と組み合わせて思考や計算・判断などの作業をします。これを脳の処理能力と言い、この能力は加齢とともに衰えていきます。50歳を超える頃には20〜30代に比べて30%以上低下します。
 また、思考や計算・判断など物事を考えるときに使う機能を作業機能と呼びます。これは短期の記憶として情報を一時的に保存記憶する機能です。記憶は全てが長期記憶に移行するわけではありません。その選別を行っているのが海馬です。海馬はこれまでの人生で得た膨大な情報を大脳皮質に長期記憶として蓄積するかどうかの判断をする役割を持っています。そして海馬の手助けをするのが海馬の近くに位置し、感情をコントロールする役割の扁桃核です。扁桃核が強く刺激されると、海馬は重要な記憶と判断し長期記憶とします。特に、感情を動かし強く刺激する情報は記憶に残ります。ヒトは、脳の司令塔となる前頭前野、記憶の中枢となる海馬、感情をコントロールする扁桃核、これら全てを使ってあらゆる情報を整理します。ですから加齢とともに衰える上に、増加する情報を整理するために脳のトレーニングが必要となります。このトレーニングが認知症の予防にもなり、脳の機能の低下を防ぐ効果を持っています。毎日、意識もせずに生活していると、50歳前後から周囲にも明確に分かるほど衰えてきます。
 健康の維持も同様です。40代になると体内の血液循環が低下し、基礎代謝が急激に落ちてきます。にもかかわらず若い頃と同じ食生活を続けたり、運動をしないでいると、自然に脂肪が蓄積して体重が増加し、中性脂肪が増えて内臓型肥満となります。脂っこい肉類中心の食生活を続ければ血管壁の動脈硬化が進みますが、症状が現れないのでただの疲労と思って放置してしまいがちです。すると50〜60代で2型糖尿病や脳梗塞、脳出血、心筋梗塞を経験する危険性が高くなります。これが脳の機能を急激に低下させます。

◆ 脳を刺激して健康維持を
 脳は、神経細胞同士がシナプスで結ばれて情報ネットワークを形成し、1つの神経細胞には2000以上のシナプスが結合しています。このシナプスの結合数は40〜50代で決まります。シナプス数が減少すれば認知症の方向に進むので、10〜20年後に大きな違いとなります。定年後に急激に人的交流を失う人などは、脳に受ける情報量が極端に減るため記憶力の低下が急激に進みます。
 30〜50代の生き方、食生活のバランスや適度な運動習慣、そして弱アルカリ性でミネラル成分を豊富に含む水をたっぷり摂取することがその後の健康や人生を大きく左右し、認知症の発症を遅らせることにつながります。

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VOL.234『アレルギーによる過敏性腸症候群』 [体]

◆ 増えるアレルギー疾患
 近年、日本ではアレルギー疾患が増えており、その割合は3人に1人と言われます。
 1963年、日本で初めてのスギ花粉アレルギーが栃木県日光市で見つかりました。日光のスギ並木は17世紀前半に2万4000本植えられ、その後300年に渡って存続していますが、それまではスギ花粉アレルギーの報告はありませんでした。それが1963年以降爆発的に増加したのです。日本では1960年代以降、結核や寄生虫の感染は急激に減少しているのに対し、花粉症によるアレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎・気管支喘息は急増しています。

