So-net無料ブログ作成
前の10件 | -

VOL.227『美味しい水・健康に良い水』 [水]

◆日本の水
 日本は自然が豊かで水量も豊富です。欧米では水道水を安易に飲むのは危険とされていますが、日本の水道水は安全で美味しいというのが常識でした。ですから蛇口をひねれば出てくる水を当然のように飲んでいました。
 しかし、最近ではグルメ志向や健康志向の高まりから、水道水をそのまま飲む人は減っているように思われます。実際、水道水は安全性を高めるため塩素消毒されており、そのため多少匂いもします。食器洗いや洗濯、風呂の水などに水道水を使っても、飲料水として使うことは減っています。

◆水道水の消毒
 アメリカでは1992年以降、水道水に汚染物質がl混入していることが問題となり、その後はミネラルウォーターが飲まれています。日本でも工業廃水や家庭排水などが河川に流れ込むことによる水質汚染が進み、それを浄化するための消毒剤の量も増えています。通常、日本で消毒剤として使われるのは塩素で、細菌などの病原微生物を殺すのに非常に強い効力を発揮します。しかし、同時に別の有害物質も作り出します。例えば、塩素と水中のアンモニアが結合するとクロラミンという物質ができてカルキ臭を放ちます。これが水道水をまずいと感じさせる理由の一つです。また、水道管の末端まで安全を保持し、赤サビの発生を防ぐためにメタリン酸ソーダが入れられます。
 1957年の水道法により、塩素消毒は義務化されました。現在、水道水に投入されている塩素の量は他の国と比べても多い方です。WHOが定めたEU各国の水道水の大腸菌基準は100ml中100個の検出が5回以内であれば合格とされています。日本では1回でも検出されれば即アウトで、多くの塩素が投入されます。高濃度の塩素は皮膚や粘膜に障害を与えます。塩素は有機物と反応し、発ガン性物質トリハロメタンが発生します。トリハロメタンは流産や死産との因果関係も指摘されています。
 1945年アメリカで、水に含まれる硝酸性窒素がヘモグロビンをメトヘモグロビンに変化させ、酸素が運搬できず呼吸困難を起こすブルーベビー症候群が問題となりました。日本でも1950年代以降、硝酸性窒素が原因で酸素欠乏状態になる症例の報告があります。
 EU諸国では塩素を消毒剤として使用する代わりにオゾン処理した浄水が使われています。オゾン処理とは、強い酸化力や殺菌力を持つオゾンを用いてカビ臭の除去や消毒をすることです。近年、東京全域でもこのオゾンを使用した高度浄水処理が導入され、水道局は水道水をペットボトルに入れ、東京水として販売し安全性をアピールしています。

◆飲料水は、選び作る時代へ
 しかし現代は、安全性に加えて健康や美容・味の良さといった質の向上を人々は求めています。2001年の調査でも水道水を飲むという人は50%以下で、多くの人がミネラルウォーターや浄水器を使用しています。1960年代から登場した浄水器は簡易なものから、機能水を作るものまで多種多様です。2002年からは家庭用品質表示法が適用され、品質や性能を正しく表示することが義務づけられました。
 その中で、塩素やトリハロメタン、硝酸性窒素などの有害物質を取り除く機能を持ち、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分を放出して弱アルカリ性水にしているものがあります。カルシウムやマグネシウムは緑茶の成分であるカテキンと結合すると味わいが深まります。日本の自然水のほとんどはカルシウムやマグネシウムの量が少ない軟水で、日本人は長くこの水に接しているので軟水を美味しく感じます。ですが、カラダの健康維持に効果があって美味しい水は、ミネラル成分を豊富に含んだ弱アルカリ性水です。世界的にも有名な大阪大学名誉教授・橋本奨氏(故人)は健康に良い水と美味しい水の条件としてカルシウム・マグネシウム・ケイ素などのミネラル成分を多く含む水を挙げています。
 日本の自然水も汚染が進んでいます。安全性に優れ、美味しい水は、選ばれ作られる時代が来たようです。

v227.jpg


VOL.226『肥満対策となる新たな分化誘導因子の発見』 [体]

◆肥満対策の朗報
 脳梗塞や心筋梗塞につながるメタボリックシンドローム:内臓脂肪症候群、通称メタボや肥満症の予防または抑制には、食事の減量や運動などで生活習慣を改善することが基本とされていますが、それを長期間継続することは極めて難しいことです。
 2017年9月、東京大学の研究グループはエネルギーを消費してくれる細胞を薬で増量し、活性化するという新たな治療法を発見し、報告しました。かなりの朗報です。