◆ 寄生虫がアレルギーを防いでいた?
 日本人が寄生虫を持っていたのは縄文時代からであるとの報告があります。寄生虫とアレルギーとの関連性について、発展途上国では寄生虫の感染はありますがアレルギーはありません。寄生虫がアレルギー反応を抑制するのです。寄生虫の分泌物や排泄物の中には分子量2万ほどのタンパク質(DiAg)が含まれています。このDiAgは、寄生虫を攻撃する抗体の働きを抑制するだけでなく、アレルギー物質にもカラダが反応しなくなるように作用します。そのため、腸内に寄生虫が生息しているとアレルギー反応は起こらなくなります。ヒトの腸内に住む寄生虫はヒトの腸内でしか生きられません。寄生虫とヒトとの共生関係は
太古の昔から続いています。日本での寄生虫感染率は第二次世界大戦から1950年代にかけては70%以上で、小中学校では検便が義務付けられていました。つまりその時期、日本人のほとんどが寄生虫に感染していたのです。当時、ヒトの糞便は肥料となり、これを利用して野菜を作っていました。寄生虫(回虫)は1日に1〜20万個の卵を産み、糞便中に排泄されます。回虫は土壌中で2〜3週間後に成熟卵となり、野菜の肥料となって再び野菜から腸内に戻ります。現代は水洗トイレの生活環境となりましたので、回虫に感染する機会はありません。当時野菜は生では食べませんでした。回虫の卵は加熱すると死滅するので、回虫の卵が大量に腸内に入ることはなく、ほどよく感染していました。野菜を生で食べるようになったのは、日本人の食事が欧米化してからです。

◆ 腸に優しい食生活を
 最近、有機農法の野菜を好む人が増えています。農薬を全く使わず、糞便を有機肥料として使っているものもあるので、知らず知らずのうちに寄生虫に感染している人も増えてきました。この人たちにアレルギー疾患はみられません。有機野菜食に変えることでアトピー性皮膚炎や花粉症が治った人もいるそうです。つまり、寄生虫に感染したためにアレルギー疾患が改善されたと考えられます。
 今日、食生活が欧米食に変わってきており、若い人にその傾向が顕著です。その結果、腸内の細菌数が減少し、糞便量も減少しました。腸内細菌は腸粘膜の細胞とともに食物の消化吸収や糞便の形成・免疫機能の維持・有害物質の排除・ビタミン類の合成・酵素の合成・腸の粘膜の蠕動運動など、生命活動そのものと言える働きをしています。
 糞便は単純に食べ物のカスではなく、60%が水分、20%が腸内細菌の死骸、15%が腸内粘膜細胞の死骸、そして5%が食べ物のカスなのです。かつて、日本人の糞便量は1日当たり300gほどでしたが、今日、若者では80gほどしかありません。しかも悪玉菌が異常繁殖したかのような非常に強い匂いを放ちます。その理由も食べ物にあります。肉類や乳製品が多く食物繊維を多く含む食品の摂取が不足しているのです。この状態が続くことで起こる病気が食物アレルギー(アレルギー疾患)であり、ガンや脳梗塞、心筋梗塞、糖尿病、うつ病、自閉症、若年性認知症などにつながります。そして、男性では下痢症、女性には便秘が増えています。これらは過敏性腸症候群や各駅停車症候群と呼ばれます。常に吸収されない脂っこいタンパク質が腸内に長く停滞することによって引き起こされる疾患です。タンパク質はアミノ酸に分解されて腸から吸収されますが、腸内に長く停滞すると、大腸粘膜を刺激して大腸ガンの原因にもなります。腸内の過剰なタンパク質がアレルギー反応を起こし、これがアレルギー疾患を増やしているのです。

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VOL.233『重症熱性血小板症候群(SFTS)』 [体]

◆ マダニが媒介する感染症
 近年、マダニが媒介するウイルス感染症(重症熱性血小板症候群:SFTS)が増加しており、イヌからヒトへの感染例も報告されました。SFTSは2011年に中国の研究者が発見したウイルスが原因で起こる感染症です。主にウイルスに感染したマダニに咬まれることで感染し、日本や中国・韓国で患者の報告があります。
 マダニは森林など屋外に生息する大型のダニで、SFTSウイルスを持っているものは5%ほどです。日本国内でヒトへの感染に関わっているマダニは、フタトゲチマダニとタカサゴキララマダニです。患者は2013年に40人、2014年に61人、2015年に60人、そして2017年が85人で内7人が亡くなりました。これまで国内では西日本を中心に315人の発症例があり、60人が死亡、致死率はなんと20%です。

◆ 国内での症例と感染経路
 2017年は日本紅斑熱などダニを媒介とする他の感染症も多く発症し、例年に比べてマダニが多い年でした。ウイルスに感染すると、6〜14日間の潜伏期間を経て、風邪に似た症状が出ます。重症化すると意識障害や言語障害のほか、下血を起こして死に至ることもあります。高齢になるほど重症化するリスクが高まります。
 マダニの多くは春から秋にかけて活動が活発になります。そのためSFTSの発症が多くなるのが5〜8月です。現在、SFTSに対する有効な治療薬やワクチンはなく、発症した場合には対症療法が中心です。国立感染症研究所や医療機関のチームが治療法の臨床研究を進めていますが、まだ有効な治療法は確立されていません。マダニに咬まれないようにするしかないので、野生動物が出没する場所やヤブなどマダニが多く生息しているような場所には入らないようにしましょう。止むを得ず入る場合にはできる限り肌を露出しないようにしましょう。ペットが感染している場合もあるので、ペットには素手で触れないようにし、咬まれないように注意しましょう。動物病院で感染の有無を確認するのも良いでしょう。
 SFTSウイルスはヒトだけでなく、シカやイノシシなどの動物にも感染します。厚生労働省によれば、2016年、西日本の女性が野良ネコに咬まれた後にSFTSを発症し、死亡したとのことです。ネコからヒトへの初めての感染です。同様にSFTSを発症した飼いイヌを介護していた男性がSFTSに感染していたことが報告され、その後回復しましたが、こちらもイヌからヒトへの初めての感染例となりました。ウイルスは唾液や血液、糞便などに含まれるので、SFTSを発症している動物に触れた手で自分の目の粘膜や傷口などに触れると、そこから感染する可能性があります。通常、健康な状態のペットからは感染する可能性は低いとみられています。

◆ ウイルス感染と予防法
 動物が感染源となる感染症を人畜共通感染症と呼びます。WHOは自然の条件下で伝搬して起こる感染症と定義しており、200種類以上の寄生虫・細菌・ウイルスがあります。特に問題なのがウイルス感染症です。ウイルスは地球上における最小の生物で、肉眼では見ることができません。独立して生きることができないので、生きている細胞に感染して生きながら常に繁殖の機会を伺っています。他者の細菌に感染することでしか生きられないウイルスが絶えず新たな感染先を探すのは当然のことです。
 ウイルスがヒトに感染する方法には直接感染と間接感染があります。直接感染では、血液や唾液・精液などの液体を介して移動します。間接感染は、動物や昆虫・寄生虫などを介して感染します。ウイルスの侵入口は、口や鼻などの呼吸器・肛門や尿道などの泌尿器・生殖器など、外部に接する部位です。人体に侵入したウイルスは標的にした臓器に入り増殖します。その結果、カラダは病気の症状を示します。
 SFTSのウイルス感染症はマダニを介して間接感染します。マダニには殺虫剤も効きません。感染症予防には手洗いの励行が基本です。そして自身の免疫力を上げることも大切です。ストレスをためずに規則正しい生活を心がけましょう。

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VOL.232『良いカルシウムを毎日たくさん摂ろう』 [体]

◆ カラダに最も大切な栄養素
 ヒトの生命はカルシウムによって始まり、カルシムの作用が中止すれば終わります。生命誕生の瞬間から生きている限り一時も欠かせない、カラダに最も大切な栄養素であるにもかかわらず、そのことを知らないヒトがほとんどです。
 カルシウム摂取が不足し、体内で足りなくなると、血液中のカルシウム濃度に異常が生じます。血液中のカルシウムは、筋肉の収縮や刺激の伝達など重要な機能を調節しているため常に一定の濃度でなければ、生命を維持することができなくなります。そこで脳は直ちに警告を発し副甲状腺に指令を出します。副甲状腺はその指令を受けると副甲状腺ホルモン(PTH)を血液中に放出して、骨に蓄積していたカルシウムを溶かし出し血液中のカルシウム濃度を元に戻します。このような働きにより、私たちの心臓は止まることなく動かされ、生き続けることができるのです。