◆エネルギー消費促進を誘導する因子
 メタボや肥満の対策にはエネルギー摂取量を抑制することと、摂取したエネルギーの消費を促進するという2つの方法があります。そこで、治療を行う上で、脂肪治療法を使って減量させる手術などを行うことで摂取量の抑制を行ってきました。ところが、食欲は記憶として定着しているため、脳内の食欲中枢に作用して食欲を抑制する肥満治療薬では、うつ病や自殺のリスクが生じるなどの副作用があり、問題となっていました。また、欧米で多く実施されている小腸の一部を切除し付け替えることで消化吸収を抑える減量手術は効果が確認されていますが、カラダへの負担が大きいのが問題でした。それらを解決すべく、東京大学・糖尿病代謝内科では、脂肪を蓄積させずに燃やす方向に働く褐色脂肪細胞を増殖させ、この細胞を活性化させることでエネルギー消費を促進し、減量する方法の研究を続けてきました。
 脂肪細胞には、エネルギーの貯蔵庫として知られる白色脂肪細胞の他に、寒冷下で体温を保つために熱を作り出しエネルギーを活発に消費する褐色脂肪細胞があります。褐色脂肪細胞は、ヒトでは新生児の頃にしか存在しないと思われていました。ところが最近になって、成人にも首や肩甲骨・鎖骨・腎臓の周囲に存在することが確認されたのです。この褐色脂肪細胞には、筋肉の元となる筋芽細胞が分化し、発育してできるという特殊性があるので、筋芽細胞を利用しようと考えましたが、筋芽細胞は通常、筋細胞に直ちに分化してしまうため褐色脂肪細胞にはなりません。そこで褐色脂肪細胞に分化するように誘導する因子の探索が世界中で研究されるようになりました。研究が進む中、東京大学のグループはマウスのDNA解析からNFIAと呼ばれる新たな誘導遺伝子を発見しました。NFIA遺伝子が欠損したマウスは褐色脂肪細胞の遺伝子プログラムに大きな障害が起きることを突き止めたのです。過去にはPRDM16と呼ばれる誘導遺伝子が見つかっていましたが、PRDM16遺伝子だけでは十分に褐色脂肪細胞を誘導することができませんでした。そこで世界中で褐色脂肪細胞を誘導するための2つ目の遺伝因子の発見が待たれていました。
 脂肪細胞といえば、通常白色脂肪細胞のことを指します。しかし白色脂肪細胞の中に極めて少量で低い能力ではありますが、熱を作り出し、エネルギー消費を行う性質を持つベージュ細胞と呼ばれるものがあることが分かりました。そこで、脂肪細胞になる前の細胞にNFIA因子を導入することで白色脂肪細胞でも褐色遺伝子のプログラムを活性化できることを突き止めたのです。つまり、NFIA因子を導入することでベージュ細胞を作ることを可能にしたのです。

◆肥満対策の切り札
 NFIA因子の発見の報告は、イギリスの科学誌『ネイチャー・セル・バイオロジー』の8月15日付オンライン版に掲載され、国際的にも反響を呼んでいます。10年以内にはNFIA因子(遺伝子)の量を増量し、褐色脂肪細胞を活性化させる飲み薬を開発したいと考えられています。
 NFIA遺伝子には筋肉を増やす作用がないので、体力を増進し、維持するためには運動することが重要であることには変わりありません。肥満防止には運動は不可欠です。しかし、エネルギー消費細胞であるNFIA遺伝子は、肥満対策の切り札となる可能性を秘めています。薬の開発が期待される話題です。

V226.jpg

VOL.225『古代の人も疫病を予防していた』

◆古代の疫病
 古代の人は、清潔な身体に汚らわしいものが取り付いた時に病(やまい)が起こると考えていました。古代人はこのけがれ(病)をまじないによって取り去ろうとしました。このまじないを担当したのが呪術師です。呪術師は禊(みそぎ)やお祓いによって病家のけがれを取り除き病根を断ち去りました。そのため呪術師は強い権力を持っていました。ある家に死者が出ると、10日余り喪に服した後、水浴びと身体を洗い清める禊を行うことでけがれをとります。人々は病をけがれであると考え、白いものにはけがれがないので白布や白砂を尊びました。また、疾病は神意によって起こるのだと解釈していました。
 古来、日本の疾病は大陸からもたらされました。例えば、もがさ(痘瘡・天然痘)はインド北部で発生し、中国から朝鮮半島へと侵入し、九州に初めて上陸したのは552年です。その後、3年間猛威をふるい、朝廷にまで伝播し、朝廷の権力者のほとんどが死に絶えました(続日本記より)。天然痘ウイルスは特に処女地で猛威をふるうという習性を持っています。インカ帝国は、スペイン兵士300人余りが持ち込んだ天然痘によって、免疫のなかったインカ帝国の兵士が戦う間もなく死亡したため滅亡したと言われています。1384年から4年間ヨーロッパで大流行したペストでは2500万人が死亡しました。また、1918年から1923年に大流行したスペイン風邪は全世界で5000万人が死亡し、日本でも25万7000人が死亡しました。ひとたび疫病が大流行すると社会の秩序は破壊されてしまいます。