◆ 細胞にカルシウムが溢れると…
 カルシウムが不足しているのにそのまま放置していると、カラダは副甲状腺ホルモンの放出ばかりに頼るようになってしまいます。すると、ホルモンの分泌が続いて骨は溶かされ続け、カルシウムは血液中や組織中に大量に放出されます。大量に放出され過ぎて余ってしまったカルシウムは、腎臓の尿細管・肝臓の細胞・血管内壁細胞・白血球・リンパ球など体内のあらゆる細胞中に蓄積して正常な生命活動を妨げます。
 カルシウムが血管壁に沈着すると動脈硬化となって血管内壁が細く狭くなり、血液が十分に流れなくなります。すると血管に栄養素や酸素を十分に供給できなくなるため、細胞にエネルギーを供給できなくなってしまします。細胞には余分に入ってくるカルシウムを排出するカルシウムポンプという機能がありますが、このポンプが働くためには大きなエネルギーが必要となります。細胞がエネルギー不足になればこのカルシウムポンプも働けなくなり、細胞内の余剰のカルシウムを排出できなくなって細胞は死滅し、細胞の周囲にカルシウムが沈着します。太古の昔、カルシウムによって誕生した生命体ですが、細胞の中にカルシウムが大量に溢れると細胞は死んでしまいます。そこで生命体は、カルシウム濃度を調節する仕組みを作って生き延びました。もともとカルシウムが豊富な海で誕生した生命体は水に溶けているカルシウムを体内にたやすく取り込むことができましたが、陸に上がり、動物からヒトへと進化した私たちがカルシウム不足になるのは当然で、それを補う仕組みが副甲状腺なのです。
 母体内の胎児に副甲状腺ホルモンはありません。すべてのカルシウムが母体から供給されるからです。生まれた後に副甲状腺ホルモンが作られ、余ったカルシウムは骨に蓄積し、カラダを支えます。新生児の頃は母親からの乳汁中のカルシウムが頼りです。ヒトの一生のうちでカルシウム量が最大となるのは18歳頃で、同時に骨量も最大となります。そして35歳以降は徐々に骨量が減少し、この減り方が急激だと骨粗鬆症になり、骨折が生じます。

◆ 不足させないために
 女性ホルモンであるエストロゲンには骨を溶かす物質の分泌を抑え、腎臓の働きで活性型ビタミンD3を放出し、腸管からのカルシウム吸収を盛んにする作用があります。またエストロゲンは腎臓に作用して尿によるカルシウムの排泄を抑えます。ところが、閉経後にはエストロゲン分泌が低下するため、腸からのカルシウム吸収も減少します。
 かつては人生50年と言われ、女性は閉経が人生の終わりでした。老化ではカラダの臓器や組織が衰えて機能が低下します。加齢とともにカルシウムの吸収性も急激に低下するためカルシウム不足となりやすくなります。カルシウム不足を防ぐために吸収性に優れたカルシウムを十分に摂取して大切なカルシウムの吸収効率を上げ、老化を防いで健康を保ちましょう。

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VOL.231『誤嚥性肺炎を防ごう』 [生活]

◆口腔ケアが重要
 日本では急激な高齢化が進む中、食事中の嚥下障害(食べ物や飲み物を飲み込めない)、筋肉量の減少、運動器症候群(ロコモティブシンドローム)、虚弱、うつ病、認知症などを予防することが求められています。特に、食べることや話すことに直結している口腔や呼吸器の病気の予防が注目されています。
 口腔を専門とする病院では歯科衛生士による毎日の口腔ケア観察が行われ、高齢者の健康維持を考える上で重要となっており、歯科衛生士の需要も高まっています。そのため、さまざまな理由で現場を離れた人が復職できるように、研修するプログラムも進んできており、所定の研修を終了すれば修了証が発行され、復職できるようになりました。

◆誤嚥性肺炎の原因
 高齢者の健康を妨げる要因の一つに誤嚥性肺炎があります。今日、日本では死因の1位がガン、2位は心血管性疾患、3位が肺炎です。肺炎で亡くなる人の96%以上が65歳以上で、そのうちの70%が誤嚥性肺炎です。この誤嚥性肺炎を予防することができれば、90%が助かるので寿命を延ばすことができます。
 誤嚥性肺炎は、食べ物や飲み物が誤って気管に入ることで起こると考えられてきましたが、食べ物や飲み物が原因となるのは30%ほどと少なく、残りの70%は就寝中気づかないうちに唾液が気管に流れ込み、唾液中のウイルスや細菌によって肺炎になることが分かりました。健康であれば食べ物や飲み物・唾液は気管に入りそうになっても、むせることで防げます。しかし、高齢者では加齢や入院生活などのせいで筋力や体力が低下し、飲み込む力も弱ってきます。加えて咳反射(喉に異物が入ると瞬時に咳が出て異物の侵入を防ぐ)や、ものを飲み込む際の嚥下反射(ものを飲み込む運動)が悪化するため、食べ物や飲み物・唾液を誤嚥するリスクが高まります。さらに免疫力が低下している状態で誤嚥によって肺の奥に入ったウイルスや細菌が繁殖して肺炎になる、これが誤嚥性肺炎です。
 高齢になると誤嚥するリスクが増すといいますが、40歳を超える頃から誤嚥する人が増えてきます。これは嚥下反射の低下が考えられますが、目立った症状が現れないことから原因は不明でした。しかし、最近になって脳梗塞との関係が指摘されるようになりました。脳梗塞の1つであるラクナ脳梗塞(小さな脳梗塞、脳内の毛細血管が詰まる)によることが分かってきたのです。脳梗塞の原因は血管壁の動脈硬化です。動脈硬化が原因の高血圧症の人にこのラクナ脳梗塞が多く見られ、喫煙量の多い人や塩分過剰摂取の人なども30歳を超える頃から徐々にラクナ脳梗塞が進行します。症状は全くないので気づきませんが、ラクナ脳梗塞により脳の小梗塞の箇所が増えてくると、嚥下反射が徐々に低下してきます。若いうちには誤嚥性肺炎にはなりませんが、嘔吐する機会が増えてくると嚥下反射が低下してきたシグナルなので気をつけましょう。

◆予防するために
 高齢者の寿命は近年になって10年ほど延びています。ですから30歳代の若い頃から高血圧や動脈硬化を進行させるリスクを減らすことが大切です。口腔内を常に清潔に保つことも誤嚥性肺炎を防ぐ方法の一つです。また、常に口の中に溜まった唾液を飲み込む練習を習慣化することも必要です。唾液をなかなか飲み込めない人は、水をチビチビ飲むことを習慣にするのも有効です。
 また、家の中にばかりいないで外に出て、散歩程度の適度な運動をすることは、足の筋肉を鍛えることができます。ふくらはぎは第2の心臓とも呼ばれているので、散歩は誤嚥性肺炎の予防には最適です。その際、歩きながら水を飲むのも効果があります。天気が良い日に早朝に外に出て新鮮な空気を繰り返し吸い、正しい呼吸法を習慣にするのも誤嚥性肺炎の予防につながります。

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VOL.230『生命活動を活発にするタンパク質』 [体]