◆古代の予防法
 古事記によれば流行病は疫病(えやみ)、疫の病(えのやまい)と表記され、奈良時代には麻疹(はしか)や痘瘡(天然痘)が大流行したとあります。麻疹や痘瘡の感染力は強力で未流行地帯に侵入するやその激烈さは想像を絶するほどです。日本では621年、推古天皇の頃、疫病(はしか)が猛威をふるい622年には聖徳太子も高熱を発して死亡しました。
 日本疫病史によると、6世紀頃には夏に疫病による死者が出た家では、火酒などを用いてハエや蚊を駆除して掃除をし、それ以降の疫病を免れたと書いてあります。当時はハエや蚊の駆除が疫病予防の基本だったようです。また、疫病に罹った者は人家から遠く離れた場所に送るという風習もありました。病人を隔離し、健康な人に近づけないやり方で、疫病の蔓延を防ぐようにしていたのです。
 さらに、疫病を予防するために室内を燻蒸することもありました。疫病が侵入しないように麻黄・甘草・草烏頭・芍薬などの薬種や薬草を室内で燻して邪気を撤退させる方法です。当時もこのような消毒に似た概念があったようです。
 奈良時代以前には薬を使って疫病を予防する方法として大黄・烏頭・桔梗などの薬種を酒に混ぜて飲み、病を防ぐ屠蘇(とそ)酒がありました。この方法が朝廷に採用され、江戸時代には京都から将軍家に屠蘇を献ずる儀式が入り、それが元旦に屠蘇を飲む風習となりました。こうして疫病を予防する習わしが一般の人々にまで浸透し、現在も続いているのです。

◆疫病との長い戦い
 古代に疫病が流行すると人々の免疫力は一気に衰え、病気に対して無防備になりました。それでもウイルスや細菌に感染しながら生き残った人々は、免疫を獲得しました。そしてその後10〜20年間はその地域の住民は疫病にかかりません。新しい世代が育ち、別の地域から疫病が侵入してくると再び大流行し、新しい世代の住民が疫病で死滅する。このような悪循環が世代ごとに繰り返されてきました。現在、日本では痘瘡(天然痘)は撲滅されましたが、地球上に人類が存在する限り、全く新しいウイルスとの戦いは今後も続いていきます。古代の人々が考えた知恵と経験に基づき、現代の人々も疫病を予防する新たな予防法を考えなければならないでしょう。

v225.jpg

VOL.224『肥満防止の行動がストレスに』 [体]

◆飢餓状態が長かった人類
 ヒトの祖先が地球上に出現してから700万年が経過したと言われています。その間のほとんどをヒトは飢餓状態で過ごしてきました。ヒトには生きていく上で必要なエネルギー量があります。カラダを動かし、体温を維持して、基本的な代謝を円滑にするための熱量を基礎代謝と呼び、成人では1日あたり2000Kcalです。この範囲内であれば摂取した食物は燃やされ、エネルギーとして消費されるので、体重は増えません。人類の歴史の中で長く続いた飢餓状態を生き延びることができたのは、細胞内の遺伝子にこのシステムが組み込まれたからなのです。そこで、大量の食料が得られた際にはそれをできるだけ取り込み貯蔵するように、カラダの仕組みが整えられました。
 しかし、この数十年の間に人類を取り巻く食料事情は一変し、日本を含め経済発展を遂げた国々では飽食の時代となりました。ところがヒトの遺伝子や基礎代謝量のメカニズムは飢餓当時のままで、これを組み替えるには数十年では短か過ぎるのです。ヒトの遺伝子や代謝システムは飽食の時代に遭遇することがなかったためこの変化は想定外で、連日のように基礎代謝量以上のエネルギーが貯め込まれ、内蔵型脂肪や皮下型脂肪となって蓄積します。活動量の低下や便利な機械化によって全体的に基礎代謝量も減少しました。その結果、大人から子供にまで腹回りに脂肪の蓄積が進み、ダイエットがもてはやされるようになりました。

◆ドカ食いとチビチビ型
 同じように過剰なカロリー摂取であっても、一挙にたくさん食べるドカ食いと、食べる回数は多いけれど1回の量は少ないチビチビ型ではどちらの方が太りやすいでしょう?1000kcalの過剰食を一挙に食べると、体脂肪は100g増えます。一方、同量を10回に分けて食べると、脂肪の蓄積量は数的には変わりませんが、実際の生命現象では太りにくいのです。1回のカロリーを10分の1にすると体脂肪は2gで済みます。朝から何も食べていなければ、500kcalの甘いケーキを食べても基礎代謝の範囲内の熱量として燃やされ、エネルギー源となるので太りません。しかし、朝・昼・晩と食事をして食後に甘いケーキを食べれば、その余剰エネルギーは全て脂肪となり体重は増加します。この余剰カロリーを運動で無理やり燃やすには想像以上の運動量が必要となり、かなりの困難を伴います。例えば、500kcalを燃焼するためには水泳で1時間、マラソンで10km走る必要があります。それゆえ運動によるダイエット法はなかなか続かないのです。
 体脂肪は余分なエネルギー(ブドウ糖)を毛細血管から受け取り、脂肪細胞内に蓄えられた物です。通常、ブドウ糖は血液に溶け込んで各組織の細胞に取り込まれ、燃やされてエネルギーとなります。このエネルギーが細胞の代謝の原動力となり、体温の維持などに使われます。空腹感とはエネルギーの消費が進み、血糖値が低下した時に感じる感覚です。その時過剰に食事をすると、必要以上のブドウ糖が血液中に溶け込み、脂肪細胞が大量の脂肪を取り込みます。つまり、余分なカロリー摂取は体重増加につながるということです。

◆たまには甘いケーキも食べましょう
 人類は長い飢餓状態の中で進化してきたので、満腹中枢の規制が極めて弱いため余分に食べてしまい、太ってしまうのです。しかし、フルコースの料理のように、ゆっくり時間をかけて少しずつチビチビ食べることは賢い食べ方です。血液中のブドウ糖濃度が低下すると、脂肪細胞はそれ以上ブドウ糖を取り込みません。食物摂取量が少ない状態が続くと、一時的に過剰に摂取しても脂肪蓄積はせず体重は増えません。つまり、規則正しく、少ない量で、バランスの良い食事内容が続けば脂肪は蓄積せず、たまに甘いケーキなどの余剰カロリー摂取があっても脂肪量の増加にはなりません。日頃からダイエットで悩んでいる人はそれがストレスとなり、結果的に体重が増えてしまうことがあるようです。食欲の秋、たまにはストレス防止のために、甘いものを食べてみてはどうですか。

v224.jpg

VOL.223『食物繊維摂取の重要性』 [食べ物]

◆サプレッサーT細胞
 免疫細胞は病原体の侵入を防ぐとともに病原体と闘って炎症を引き起こします。その免疫細胞には、キラーT細胞(体内に侵入した毒素や病原体を攻撃・排除・殺す)やヘルパーT細胞(キラーT細胞に攻撃の指令を出す細胞で指令官の役割を持つ)、サプレッサーT細胞(キラーT細胞の攻撃を抑制する役割を持つ)があり、炎症の度合いを見てバランスよく働いています。具体的には、攻撃的なキラーT細胞が多く働き、制御するサプレッサーT細胞が少なければ炎症が激しくなり、その逆であれば炎症は弱まります。
 炎症の状態を和らげるにはサプレッサーT細胞を増やすことで、その働きをするのが短鎖脂肪酸です。短鎖脂肪酸とは、酢酸・酪酸・プロピオン酸などの有機脂肪酸の総称で、その中の一つ、酪酸が多いとサプレッサーT細胞へと成長分化する細胞が増えます。短鎖脂肪酸は食物繊維やオリゴ糖の豊富な食事によって生成量を増やすことができます。

◆短鎖脂肪酸の役割
 短鎖脂肪酸はアレルギーの予防や改善にも役立ちます。2013年、理化学研究所は動物実験で、食物繊維を少なく与えたマウスと多く与えたマウスを比較した結果、多く与えたマウスの方が酪酸の生産量を増やし、サプレッサーT細胞の働きが活性化しました。酪酸がサプレッサーT細胞の遺伝子に働いて活性化することが分かったのです。
 その結果を実証しているのがアメリカで文明を避けて昔ながらの生活をする宗教団体「アーミッシュ」の人々です。彼らにはアレルギー疾患がありません。しかも血液検査の結果、サプレッサーT細胞が通常よりも35%以上多いことが分かったのです。アーミッシュの人々は生まれた時から牛やシマウマなどの家畜と共に生活し、車を持たず、電気も使わず、電話もありません。畑を耕す際には牛や馬に農耕具を引かせて、食事は自給自足です。自分たちが畑で育てたものを収穫し調理する、自然と共にある暮らしをしています。このような生活のおかげで彼らの腸内フローラはバランスが良く、短鎖脂肪酸を多量に生産します。
 短鎖脂肪酸は腸粘膜の上皮細胞のエネルギー源となります。上皮細胞には腸壁を保護する粘液を分泌し、水分や栄養素の吸収を助ける働きがあります。上皮細胞がエネルギー不足になると、腸壁のバリア機能が低下し炎症を起こします。短鎖脂肪酸は腸内フローラのバランスを整え、腸粘膜上皮細胞との間隔を塞ぐ方向に働きます。短鎖脂肪酸が減少すると、ウェルシュ菌や大腸菌などの悪玉菌が増え、腸内フローラのバランスが乱れます。すると、腸粘膜上皮細胞間の接合を緩めてしまうゾヌリンというタンパク質が増え、ゾヌリンの分泌量が多くなると、細胞間隙をつなぐ鎖が緩んで腸粘膜上皮細胞の透過性を高めてしまいます。また、セリアック症はグルテン摂取量の増加によりゾヌリン分泌が増し、小腸が損傷する自己免疫疾患です。自己免疫疾患とは自分の正常細胞や組織に対して過剰に反応し、攻撃してしまう免疫異常の病気で、強い炎症症状を示します。この病気の人はわずかなグルテン摂取でも腸の絨毛組織が破壊されて下痢症となる重症なグルテン不耐性になります。
 グルテンは、タンパク質で分解されてアミノ酸となり、腸の上皮細胞から吸収されます。ところが、グルテン含有量が多いとアミノ酸にまで分解されず、タンパク質のままで粘着性が増し、腸粘膜から吸収されなくなります。これがアレルギーの原因ともなります。