◆タンパク質とは
 タンパク質はカラダの主成分で体重の20%を占め、水の60〜70%に次いで多く含まれます。タンパク質は皮膚や筋肉に存在するコラーゲンやアクチンのようにカラダを構成するものや血糖値の調節などに関与するインスリンとして働くもの、体内の化学反応を助ける酵素として働くものがあります。また、鉄を運ぶ血液中のヘモグロビンのように物質の輸送に関わるものや、抗体のようにカラダの防御機構に関与するものなど、さまざまな特徴や役割を持つのがタンパク質です。
 体内に異常なタンパク質が蓄積したり、タンパク質の機能が異常になると病気の原因となり、老化が進みます。そこで、タンパク質がどのように酸化障害されるのか検証すると、その大きな要因は活性酸素であることが分かります。呼吸で吸い込んだ酸素のうちの2〜3%が反応性の高い活性酸素に変化します。細胞内のミトコンドリアの主な機能はエネルギー(ATP)を作ることで、そのATPが生産されるときに活性酸素が生じます。新陳代謝や虚血時にも活性酸素は発生します。また、ウイルスに感染した際の生体防御としても活性酸素が生産されます。紫外線や放射線照射、精神的ストレスの状態でも活性酸素が発生します。

◆活性酸素の影響
 通常、発生した活性酸素は体内のカタラーゼやスーパーオキシド・ジムスターゼ(SOD)の酵素によって消去されますが、活性酸素の量が異常に多くなると体内では消去しきれなくなります。すると、過剰な活性酸素は周囲の細胞内に入り込みDNAを損傷し、アミノ酸配列を切断し、タンパク質を酸化し、細胞機能を低下させる原因となります。その結果が血管の動脈硬化による脳卒中や心疾患、パーキンソン病、アルツハイマー病などの神経系疾患、糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満などの生活習慣病、ガンや老化を引き起こします。
 タンパク質のシステインやメチオニンなどイオウを含むアミノ酸は最も酸化を受けやすくなります。カモジュリンは、脳の機能を維持する役割を果たすカルシウムと結合するタンパク質ですが、加齢に伴って酸化されやすいので脳機能低下の原因となります。
 また、タンパク質のリシン、アルギニン、プロリン、トレオニンなどのアミノ酸は活性酸素の影響を受けやすく、酸化されると老化の原因として、皮膚ではシワ・シミ・たるみ・くすみとなり、内臓や脳では機能低下を引き起こします。さらに、加齢とともに活性酸素の酸化障害を受けるタンパク質は増加し、酸化を修復する酵素量の低下や、タンパク質の代謝機能の低下などによって酸化ストレスを受けた異常なタンパク質の蓄積が亢進します。
 過剰な活性酸素を消去する効果があるのは野菜や果物に含まれる抗酸化物質として知られているビタミン類、カロテン、ポリフェノールに加えてカルシウムやマグネシウム、ケイ素、鉄などのミネラル成分です。

◆分岐鎖アミノ酸を摂ろう
 健康を維持して病気を予防するためには病気の発症や進行に関わるタンパク質が発現しないようにします。つまり、未病(病気ではないが放置すると病気になることが予想される状態)の予防や不健康状態の改善が結果的に病気の予防に役立ちます。
 タンパク質を構成する20種類のアミノ酸のうち、9種類のアミノ酸は体内で合成できない必須アミノ酸で、食物やサプリメントから摂取する必要があります。特に分岐鎖アミノ酸(バリン・ロイシン・イソロイシン)が不足すると元気が出ません。分岐鎖アミノ酸は筋肉量を増やし、カルシウムの吸収も助けるので骨形成に効果があり、肥満の予防や運動不足の解消につながるので毎日の摂取を習慣づけたいものです。
 タンパク質の体内での働きを知ることでタンパク質がいかにして病気を予防しているかを知ることができます。体内では水の次に多いのがタンパク質です。そのタンパク質を構成する必須アミノ酸、特に分岐鎖アミノ酸を積極的に摂取しましょう。

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VOL.229『骨粗鬆症を予防して健康寿命を延ばす』 [体]