◆食物繊維を摂りましょう
 腸内フローラのバランスが乱れると、ゾヌリン分泌量が増え、腸粘膜上皮細胞の間隙が開いて、腸の内容物が血液中に流れ込む異常事態に進展します。
 腸内フローラにとって最高の栄養素は食物繊維で、人類の命の源となって今日に至っています。ところが日本人の食物繊維の摂取量は、かつて1日あたり300gほどであったものが120g以下に著しく減少しています。その結果、1日の糞便量も100g以下となり、排便を毎日しない人も増えています。これがアレルギー疾患やうつ病のなどの病気、炎症疾患に関係しているのです。

v223 (2).jpg

VOL.222『命の基本、カルシウム』 [生命]

◆カルシウムという元素
 カルシウムは地球上で5番目に多く存在する物質です。例えば、砂浜で星の砂をつくるプランクトンやサンゴの硬い殻は炭酸カルシウムからできています。
 脊椎動物の骨や歯を形成する必須微量金属元素の一つがカルシウムです。カルシウムは生体の中でも生命維持に極めて重要な役割を果たしています。地球誕生以来、生命体の祖先は多細胞化した生物が特定の細胞に一定の役割を与え、それらを結合・統合することで高等動物へと進化させました。この細胞同士を結合させる役割を果たしたのがカルシウムなどの微量金属元素です。

◆体内の情報伝達の中心
 本来、カルシウムは細胞にとって猛毒だったので、細胞内にカルシウムが侵入すると、有害な活性酸素が発生、増加し、細胞内のエネルギー源であるATPの反応に影響を与えて細胞を死に導いてしまいます。そこで、カラダは正常細胞内のカルシウム濃度を極めて低く抑えました。一方、細胞外液のカルシウムは細胞内に対して1万倍の濃度にしたのです。このように細胞の内と外で極端な濃度差を持つ物質はカルシウムしかありません。この濃度差をカラダは、細胞を自ら自殺させるアポトーシスと呼ばれる機能の引き金として利用しています。アポトーシスとは、細胞内遺伝子プログラムに書き込まれている細胞の自己死のことです。これは新しい細胞に置き換えるために古くなった細胞を消滅させる役割を持っており、常に新しい組織を維持する働きをします。また、正常細胞がガン細胞に変異した際には、その細胞にアポトーシスを起こさせガン細胞の増殖を抑えます。さらに、ウイルスに感染した細胞にもアポトーシスを起こさせウイルスの増殖を抑えます。このように、カルシウムイオンは細胞内に流入して細胞内濃度を高めることで、細胞を機能不全にしてアポトーシスを起こさせるのです。つまり、カルシウムは不要になった細胞が自殺するスイッチを入れているのです。
 また、すべての細胞はカルシウムによる電気信号によって細胞間の情報交換が可能となります。例えば、筋肉はカルシウムがないと収縮しません。筋肉細胞内にカルシウムが入ってきて結合することによって筋肉は収縮するのです。かつて生命体は海から生まれました。ですからカルシウム・カリウム・ナトリウムなど体内の多くの微量金属原子の組成は海水によく似ています。生物は原子の環境を維持した細胞に守られて、カルシウムやナトリウムなどを細胞間に放出し、一方では安定した電位を使用することで細胞内の情報伝達を発達させました。

◆生命に直結している栄養素
 海から陸に上がった生物には、海水の成分を固めたカルシウムの塊(骨)と、海水成分を運搬する血液が必要でした。カルシウムが豊富な海で生きる魚には副甲状腺がありません。副甲状腺はカルシウムが不足した時にカルシウムを補う内分泌腺で、カルシウム濃度の変化を感知するサンサーです。カルシウムが体内で不足している時に副甲状腺ホルモンが分泌されます。この内分泌液がカルシウムの働きをコントロールしているのです。上陸した両生類には副甲状腺があるため、生物は脂質という水を通さない油の膜に包まれた細胞や骨・血液・副甲状腺・腎臓などを持つことで陸に上がり進化することができたのです。
 このように、カルシウムは生命と直結している栄養素です。陸上では生物は常にカルシム不足の状態です。カルシウムの吸収を助けるのが副甲状腺と腎臓です。摂取するカルシウムは吸収性に優れた炭酸カルシウムでイオン化した状態のものが良いでしょう。太古の昔、生命体として海の中で生活していた頃の遺伝子は、人類へと進化した現在も細胞内に存在しており、その状態のままなのです。

v222 (2).jpg


VOL.221『身近に迫る外来有毒生物』 [生命]

◆ヒアリ、日本に侵入
 今年5月、極めて強い毒を持ち、殺人アリとも呼ばれる南米原産のヒアリが、日本で初めて発見されました。6月以降、兵庫、愛知、大阪でも発見され、7月には東京の大井埠頭で確認されており、侵入拡大が懸念されています。国内に定着している有毒な外来生物は数多くあり、環境省では今回のヒアリに対しても警戒を強めています。

◆ヒアリとは
 ヒアリ(火蟻)は、刺された時に火がついたような痛みを感じることに由来して名付けられました。体調は2.5〜6mmで赤茶色の攻撃性が極めて強いアリです。巣であるアリ塚を壊すと、一度に数100匹が襲ってきて衣類の隙間に入り込み、腹部先端にある毒針で刺します。毒の主成分は細胞を破壊するアルカロイド系の有機化合物で、傷口周辺が腫れてニキビ様の膿が出て、痛みは2週間ほど続きます。同時にアレルギー反応を起こすハチ毒に似たタンパク質を含んでいるので、急激なアレルギー症状が出て、重篤なアナフィラキシーショックを起こすと死亡する恐れもあるといいます。
 ヒアリは通常、植物を食べていますが、昆虫の幼虫やミミズ・カエルなどの小動物を見つけると集団で襲って捕食します。毒は狩りに利用するための生存に必要な武器なのです。環境省では、ヒアリを見つけたら絶対に触らず直ちに出先機関に連絡するよう求めています。刺されてしまったら、20〜30分ほど安静にして、もし重症化して症状が現れたら、直ちに病院で治療するように呼びかけています。
 ヒアリは、1942年頃までは原産地である南米中部でしか見られていませんでしたが、国立環境研究所によれば現在、日本を含む環太平洋の15カ国で発見されています。当初は北米やカリブ海諸国が中心でしたが、21世紀に入り5年間でマレーシア・オーストラリア・台湾・ニュージーランド・中国などで一気に拡大しました。その背景には中南米の急速な開発があり、経済発展が続く中国や東南アジアに向けて多くの農産物や資源を輸出するようになったため、それらに紛れたヒアリが貨物船などで各地に運ばれ拡大しました。
 ヒアリの繁殖力が強いことが生息地の拡大に拍車をかけています。通常、アリは一つの群れに女王アリが1匹なのですが、ヒアリの場合は数10匹いて、1日に数1000個の卵を産むため、拡大するスピードが極めて速いわけです。また、アリ塚は深さが10m以上にも及び駆除することが極めて困難です。

◆ヒアリだけではない、怖い外来生物
 ヒアリ以外にも、駆除から逃れて日本に定着してしまった有毒外来生物がいます。ヒアリと同じ種類の毒を持つアカカミアリはアメリカ軍の輸送物資に紛れ込み、すでに沖縄県や小笠原諸島の硫黄島に定着しています。6月には神戸港で見つかり、本州への上陸も確認されました。また、温暖なオーストラリアが原産で1995年に侵入したセアカゴケグモは沖縄から北海道まで40以上の都道府県に拡大しています。2012年以降には、中国原産で強毒のソマアカスズメバチが九州に定着しています。ヒアリも例外ではありません。他にも致死性の毒を持つキョウトウサソリや死亡例の報告もあるジョウゴグモの仲間も拡大しています。ヒアリの仲間でもあるコカミアリの侵入も懸念されており、環境省は港湾での水際対策を強化しています。しかしながら、外来生物の国内侵入は、海外との貿易が続く限りつきまとう問題です。外国からの渡航者も含め、日本に入って来るのを避けることは極めて困難です。早く見つけて駆除する以外に定着を防ぐ対策がないのが現状です。
 ヒアリに刺されたら、傷口周辺に痛みやかゆみ、腫れや発疹が全身に広がり、呼吸困難や血圧低下、意識障害となります。最悪ではアナフィラキシーショックで死に至ります。
 ヒアリを見つけたら速やかに関係機関に連絡し、もし刺されたらすぐに病院に行きましょう。ヒアリが日本に定着しないよう祈るばかりです。

V221.jpg


VOL.220『健康維持のために早起きを』 [生活]

◆自律神経の働きを司る体内時計
 健康を維持するには朝が極めて重要です。ヒトのカラダには、朝になれば目覚め、夜になると眠くなるというリズムが細胞内の時計遺伝子に記憶されており、これは人類の進化の過程で組み込まれました。このリズムは自律神経の働きが作るもので、それをコントロールしているのが体内時計です。体内時計が細胞分裂に密接に関わっており、ほぼ24時間のリズムを刻んでいます。生命の活動を調節するのが自律神経で、交感神経と副交感神経があります。交感神経は日中の活動時に優位に働き、副交感神経は睡眠時に優位に働くという、切り替えがスムーズに行われています。このように体内時計がリズミカルに動くことで健康が維持されるのです。