◆高齢化とQOLの低下
 日本は高齢化が加速しており、骨量が減少して骨がスカスカで脆くなる骨粗鬆症が自覚症状がないまま進行し、気づいたら骨折をしているという人が増えています。骨折は要介護や寝たきりの原因となり、QOL(生活の質)低下につながります。
 骨は常に破骨細胞が骨を壊し、骨芽細胞が新しい骨を形成するという新陳代謝を繰り返しています。これを骨の代謝回転と呼びます。成長期では骨芽細胞が破骨細胞の3倍以上の割合で骨を形成します。逆に閉経後の女性では破骨細胞が3倍以上の割合で骨を吸収し、壊します。骨の形成と吸収のバランス(カップリングという)を調整しているのがエストロゲンという女性ホルモンです。閉経によってエストロゲン分泌が減少すると、骨が吸収される速度が速まり、骨の形成が追いつかないため骨が脆くなります。

◆骨粗鬆症の怖さ
 骨粗鬆症では骨量と骨密度が減少し、骨に鬆(す)が入ってスカスカ状態になります。するとほんのわずかな衝撃でも骨折を起こします。特に、高齢者が太ももの付け根の大腿骨近位部を骨折すると、寝たきりや要介護の原因となります。骨粗鬆症は女性に多く、更年期以降に急激に増えます。
 骨粗鬆症の危険因子は加齢と閉経によるホルモン低下の他に、ダイエットによる栄養不足や飲酒、喫煙、運動不足などの生活習慣や、長期のステロイド剤使用による慢性疾患があります。女性では60代で5人に1人、70代で3人に1人、75歳以上では2人に1人の割合で骨粗鬆症となります。男性でも70代で5人に1人の割合となり、骨粗鬆症患者は全国で1300万人以上と推計され増加傾向にあります。ほとんど自覚症状がなく、背骨が体の重さで潰れる圧迫骨折となり、身長が2〜3cm低くなります。病院で問診を受け、骨密度検査や骨吸収と骨形成のバランスを測る骨代謝マーカー検査、胸椎や腰椎の骨折や変形、X線検査によって骨粗鬆症かどうかの診断ができます。
 通常、骨量は20〜30歳ごろをピークに徐々に減少していきます。20〜40歳までの平均骨量が若年成人の平均値と定められており、平均骨量の20〜30%減少までは正常域とされます。骨量の減少が30%以上になると骨粗鬆症と診断されます。20〜30代に激しい運動していた女性はエストロゲン分泌が急激に低下するため、骨粗鬆症による疲労骨折を起こしやすいので注意が必要です。
 治療は、食事の栄養バランス・適度な運動の習慣・薬物治療が基本となります。服薬回数は程度によって1日1回から月1回、6ヶ月から1年に1回などさまざまです。
 厚生労働省によれば2016年の日本人の平均寿命は男性81歳、女性が87歳です。一方、内閣府の高齢社会白書では自立して生活できる健康寿命は男性が71歳、女性は74歳で、平均寿命と健康寿命の間には10歳前後の差があります。その大きな要因が骨粗鬆症による骨折です。要介護の原因の1位は認知症、2位が脳血管障害、3位が高齢による骨折・転倒でその背景には骨粗鬆症があります。

◆予防と治療
 骨粗鬆症の予防や治療の基本は栄養素です。つまり、骨の主成分となるカルシウム・マグネシウム・ケイ素などのミネラル成分や、骨の代謝回転に必要なタンパク質、ビタミンDや納豆に多く含まれるビタミンKなどを積極的に摂取することです。さらに、散歩程度の適度な運動習慣や日光浴も効果的です。日光浴をすることでビタミンDが形成されます。高齢者は骨に体重の負荷がかかるので激しい運動で筋肉を鍛えることは避けましょう。動脈硬化が進んで血管が切れ、出血する確率も増します。むしろ、転倒防止の方が重要です。
 最近、WHO(世界保健機関)が開発した骨折リスク評価法では、40歳以上で年齢や性別、骨折の質問に対してインターネットで答えると、10年以内の骨折の確率が算出されます。このような方法を活用して自分の骨の状態を確認してはどうですか?

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