◆リラックスして腸を活性化
 カラダの中で最も新陳代謝が速いのは腸管ですが、体内時計が狂ってしまうと腸粘膜の新旧の入れ替えがうまくいかなくなるので新陳代謝が遅くなります。その結果、便秘や下痢が起こります。夜間に良い睡眠が得られると、腸の粘膜細胞は新陳代謝が活発化しますが、睡眠中には血液中の水分量が減少するため、血液がドロドロで固まりやすくなります。そのため、早朝に血栓(血の塊)ができて脳梗塞や心筋梗塞などの心血管系の病気が起こりやすくなります。それを改善するのが、夜寝る前と朝の目覚めに飲む1杯の水です。特に、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分が多くイオン化している水が最適です。この水が腸管を刺激して、良質な便通を促します。
 心臓や脳など多くの臓器は交感神経が優位の時に活発になります。しかし、腸だけは休んだり、眠ったりしている時に活発に働くのです。毎日の入浴も健康維持に役立ちます。ややぬるめのお湯にゆっくりつかると腸の活動が活発化しますし、副交感神経が優位になってリラックスできるので、毎日のストレスや睡眠不足を解消してくれます。入浴の時間は就寝前1〜2時間が最も良いでしょう。シャワーだけではあまりリラックスできません。
 今日、昼夜を問わず働き続ける24時間型の生活・複雑化しストレス状態が続く人間関係・病原微生物や外来猛毒生物の侵入・知らず知らず口にしてしまう残留農薬や化学物質・活性酸素を発生させる電磁波など、心身に与えるストレス要因は多く、そして蓄積されていきます。そのストレスに対抗するのが自律神経で交感神経が常に優位に働きます。この状態で最も打撃を受けるのが腸で、疲労状態が続いてしまいます。リラックスできる副交感神経を優位に働かせる時間を持たないと腸は疲弊し、カラダの免疫機能や神経系機能が低下してしまいます。そして、下痢や便秘を繰り返すことになり、これが過敏性大腸炎や大腸ガンを誘発します。
 体内時計が乱れると、朝は胃腸が活動せず、そこに食物が入り負担になることで消化酵素の働きが悪くなって消化されません。腸は夜通し活動して腸粘膜を補修しています。そのため朝には、腸内細菌の栄養源となる食物繊維が必要です。朝食は体内時計を整え、健康体を維持するその日の出発点となるのです。腸の働きが悪くなり、腸内に粘膜片や未消化物が長く糞便として残っていれば、これが腸粘膜を刺激して大腸ガンが生じます。

◆健康は腸の元気から
 また、毎日決められた時間に起きて早朝に朝日を浴びると、生活習慣のリズムが乱れた体内時計はリセットされます。朝日を浴びながら深呼吸を繰り返すことで新鮮な酸素を肺や腸に送り込むことができメラトニンの分泌を刺激することができます。メラトニンは眠りを誘導する睡眠ホルモンで熟睡度を高めてくれ、朝日を浴びると分泌が抑制されます。
 体内時計のバランスを整え、働きを維持するには早起きと、朝一番のコップ1杯の水、そして朝食をしっかり摂ることから始まります。

V220 (2).jpg

VOL.219『グルテン不耐症・カゼイン不耐症』 [体]

◆日常の体調不良
 現在、成人の10%以上が日常的に偏頭痛に悩んでおり、増加傾向にあるといいます。偏頭痛の原因はストレスや肩こり・睡眠不足・ホルモンバランスの乱れなどとされ、季節の変わり目、気圧や気温の変化などに影響されると言われてきました。また、日常的なストレスや体調不良、イライラ状態が続く不安定さから疲労がたまり発症すると多くの人が思ってきました。ところが最近、食物アレルギーのグルテン不耐症が原因であることが分かったのです。

◆グルテン不耐症
 グルテン不耐症は世界ランキング1位になったプロテニスプレーヤー、ジョコビッチ選手によって広く世に知られることとなりました。彼の実家はピザ屋で、ピザやパン・パスタなどの小麦製品を食べて育ちました。グルテンとは小麦や大麦・ライ麦などに含まれるタンパク質のことです。タンパク質は消化されアミノ酸に分解されて腸管から吸収されます。ところがグルテンは一部が分解されずにタンパク質のまま吸収されます。健康な人はグルテンが小腸から吸収されずに便中に排泄されるのですが、グルテンが吸収され続ける人がいます。すると、グルテンが過敏に反応し、胃痛や胃痙攣、腹痛、便秘、下痢などの症状を起こします。これがグルテン不耐症です。
 欧米ではパンやパスタが主食であり、小麦は人類最古の農作物ですが、日本でも小麦を食べて体調を崩す人が増えています。昔の小麦に比べてグルテンの量が増えていることが原因と考えられており、グルテンが粘着性を増し、腸粘膜の免疫機能に傷害を与えています。
 アメリカでのグルテン不耐症は20人に1人の割合となっており、日本でも同様に増加していますが、自分の不調の原因について気づいていない人がほとんどです。日本では近年、食生活が変化し、若い人を中心に3食すべて小麦粉食品という人が増えています。つまり、グルテンを多く摂取することで腸に与える影響や負担が大きくなっているのです。
 小麦アレルギーは、小麦に含まれるタンパク質にカラダの防御機構が反応し、少量でも摂取すると直ちに症状が出ます。グルテン不耐症は小麦粉グルテンに対する反応で、消化が進んで発症するまでには時間がかかります。また、長い間食べていても何でもなかったのに、ある日突然体調が悪化しアレルギー症状を示すため遅延型アレルギー疾患とも呼ばれます。
 また、過敏性腸症候群の人が増えており、現在は日本人の5〜10人に1人の割合となっています。例えば、通勤ラッシュの車内で急に腹痛を起こしてトイレに行きたくなる人、これは各駅停車症候群とも呼ばれます。ストレスが原因と思われてきたこの病気は最近になってアレルギーが原因であることが分かりました。特に、パンやシリアルなどの小麦粉を使った食品を常食としている人に多いようです。

◆カゼイン不耐症
 牛乳やヨーグルトなどの乳製品を多く摂っている人に見られる病気がカゼイン不耐症と呼ばれるアレルギーです。毎日下痢に悩まされ、小麦粉や乳製品を中心にした食事が原因とは全く思わず、知らず知らすのうちにアレルギーになり、その症状はある日突然現れます。カゼイン不耐症は、牛乳を飲むとお腹がゴロゴロして下痢を起こす乳糖不耐症(ラクターゼ分解酵素の欠損)とは異なり、カゼインというタンパク質に対するアレルギー疾患です。カゼインは食品の栄養を高める栄養強化剤で、加工品の保水効果を高め、乳化剤としても添加されます。
 グルテンやカゼインはアミノ酸に分解されずにタンパク質のまま腸から吸収されるので抗体(IgE)が形成されてアレルギー疾患となります。このような食品によって、病院に行くほどではないが症状が繰り返し起こる、病院に行っても一向に症状が改善しないなど、思い当たる節はありませんか。小麦粉食品の摂り方を少し考えてみてはいかがでしょう。

V219 (2).jpg

VOL.218『ミネラルの働きと歯の大切さ』 [体]

◆ヒトのカラダに必要なミネラル
 ヒトの生命活動に必要なミネラル成分は大きく2種類に分類されます。1つ目はナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、塩素、イオウで、これらは1日の摂取量が比較的多いミネラルです。2つ目は鉄、亜鉛、銅、クロム、ヨウ素、マンガン、セレン、モリブデン、コバルトで、これらは比較的少ないミネラルです。これらミネラル成分は、不足した場合に欠乏症を引き起こし、過剰摂取では過剰症を起こします。
 例えば、ナトリウム(食塩)は過剰摂取すると高血圧症を引き起こすので1日の摂取量は10g以下とされています。腎臓病でも食塩量は1日5〜6g以下に制限されます。食塩は過剰摂取すると血液中のナトリウムイオン濃度が上昇し、浸透圧が高まります。浸透圧とは水に物が溶けたときに生じる圧力のことです。血液の浸透圧の上昇は脳で常に測定され、高くなると喉が乾くので水を飲むように促します。浸透圧は生命維持の基本で、常に一定に維持されます。浸透圧が高まるとホルモンの作用で腎臓から水の排出量を減らし、血液量を増加させます。逆に利尿剤には尿の排出量を増やして血液量を減らすことで血圧を下げるという働きがあります。
 ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などは酸化されて陽イオンになりカラダ(細胞)が利用できるようになります。そのため、体内では必ずイオン化(水に溶けた状態)して存在します。カルシウムやマグネシウム、亜鉛は常に陽イオンの状態で存在します。これに鉄を加えたグループを必須ミネラル成分といいます。

◆鉄イオンの働き
 鉄イオンではヘムの鉄を除いた有機物をポルフィリンと呼び、体内で合成されます。ヘムは必須の栄養素ではありませんが、酸素はヘムのおかげで全身に運ばれます。血液が赤いのはヘム(鉄イオン)が赤いためです。空気中の鉄イオンは酸素で酸化されるので錆びます。しかし、体内では鉄イオンとして十二指腸から吸収され、タンパク質に吸着して酸化し、肝臓や骨髄に運ばれます。そこでフェリチン(タンパク質)となって貯蔵されます。肝臓に運ばれた血液中のヘムは酸素の力でビリルビンに変換され、肝臓から胆のうに貯蔵されます。
ビリルビンは胆汁中に入って、腸へ行き、腸内細菌によって分解され大便の色となります。
 赤血球の寿命は120日ほどで全身の赤血球の120分の1が毎日分解・造血されます。グロビン(タンパク質)はアミノ酸に分解されて再利用され、ヘムは分解されビリルビンが合成されます。これが正常な生命維持の活動です。肝臓が障害されビリルビンが胆汁によって排出されなくなると、目や皮膚に蓄積し黄色くなるのが黄疸です。また、鉄イオンは厳密にコントロールされていて、古くなった赤血球は膵臓でマクロファージによって分解され、ヘムとして鉄イオンは食事からの摂取量よりも多い1日あたり35mgが回収されます。したがって月経や臓器からの出血がなければ鉄欠乏にはなりにくいのです。マクロファージは鉄の排出タンパク質を通して鉄イオンを血液中に排出します。そして鉄イオンは骨髄に戻り再びヘモグロビンとなります。

◆歯を大切に
 生命維持に必須なミネラル成分は加齢とともに減少し、老化によって血管は硬くなり、動脈硬化が進みます。それでもカルシウム・マグネシウム・鉄・亜鉛などの摂取量が多ければ心血管疾患で死亡する割合は減ります。近年の疫学調査では、脳の記憶中枢が活性化されて、足が丈夫で、運動筋力が高い高齢者ほど長寿であることが分かりました。また、残っている歯の数が多いほど健康状態が良いという相関性が認められました。歯が丈夫で健康であれば運動能力に優れ、認知症がなく、記憶力も優れているというのです。血液中のカルシウム濃度は年齢に関係なく一定です。水に含まれるカルシウムとマグネシウムが1対1の割合で摂取できると歯も丈夫になります。歯が丈夫であれば肉や魚、野菜などをバランス良くしっかり噛んで食べることができます。ミネラル成分をしっかり摂っていれば歯も丈夫で、健康維持につながります。

v218.jpg

前の10件 | -